317 危険な賭け part1
日向子達は本部にて恐らく今回の地震を発生させた生体魔導兵器らしきモノの分解・解析に着手した
〈そもそも高温・高圧に耐え得る外殻を持っている様ですので分解出来るかどうか…〉
魔導師の技術班もどこから手をつけて良いのか攻めあぐねている様子だ
『しかしコレが人の手によって作られたモノであるならば必ず方法はある筈だ
今始祖殿に静止魔法をかけて貰っている間に糸口だけでも発見しないとこの先がないぞ?』
ワイトやシルグは多少危険を侵しても異物の作動原理を突き止める事を優先すべき、と主張する
〈ですが…これが兵器であるならば解除に対して何らかの自衛機能が備わっているモノと考えるのが定石です
このまま此処で作業にあたるのはリスクが高過ぎます〉
技術班の主張もワイト達の主張もどちらも尤もである
そこで日向子は本部から一山越えた所に穴を掘ってそこで作業にあたる事を提案し、皆に受諾された
まぁ本当に地震を発生させる程の兵器であれば一山越えた所でそのエネルギーは緩和出来るとは思えないのだが利便性やその他を考慮した上でのギリギリのラインだったのだ
穴を掘るにあたっては日向子のアイデアでオーシュに水圧を極度に高めた水流を生み出して貰いそれをウォータージェットの様に細く噴出させる事により硬い岩盤をくり貫いて貰った
〈では…始めます〉
技術班は静止された異物の外殻部分から調査を始めたのである
この作業には結局5時間程掛かったのだが大まかな所見を纏めると
・この外殻には接合部(継ぎ目)がなく多分何らかの魔法、技術により接着されているらしい
・外殻及び中心部の結晶には作動制御する装置等はなく恐らく何かの装置でプログラミングされ、切り離された状態で自律行動出来る様になっている
・静止状態ではあるがこの異物には今の所自爆装置は発見出来ていない
・中心部のトカゲ様の魔物は恐らく細胞操作により生み出されたデザインビーストでこの異物自体の制御や行動をコントロールさせる為に存在していると推測される
・動力源と思われる赤い結晶部分にはかなりのエネルギーが蓄積されておりコレが暴走した場合甚大な被害を及ぼし兼ねない
結果分解の糸口も掴めず技術班から白旗が上がったのであった
〈…情けない…余の一族でありながらこのような不甲斐なさを露呈するとはな…死して詫びを入れるか?〉
始祖は魔導師の技術班に加わっていたバンパイア達を一睨して殺気を浴びせている
「始祖さん?そんなの後で良いから先ずはこの兵器の原理を解析するのが先決でしょ?」
〈む…そうだな…〉
日向子は始祖を窘め優先順位が違うと訴えた
これにより命拾いしたバンパイア達は心の中で日向子に感謝していたのであった
《主…ちょっと良いか?》
解析作業を見ていたキメが日向子を呼んだ
「どうしたの?キメちゃん」
《いや、危険なのは分かっているのだが…方法を1つ思い付いたのだ》
「えっ⁉何何?何でも良いから聞かせて‼」
八方塞がりの今はどんな意見も貴重である
《今は始祖殿による静止状態になっているが…中心部にいる魔物が生体である以上俺か主の触手による侵食操作が可能なんじゃないかな?と思ってな…》
「…でもそれって一旦静止状態を解除しないと試せないわよね?」
《…そうなるな》
一時的に静止魔法で動きを止めている異物を動かして触手による侵食制御を行う
万が一制御出来なかった場合のリスクが高すぎるがこのまま手をこまねいていても結局は静止魔法には限界が来てしまう
「…ん。一か八か、試してみる価値はありそうね‼」
日向子はキメの提案を受け入れたのだ
但し一山越えたこの場所では制御出来なかった場合、大爆発によって全滅という事も考えられる
そこで日向子が出したのが水中で作業を行うプランだった
前世で水爆実験を海中で行っていた様な映像が記憶にあったからに過ぎないのだがまぁ此処で爆発するよりは被害が少ないだろう
そこでオーシュに空気層を作って貰い日向子とキメが異物を持って中に入りそのまま海底近くに連れて行って貰う事にした
始祖は自ら同行を希望し〈余が行かねば静止を解除出来ぬだろう?〉という言葉で結果同行する事になったのだった
ー海底付近ー
《…ではお願いします‼》
キメは異物の中心部にいるトカゲ様魔物と対峙しつつ始祖に静止の解除を求めた
〈うむ、では解除するぞ‼〉
…フッ…ゴポッ…ゴポポッ…
静止状態では分からなかったが中心部の内部は液体の様な流動性があり、魔物はその内部で活動を始めた
…シュッ‼ビタッ、ビタッ‼
結晶部分にキメの触手が張り付き侵食を開始する
するとトカゲ様魔物は一瞬ビクンッ‼と跳ねた後に触手の侵食を許した様だ
「…どう?キメちゃん」
《…もう少し待ってくれ、どうやらこの魔物は原始的な生物…不味い!》
キメの叫びに呼応した様にトカゲ様魔物が暴れ出した




