338 生け捕り?作戦
スラストア共和国近郊の草原で日向子とキメは謎の物体と二度目の戦闘を開始しようとしていた
[ギギッ、目標ハ質量ガ大幅ニ減少シテイル。フレアヲ展開シマス。]
…ボシュシュシュッ‼
《⁉》
謎の物体の背部が突然開き花火の火花の様なモノが飛び散った
《主‼ナノ細胞群の反応が途絶えた‼》
「えっ!?」
どうやら謎の物体はキメが放出しているナノ細胞をどうやってかは分からないが感知し
その対応策として何かを放出して動きか連携を阻害した様だ
(「…キメちゃんだけにどれだけ対応してるのよ…?」)
日向子は謎の物体の右手で違和感を覚える
日向子が横で身構えているのを完全に無視し、その物体はキメの反応だけに対応しているのだ
「キメちゃん、攻撃されたらそのまま真っ直ぐ後ろに跳んで‼」
日向子は前回使った風と水の加護による氷柱だけでなく時空間能力による結界固定を目指す様だ
ただ何分初めての試みなので生成にラグが生じる可能性が高い
その為キメにはなるべく直線的に回避行動を取って貰う事で謎の物体の行動予測を単純化しようとしているのだ
…ヴンッ‼ヴンッ‼
《っ‼》
謎の物体の両手の掌から例の熱線が放出された
キメは日向子の指示に従い後方に跳んで回避する
《主っ‼まだか⁉》
流石に直線的な回避では行動が読まれてしまい攻撃を躱し切れないと判断したキメが焦った声で日向子をせっつく
「ちょっ、ちょっと待って‼もう少しだから‼」
せっつかれた日向子も慌てて加護を展開し、ソコに時空間能力を付与しているがどうも配分が上手くいかない様であたふたしている
[ビビッ、目標捕捉完了。]
…ヴンッ‼
謎の物体はキメの回避行動の先を予測した様で先程よりも鋭い攻撃を仕掛けてきた
《あ、主っ‼》
…ジャッッ‼…ギキンッ!
。。。
「…ふぅ。どうにか間に合ったわね」
謎の物体の熱線はキメの目の前まで迫り消滅する
日向子の結界が謎の物体を氷柱内に閉じ込め更に時空間能力により制止状態のまま固定したのだ
「キメちゃん、ケガはなかった?」
《…》
氷柱内の状態を確認した日向子がキメの安否を確かめようと振り向くとキメがぶんむくれたいた
《主、これが無事に見えるか?》
「…あっ!?」
日向子の目には下半身を熱線で吹き飛ばされたキメが地べたに転がっているのが映っていた
「だ、大丈夫!?」
日向子は慌ててキメに駆け寄ろうとするがキメが右手を上げて制止する
《俺じゃなかったら大変な事になってるぞ?》
キメは周囲に散開させていたナノ細胞群を取り込むと直ぐに下半身を修復した
だが失った細胞は熱線により蒸発してしまった様でいつもより一回り小さくなってしまっていた
「…ごめんね?」
《頭部を消されなくて良かったよ…流石に死んでいただろうからな》
キメは日向子の謝罪を受けて大丈夫だと言わんばかりに皮肉を言った
その後氷柱を更に堅牢化し、キメは道中で魔物を補食しながら始祖達が待つドラール王国へと戻って行くのだった
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〈日向子様‼キメ様‼ご無事でしたかっ⁉〉
転移ではなく飛行にて戻って来た2人を出迎えたのは元元老院配下のピエールだった
「うん、ちょっと危なかったけど無事捕獲に成功したわよ」
〈おぉっ‼稼働中の検体があれば更に敵がハッキリしますな‼ご苦労様でした〉
ピエールは氷柱内の物体を見て嬉々としている
「生け捕りにはしたけどここからどう調べる訳?一旦氷柱から出さないとダメなんじゃないの?」
〈それは始祖様に策がおありになるそうですのでこのまま始祖様の下に運びましょう〉
ピエールは氷柱を抱えた日向子とキメを始祖がいる場所迄案内した
〈始祖様っ‼お二方が例の物体を無傷で捕獲していらしたそうですぞ‼〉
〈む?それは重畳。早速此方に運んでくれ〉
始祖は他の識者と共に発見された兵器や機械の鑑別に勤しんでいたようだ
ゴトリ
〈…成る程。確かに稼働中の水晶体には魔力反応があるな〉
前回強襲された為に破壊してしまった謎の物体は破損が激しく眉間と掌の水晶体にはヒビが入っていた
この為に直接調べるのが困難となっていたのだが今回は生け捕りにした事で無傷のままだ
〈日向子、この結界を余の合図で解いてくれぬか?〉
「えっ⁉だ、大丈夫なんですか?」
〈…余を何だと思っておるのだ?〉
始祖の言葉に不安な表情を浮かべた日向子にちょっと機嫌を悪くした様だ
「じゃあ…いつでもどうぞ‼」
〈…よし‼結界を解け‼〉
…フッ、キキンッ‼
「…あ。そうか」
日向子は始祖が目の前で謎の物体に直に時空間能力をかけ制止させたのを見て唖然としていた
〈何故氷柱で覆ったのかは分からぬが余と日向子レベルであれば時空間能力だけで動きは止められるであろう?〉
言われてみればその通り。
最初の交戦で氷柱を使ったのは謎の物体が機械なのか生物なのかが分からずそれ以上の損壊を防ぐ意味で覆った事を思い出していた
《あー…オホンッ!》
そんなやり取りをする傍らで怒気を込めたオーラを発するキメを日向子は気付きながらも無視を決め込んでいたのであった




