315 作戦への準備
大まかな作戦を決めた事で物事が順序立てて進む様になった
初段の魔導師達による探知魔法は最初躓いて頓挫しかけたが日向子のアイデアにより一気に目処がついたのだった
「えっと…イルカ…って言ってもいないかな?海の生き物なんですけどエコロケーションっていうソナーを使って獲物とかの距離を測ったりするんですよ
…そう言う感じで探知魔法を使えませんか?」
戸惑う魔導師達に日向子は実際に境界線の地下で会得したエコロケーションを使って見せた
「な、なるほどぉ?」
「へえ~…知ってたがね?」
どうも魔導師達のイントネーションが怪しい
(「…何だ、あの魔法は?」)
(「お主は知っていたか?」)
どうも日向子の使う魔法は基礎を学んでいないせいか規格外の様だ、魔導師達はプライドのせいで知らぬとは言えなかったのだ
考えてみれば地下に降りる際に普通は炎系の魔法で照らす事を考える筈で生体ソナーを使おうとは思わない
日向子は内心動揺している魔導師達に更に提案を重ねる
「エコロケーションが難しいなら衝撃波を生み出す魔法を地中に打ち込んでその反響でロケーション探索が出来ませんか?」
「うむっ?いやっ?それはどうだろうな…な、なぁ?」
「ふへっ?そ、そう…かもな?」
日向子の自由な発想から生まれる異次元魔法に魔導師達の狭窄した想像力はパンク寸前だ
結局魔導師達は音を生み出す魔法を地中に放ちその反響音で地中内部の構造を把握する術を考えついて実行、漸く地中探索が可能になり作戦が回り始めたのだった
地中探索は魔導師達に任せ日向子とキメはラルドの細胞を取り込む作業に掛かる
『はむはむ…痛みはないのだな?』
ラルドはこのところ両手に何かしらの食べ物が握られており若干ふくよかになって来ていた
「痛くはないけど…ダイエットしないとデブドラゴンとか格好悪いわよ?」
日向子の容赦ない口撃がラルドの心を抉る
『なっ‼』
プチィッ‼
ラルドの隙をついて細胞をゲットした日向子とキメは早速取り込んで融合を始めた
《やはり竜族の細胞ともなると己の力にするのに時間が掛かるな…》
日向子はそうでもないがキメはちょっと苦労している
「キメちゃんが大地の加護を得るか否かでラルドさんの負担も変わるわ、頑張って‼」
日向子はキメを元気づけると自分はさっさと融合を済ませ本部へと戻っていく
(…主とはいつの間にか差が開いてしまったな…)
キメは日向子の後ろ姿を見ながら己の不甲斐なさを恥じていた
ー翌日ー
日向子は融合の完了したキメとラルドを連れて地震計の振れが一番小さいエリアを訪れていた
ラルドから譲り受けた大地の加護による地殻操作が有効かどうか実験する為である
「…じゃあラルドさん、お願いします」
振れが小さいとは言え何らかの影響が出ている場所でもある
不慣れな日向子やキメが失敗するリスクは避けたいのだ
『モグモグ…ではいくぞ‼』
ラルドは体内の魔力を大地の加護に変換して更に日向子から教わった地殻のイメージを修正するイメージを送り込んでいく
…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
。。。シーン。。。
『…上手くいった…のか?』
日向子は確認をする為にエコロケーションを地中に放ち反響を待つ
。。。
「…やったわ、成功よ‼」
返って来た反響を脳内で映像化処理すると歪んでいた地殻のズレが綺麗に収まっている
『なるべく平らになる様にイメージしただけなのだが…上手くいくモノなのだな…』
加護を行使したラルドが一番驚いている
「このレベルの歪みであればラルドさんの方法で何とかなりそうね
じゃあ同じレベルの場所を探して今度はキメちゃんと私が挑戦して見るわ」
この後三人は可能な限りの修正を行い夕方頃魔力を使い果たしたラルドとキメが日向子に抱えられて帰って来てシルグ達を慌てさせた
明日は二人の回復を待って休息日とし、魔導師達の探索をより精密に行って貰う事にしたのだった
。。。
「日向子様‼」
作戦本部となっているファングの根城に1人の魔導師が飛び込んで来た
スラストア王宮魔導師長、ダンドラ・サルベンサだ
彼は立場上この作戦の魔導師長をして貰っていた
「ダンドラさん、どうしたの?」
仮眠を取る為にソファーに寝転んでいた日向子はダンドラの声で体を起こす
「あっ、お休みでしたか…失礼致しました」
「大丈夫です。ところで何かあった?」
「はい、探知魔法で地中を調べておりました処明らかな「異物」が発見されまして…日向子様にご報告に上がりました」
「んっ…‼じゃあ見て見ましょう」
日向子は軽く伸びをしてからダンドラについて現場に向かう
場所は地震が群発している(恐らく中心部)「要警戒ポイント」だ
ダンドラは魔導師長らしく無詠唱で空間移動魔法を展開し、日向子を誘った
「ダ、ダンドラ様‼例の物体は移動しております‼」
「…高熱のマグマの中で活動可能なのか…?」
ダンドラと日向子が現地に到着すると現地で異物を監視していた魔導師達が慌ただしく動き回ってあた
「異物」は何らかの意思を持って移動を始めた様だった




