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ゾンビーナ!  作者: とれさん
343/378

343 完全勝利の後で


日向子達を見送ってから一時間も経たずに戦闘エリアから音が一切消えた事に防衛を任されていた識者達は戦々恐々としていた


〈まさか…お2人に何かあったのではないか?〉

〈流石に数の暴力に押されて…〉

〈だとしたら我等も戦いに参戦すべきではないのか?〉


識者達の間に不安と恐怖が広がる


《心配する必要はない。主と始祖様があの程度の戦力に屈する訳がないだろうが》


キメは現在全身をナノ細胞群に変態させ周囲に散開させている為に影の首領の様に言葉が全方向から響いて来る


そのせいか不安を増していた識者達も何故か安堵してしまう


そんなやり取りを数度重ねているとキメのセンサーに感応があり意識を向けると謎の塊を抱えた日向子と始祖が悠然と戻って来た


〈し、始祖様‼ご無事でしたか‼〉

〈日向子様‼〉


「ん?どうしたの?皆?」


〈何を狼狽しておるのだ?〉


識者達の動揺を不思議に感じた2人は各々首を捻っている


《識者達は戦地の音が途絶えた事に不安を覚えていたのだ》


「あー、それはごめんなさい。数は多かったけど大した事なかったのよ」


〈日向子の言う通りだ。まるで木偶だったな〉


ドスン、ドスンと抱えて来た兵器の塊を地面に降ろしながら拍子抜けしたとでも言いたげな2人に不安を増大させていた識者達は呆れるやら安堵するやら様々な反応をしていた


〈始祖様、では我等は早速これらの兵器の解析にあたります‼〉


ピエールは自分達が何をすべきか、を明確に周知させる為に敢えて大声で始祖に了解を得る発言をする


〈うむ、恐らく今回の襲撃は全軍ではない。敵の能力や行動原理の解明は次の戦に生きるだろう〉


〈〈〈ははっ‼〉〉〉


識者達は自らの使命を改めて心に刻み建物内に持ち帰られた兵器を運び始めた


「始祖さん、私ちょっと疑問が生まれちゃったんですけど…」


〈うむ、であろうな〉


お互い実戦を経て感じる所があったらしい、慌ただしく往来する識者達を余所に日向子と始祖は今後の作戦の練り直しをすべく別棟の建物に入って行った


ーーーーーーーーーーーーー


《主、結局奴らは何なのだ?》


現在警戒レベルを下げた為にキメも体の組織半分を実体化して作戦会議に参加している


そんなキメが最初に訊ねたのは相手、兵器軍の存在自体を問う事ぁった


「うーん…正直目的がハッキリしていないんだけど…それでも仮説は立てられたわ。聞く?」


《是非》


食い気味に答えるキメに日向子は自らの推論を話し出した


「多分だけど…あの兵器達って私達を襲う為に進軍してる訳じゃないんだと思うのよ」


《…は?じゃあ何故…?》


「多分だけどあの軍隊って此処、ドラール王国を攻め落とす為に進軍してるって感じ?」


日向子の疑問系な語り口調に首を傾げるキメ


《だがドラールは既に滅びて久しいだろ?なのに何故今になって進軍して来てるんだ?》


始祖は言葉の足りない日向子の説明に補足する形で口を挟んだ


〈これも推測の域を出ないが我々がドラール領内の機能を停止させた事により進軍が可能になっブレーキたのではないか、と考えている〉


は?という顔をしたキメに日向子も追加で補足する


「ほら、何かドラールから変な物体が出たりしてるって目撃談とかあったでしょ?

あれって結局今進軍してる兵器軍を牽制してたんだと思うのよ」


《成る程…》


「それが無くなったのを向こうが何らかの方法で察知したから一気呵成に攻めこんで来てるんじゃないかな?って」


〈余も同じ意見だ。恐らく敵勢力はドラールが既に滅亡しているのに気付かず今もまだ交戦中と判断している可能性が高い…となると考えられるのが…〉


《…もしや向こうも既に滅びている?と言う事ですか?》


〈うむ、あの兵器軍には敵地を攻撃するという命令しか組み込まれておらぬ様に思えてな〉


「そう、それが今回戦って気がついた違和感なのよ」


日向子と始祖は今回の戦いで敵側の指令が状況変化に殆ど対応出来ていない事に気付いてしまった


2人を敵と認識して初撃を加えたのは2人がドラールより飛来した=敵という単純な判断だったからだ


例えば日向子達がドラール方面から来ず敵対行動をしていなければ見過ごして行軍を続けていた可能性が高い


「その仮説が真実だとすると…」


《?》


「放っておいても勝手に攻めて攻められて抵抗が無くなった時点で勝手に終結しちゃうんだろうなぁ~ってね」


意識の介在しない戦争に敢えて手出しをする必要がない、と気付いてしまった日向子と始祖はあからさまにテンションが低かった


「まぁ…介入する事で得られるモノもない訳じゃないわ。例えば失われた高度な技術や素材とかね

でも敢えて危険を冒す必要性がないのも事実だわ」


〈そもそもこれらの技術は世間に公表出来るモノが少ないからな〉


《…ですね。じゃあ…どうする?》


戦う理由を失ってしまった3人は既に帰りたい雰囲気を漂わせていたがそんな気配を察した識者達が全力で止めに入る


〈し、始祖様?これほどの叡知を無下に打ち捨ててはこの後の禍根に繋がりますぞ?〉


〈日向子様もまぁまぁ‼後程我が一族に伝わる秘伝の甘味を差し上げますから〉


〈実は…元元老院の本院に秘蔵されていた今は絶えてしまった魔物の細胞がですな…ややっ⁉これはキメ様にお譲りした方が細胞達も喜ぶでしょうな‼〉


識者達の必死の説得(?)により誰とはなしにこのまま戦線を維持する事になったのである

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