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ゾンビーナ!  作者: とれさん
321/378

321 ゴスピア最北端の町


日向子とキメはラクルの案内でバンパイア領内の人族街に入り防寒具一式を購入した


〈ところでその北の大陸に渡る方法は何かあるのか?〉


ラクルは道中を案じている様だ


「行った事がないから転移は出来ないけど…飛べば渡れるんじゃないかな?」


〈…それはどうかな?この領外でも寒さが厳し過ぎて飛行出来ないエリアがあるのだぞ?

念の為に飛行以外の方法で海を渡る事も想定しておいた方が良い〉


「えっ?そんなに寒さがヤバいの?もしラクルさんの言う通りの寒さだったら嫌だなぁ…」


日向子自身、風の加護による体温調節は可能で寒さとは無縁ではあるのだが「見た目」がダメなのである

前世で体験した寒さに対する嫌悪感が視覚からフィードバックされて(何となく寒い)と思い込んでしまうのだ


飛行が阻害される、と言うのは恐らく物理的なのだろう

加護持ちであれば大した障害にはならないが翼が凍ってしまうのだと容易に考えついた


〈国交は断絶していようとも民間レベルの交流はある筈だ。今回はその海路を利用して北の大陸に向かうのが得策だと思う〉


地震を誘発させるあの魔導兵器、それ自体の危機はとりあえず去った今諸悪の根元を探す旅はそれほど火急を要するモノではなくなっていたのだ


「…そうね、体力温存の意味合いも兼ねて船旅にしましょう」


日向子達は追加で船旅用の食料等も買い込む事にしたのだった


ー翌日ー


ホワイトデスフォックスという魔物の毛皮で作られた防寒具を纏った日向子とキメはラクルや始祖に別れを告げボルピア領へと転移した


日向子達は一旦ファングファミリーの根城を経由するつもりではいたのだがそれだとファングに宴会に誘われてしまう可能性があり日向子はそれを断りきる自信がなかったのだ


今日向子達が立っているのはゴスピア国の城下町の外れである


ツヴァイ王の依頼でヒルダを探し当てた宿屋もここからは近いが何せ転移には一度行って座標を認識しないと行けないというデメリットがある為にやむを得ない


「えっと…多分海沿いに出れば漁師町位はあるわよね?」


行き当たりばったりではあるが日向子とキメは北に向かい飛び立った


《主、町だ》


小一時間程空を飛んでいると海岸線が見え小さいが港を擁する漁師町が見えてきた


「此処で北の大陸に行く船を探しましょ」


2人は混乱を避ける為に漁師町の手前に降下を始めるのであった


ー漁師町ポンペアー


南半球スラストア共和国圏内最北端にあるこの漁師町は規模こそ小さいものの唯一北の大陸との交流を「黙認」されている港町である


国交が途絶えた今でも交流を黙認されている理由の1つに北の大陸から獲れる魔物資源が貴重でありスラストア圏内では入手が不可能な品がある為だ


シーワルス、文字通りセイウチに似た魔物なのだがその海魔獣から取れる全てが有益な資材となる


肉は美味で美食家達垂涎の一品、脂肪は燃焼率の高い燃料となり内臓は精製すると効果の高い生薬となる

口元に生えた2本の牙と骨は武器にもコレクションにもなり余す所がないと言われる程なのだ


過去にあった国交を断絶する程の戦争の一端はこのシーワルスの資源の争奪戦でもあった、とポンペアの老人が教えてくれた


「へぇ~…今は北の大陸の猟師?さん達から入手するしか方法がないんですか?」


日向子は北の大陸へ渡る船を探す途中で老人から色んな話を聞いている


「うむ。そもそもシーワルスはそれまでの乱獲により数が減っていての、北の猟師達でないと見つけるのも難しい上に手強くて我等では太刀打ち出来ぬのだよ」


「そうなんですか、それでそのシーワルスの取引をしている所は何処にあるのかしら?」


「そりゃ港にあるビターズ商会に行けばえぇ。北との流通はビターズんトコしか認められておらぬからのぅ」


「ありがと、お爺ちゃん☆」


日向子は老人に礼を言うと港に向かって歩き出した


《主、情報を集めて来たぞ》


そんな日向子にキメが両手一杯の海産物を持って近付いて来た


「…キメちゃんソレ何なの?」


キメは普段ナノ細胞による隠密行動で情報収集を行っている為に正攻法(対人の質問)には慣れていなかった


比較的話のしやすい商店の人間に聞いて回ったのだが商売上手な店主達に上手く誘導されしこたま買い物をさせられたらしい


《情報と交換と言われてやむを得ず…まぁ皆の手土産にはなるだろう?》


苦しい言い逃れをしたが転移なり空間移動が使えなければナマモノを土産にした所で只の生ゴミである


今から北の大陸に行くというのに保存が利かないモノをどうするつめりだったのだろうか?


その日早目に宿を取りキメに北半球に飛んでナマモノを土産として配って来いと命じた日向子は宿屋一階にある酒場で1人飲んでいた


荒っぽい漁師町で日向子の様に(見た目華奢な)若い女性が1人酒場にいるのは非常に目立つ


案の定飲んでいた客達から絡まれる事になる


「よう、姉ちゃん‼こっち来て俺達と飲もうぜ?奢るから、な?」


明らかに下心丸出しの男が日向子のテーブルの空いた席に座り話しかけて来たのであった

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