330 ドラールへの道
昨日日向子の身に起こった撃墜騒ぎにより日向子達は計画を大幅修正する必要が出て来た
魔物や魔法があるこの世界で科学文明が発達した国家が存在しているとは全く考えていなかったからだ
少なくとも高高度からの偵察は断念せねばなるまい
「その後が問題なのよね…」
日向子は途中で光学迷彩によるステルス効果で無事追撃を免れたがその後ドラール王国から何の反応もない
普通であれば最低でも地上部隊による索敵・追撃行動がなければちょっとおかしいのだ
「もしミサイルが開発されている様な文明国家ならレーダーとか他にも高度な兵器を保有していてもおかしくないわ」
《…ならどうする?》
日向子の仮定が正しいのであれば未知の技術に対応出来ないキメには偵察行動は任せる事は出来ない
ただ少し引っ掛かる事がある日向子はとある実験をしてみる事にした
ー翌日ー
「良いわよ、キメちゃん‼」
《了解‼》
…バサッ、バサッ、バサッ、
キメは体から一羽の鳥を生み出した
この辺でも良く見られそうな普通の渡り鳥だ
その鳥は念の為かなり遠回りをさせた上で山脈を越えドラール王国上空へと飛翔させる
…ューーーン…ドバンッ‼
《!!》
「…やっぱり」
キメが生み出した渡り鳥はドラール王国の上空で何かにより撃墜され爆散した
キメには日向子の言葉がさっぱり理解出来ていない
《主、どういう事だ?》
「長老が言ってた「謎の光」、この正体がさっきのミサイルって事よ」
《…成る程?》
日向子はハシル一族の長老から聞いた謎の物体の目撃情報をキメに話す
《そうか、では時々目撃された謎の光の正体が鳥や魔物に反応した迎撃ミサイル?の光だったという訳だな?》
「多分ね。もしかすると空を飛ぶ物体ってのも今のに該当するかも知れないし…もしかすると航空兵器があるのかも知れない…」
日向子はこの世界の固定観念に囚われず可能性を模索中した
(もし前世と似通った文明が発達していたとしたら…)
そう考えるとハシル一族が目撃した謎の物体もおおよその見当がつく
・空飛ぶ謎の物体=航空機
・高速移動する謎の物体=戦車・装甲車
・謎の飛翔する光=ミサイル
…あり得ない。あり得ないが日向子の存在自体も既にあり得ないのだ、現に撃墜されている
「…この考えを肯定するとちょっと厄介ね…」
日向子の推測が正しいとなるとドラール王国では高度な科学文明を持ち軍事力に充てている事になる
どういうモノかは分からないが少なくとも地対空ミサイルに準じた兵器は所有しているのだ
「…そう言えば…例の地震発生装置も何だか訳分からない兵器だったわよね?」
《…確かに。金属と魔物の融合した兵器だったな…》
「もしかすると私の前世とは違う技術が発達して結果的に似通った兵器が生まれたのかも…」
…魔導兵器
何となく呟いた言葉が現実味を帯びて日向子の頭を埋め尽くす
「…となれば一応この目で確かめてみなきゃね」
日向子とキメはミサイル確認に続く案を模索していった
ー翌日ー
…ギュラララララ…ドンッ‼
ヒューーー…ドバンッ‼
(…やっぱり。キメちゃん、退くわよ‼)
次の日、日向子はある仮定を確かめる為にキメに恐竜型魔物を生み出して貰いドラールに向けて走らせた
雪煙を上げてキメの魔物に突進してきた鉄の塊、戦車が現れた
前世で見た戦車とは少し型は違うが一門の大砲を装備し、その砲撃により魔物を迎撃して退治していた
念の為にキメに飛行型魔物を飛ばして貰い低空飛行でドラールに向けさせたが航空機が現れる事はなくミサイルでの迎撃により爆散した
そして今、日向子フォート内部で日向子はこう結論づけた
「ドラールは科学・機械文明が発達した軍事力を所有している」
ソコまで分ければ対応は可能だと日向子は告げた
前世と似通った兵器があったとしても此方には前世では考えられない力がある
日向子はキメと共に戦略パターンを幾つか考案していったのである
ー更に翌日ー
(…サクッ、サクッ、サクッ、)
日向子とキメは光学迷彩効果による視認阻害を使用してドラールへと近付いている
(やっぱり視認出来ないモノへは反応が鈍そうね…)
日向子の予測では前世のレーダーに相当する部分を何らかの生体レーダーの様なモノで代替している、と読んだのだ
恐らく魔物の感覚を組み込んだ生体レーダー
これが正体なのだろう
日向子達は協議の上、視認阻害・防音・念の為匂い等も阻害する方法を考えついた
体の表面に薄い空気の膜を作りソコに光学迷彩を生み出す水滴をコーティングしたのだ
もし肉眼での目視をされれば接近した時に発見されてしまうだろうが昨日迄の反応から肉眼での索敵は行っていない事が分かっていた
となれば機械を騙す方法を考えつけば最低でもドラールへの侵入は可能と判断したのだ
(…キメはちゃん、じゃあ入るわよ)
2人はドラール王国の城壁にある門から堂々と侵入を開始した




