333 漸く停止
日向子とキメは今自らの細胞を分離させナノ細胞群として空気中に放って探索を続けていた
先ほど地下から出てきたロボット達にもナノ細胞を張り付けたがどうやら緊急停止をした製造ラインの復旧に向かった様だ
「(自動化されてるのに修復ロボット(ゴーレム)がいないのは不思議ね…)」
《(主、このままでは折角止めた機械が再稼働してしまうぞ?)》
先ほど停止したラインは途中が崩壊していた為に実質脅威には当たらないが製造された生体魔導核(?)が再びラインにのり詰まるのは余り宜しくない
とは言え再稼働の為にゴーレムが出て来た以上止めればまた同じ事の繰り返しになってしまう
日向子は選択を迫られていた
「(…仕方ないわ、一旦さっきの機械はそのまま動かしたままにしておきましょう
私は地下を探って来るからキメちゃんは例の製造装置と偵察用ゴーレムの監視をお願い)」
《(了解。)》
キメは地下に潜入した自身のナノ細胞群のコントロールを日向子に譲渡し、半身になった地上のナノ細胞群に意識を集中させる
日向子はキメから譲り受けたナノ細胞群と自身のナノ細胞と共に更に地下へと進んで行った
…ガシャン、ガシャン、ガシャン
地下への階段を下りていくとそこは体育館の5倍はありそうな空間で警らの為なのか先程見たゴーレムが二体一組で巡回している
遺骨の状態からしても数十年ではきかないレベルで無人の筈なのだがゴーレムにしろ装置にしろ何処からエネルギーを補給しているのだろう?
日向子の意識は空中のナノ細胞にあるので俯瞰でその周囲を観察するとこの区画は管制室の様な作りだと言うのが分かった
前方の壁面にはモニターらしきモノがありそれに向かって机と椅子が並んでいる
何となくかつてテレビで見たNA○Aの管制室を彷彿とさせた
机周りや通路にはやはり人骨が散らばっていて多分仕事中に突然死亡したと思われる
通路にある遺骨はゴーレムが巡回で踏んだのか、粉々に砕かれているモノも多い
並んだ机の中でも一番奥にある大きな机に向かうと他よりも大きな制御盤がついている
(「…此処が多分偉い人の席よね」)
他の机にも様々な制御盤が設置されているがこの机にはそれらを全て統括した様な感じになっている
問題はこれらのドレを押したら停止するか?だ
先程の工場(?)ラインの制御パネルはあからさまにオンオフが分かり易かったが此処の制御盤は様々なツマミがあって全く分からない
…ガシャン、ガシャンガシャン
日向子が悩んでいるといつの間にか警備ゴーレムが真横に来ていた
(「あっ‼」)
日向子はゴーレムの胸元に記号が刻まれているのを発見する
(これって確か…)
制御盤を良く見ると右端にゴーレムに刻まれていた記号と同じモノが書かれていてその下には恐らく現在稼働しているゴーレム達のパラメーターの様なモノが動いている
暗転したパラメーターや点滅しているパラメーター、点灯したパラメーターの上には何かボタンが沢山並んでいる
(…これかな?)
日向子は試しに1つのボタンを押してみる
…ガシャン、ガシャン、プシー…
先程日向子の真横に来ていたゴーレムの一体がしゃがみ込んでその動きを止めた
(「ん、やっぱりこれね‼」)
法則性を読んだ日向子は次々とオフボタンを押していく
…ガシャン、プシー、プシー
管制室にいたゴーレムだけでなくあちこちで停止した音が聞こえてくる
(「キメちゃん、ゴーレムは停止出来たわよ」)
分体のリンクでキメに連絡し、日向子も散らばらせていたナノ細胞を収束させる
《主、ラインも止めて来たぞ》
管制室に入って来たキメは日向子に報告する
「ありがと、後は…これどうしようか?」
何が原因で滅びたのかは分からない、だがドラールの技術水準は現在のこの世界では明らかにオーバーテクノロジーなのだ
世界滅亡の原因を取り除いたまでは良いがこの技術を広める訳にはいかない
《む…そうだな、とにかく全体を詳しく調査してから判断しよう。それからでも遅くはない筈だ》
「そうね、そうしましょう」
キメの提案に日向子も頷きひとまずドラール国内の調査をする事にしたのであった
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「はー…見れば見る程凄いわね。まさかこんな形で発展した文明があったなんてね…」
現在日向子とキメはドラール国内の一般居住区を調査している
やはり街中の至る所に人骨や魔物の骨が散らばっているが日向子が驚いたのはその高度な文明技術であった
薄く透明度の高いガラス、石畳の隙間を平坦化する為に充填されている何か、街灯や時計らしきモノ迄ある
家の中に入ればIH風の釜戸、冷蔵庫など家電製品らしきモノも見受けられる
尤もこれらは恐らく電力による稼働ではなく例の魔力結晶を動力源としたモノであろうが
日向子の前世と比べてもそれほど遜色のない生活水準であったと予想された
(…うーん…私達だけで判断するなは大きすぎるわね…)
日向子はドラールの高度な文明を目の当たりにして判断に迷うのであった




