341 新たなる襲撃者
…ィィィーーーン…チュドッ!!
〈グハッ⁉〉〈ギャッ⁉〉
…パラパラ…
「…やっぱり来たわね」
〈そうだな〉
日向子と始祖はその突然の襲撃をまるで知っていたかの如く振る舞っている
…ピポポ、ブピッ…
[総数38、戦闘ヲ開始スル]
舞い上がった土埃が収まると共に立ち上がる巨躯はこの場にいる人数を確認すると即座に攻撃態勢にシフトした
…ヴヴ~ン…ジャコ‼ジャコ‼
両手を識者や日向子達に向けると手の甲から筒の様なモノが回転しながら突き出て来る
「キメちゃん、お願い‼」
…ピポポ⁉ギコッ⁉
襲撃者は突如動きを止め不協和音を発し出す
ドールを捕獲した段階で日向子は何らかの対抗手段を講じて来る事が分かっていた
だからキメにはこの一帯をナノ細胞群で覆わせ物理的感知に特化した生体センサーを張り、敵を感知次第ナノ細胞群によるナノアタックを仕掛ける様に頼んでいたのだ
その判断をするに当たっては捕獲したドールの外見が大きく関わっている
ドールの形状からして戦闘に特化したモノではなく恐らく斥候用だと判断出来ていた
となれば後詰めで戦闘に特化した兵器が待機しているのは容易に想像が出来
更にドールは何処かと交信する素振りを見せていた為に後から来るであろう敵を誘い出す「罠」を張ったのだ
[ピポッ⁉…行動不能、行動不能、援軍ヲ要セ…]
ビキキッ!!
襲撃者が何処かと連絡を取り合う仕草をしようとした瞬間、謎の圧力により体がひしゃげてしまう
〈日向子…あれでは分解出来るかどうか分からぬな…〉
「ご、ごめんなさい…」
日向子は新たに現れた襲撃者に先程始祖から指摘された時空間能力のみによる拘束を早速試してみた
だが不慣れなせいで力の掛け方が分からずつい握り潰すレベルで放出してしまったのだ
「ま、まぁまた呼んでたから来るでしょ⁉…きっと⁉」
体積が3分の1程に圧縮されてしまった襲撃者を見ない様にして日向子は楽観的な言葉を吐き出した
《主、次は頼むぞ?》
その目論見は直ぐに達成される事になる
…ィィィーーーン、ズドッ!!ズドッ!!ズドッ!!
[ビポポッ、ブピッ‼]
最初の襲撃者の周囲に3体の巨躯が落下してきたのは日向子が言い訳をしてから直ぐの事だった
〈フッ、援軍にしては弱いな〉
ビキキキキキッ!!
[[[!?]]]
始祖は下らなそうに片肘をついたまま新たに現れた襲撃者を全て時空間能力によって拘束した
〈「力」と言うモノは思うがままに使えてこそ「力」なのだ。分かるか?〉
「…はい…」
始祖は日向子を諭す様に力の使い方を伝授したつもりだったが意外に鼻っ柱の強い日向子はその言葉によりションボリしてしまう
〈始祖様、これらの個体も調査致しますか?〉
〈うむ。だがこの個体も恐らく斥候程度であろう。本隊が襲撃してくる可能性も否めない以上今は調査を再開する必要はないだろう〉
〈は。では…?〉
〈お主達は拿捕したこれらを建物内に移動させ防衛にあたるが良い。
余と日向子、キメはこれより後詰めを掃討して来よう。日向子、キメよ、それで良いか?〉
「うん、そうね。待っているよりこっちから出た方が気楽て良いわ
あ、でもキメちゃんはこのままこのエリアを守っておいて
その方が討ち洩らした敵の襲撃で被害が出る確率を下げられるからね」
《分かった。このまま分散して警戒にあたろう》
「じゃ、始祖さん。行きましょ」
未だ敵の実体や総数が把握出来ていないのに日向子はまるで悲愴感がない
何ならちょっとソコまでお買い物に行くレベルの気軽さで始祖を誘っている
〈…お主には全く緊張感がないな、それもまたお主の持ち味なのだろうが〉
始祖はやれやれ、と言った感じで椅子から腰を上げた
2人は識者達が見送る中、空へと飛び立つ
「先ずは相手の戦力を把握しなくちゃね」
〈うむ〉
日向子達は先程の兵器達が飛来してきた方角に向けて移動を始めたのだった
。。。
ビー‼ビー‼ビー‼ビー‼
日向子達が南東に向けて少し移動すると前方からけたたましい警告音が鳴り響いて来た
…ィィィーーー…ドンッ‼ドンッ‼
「うわっとぉ‼…何よ、対空兵器とかもあるの⁉」
今2人の周りではロケットなのか砲弾なのかは分からないが明らかに2人に向けて攻撃が始まった
〈日向子、上空では此方が不利だ‼降りて戦おう〉
「うん‼」
相手側には対空兵器があるが此方には有効な対地攻撃がない
あるにはあるが未だ敵の素性が把握出来ていない以上徒労に終わる可能性もあるのだ
2人は時々爆発する相手側の攻撃をすり抜けて地上へと舞い降りた
…ズズン、ズズン、ズズン
ギャリギャリギャリギャリギャリ
ドドドドドドドドドドドドドドド
「…予想以上に「軍隊」だったわね…」
〈うむ、よもやこれ程の古代兵器が現存しておるとは思わなんだな〉
日向子と始祖が呆れ顔で見つめる遥か前方、其処には地響きを伴い津波の様に攻撃兵器達が進軍していた
先頭にはドール、先程の斥候兵器、ロボットに見えるゴーレム、その後ろには塔にキャタピラーがついた様なモノが統率された動きで移動している
ゴーレム達が主力兵器なのだろう、ケンタウルスの様な個体や長槍を持つ個体、盾を構える個体と近接戦闘に特化した軍隊の様に見える
その後ろに控える塔の様なモノからは先程日向子達を攻撃したのだろう、大砲の様な筒があちこちから飛び出ていた
〈さて、如何するか?〉
始祖は下らなそうに日向子に訊ねる
「うーん、ばか正直に正面から叩く必要はないわよね…じゃあお互い遊撃って事で。」
〈フハハ、日向子らしいな。〉
始祖の問いに対する日向子の答え、それは「ノープラン」だった
2人の戦闘力から考えると目の前の隊列はただただ群れているだけにしか感じられないのだろう
こうして2対大隊の戦闘は幕をあける




