314 作戦会議
ファング達の調査とバンパイア達の開発した機械、魔導師の通知魔術で暫定的ではあるが監視体制が整った
『問題は海の中や我々が入れない場所の探索に時間が取れなかった事だな…』
シルグは最初オーシュに頼んで海中探索をさせようと思っていたのだが
異常現象は海中でも起こっているらしく海洋魔獣が興奮状態に陥っていてとても進めなかった為に断念したそうだ
海中でも行動可能なメンバーの人手不足が悔やまれる
取り敢えず地震計は大陸各地の5箇所に設置、それを魔導師達の探知魔法でリンクさせ非常時には警鐘を鳴らす仕組みになっている
日向子とキメ、始祖、ラクル、四竜、ファングと魔導師の代表は今発生範囲に於ける地震兵器の可能性を模索していたのだった
「私の前世ではそういう研究が極秘に進められていた、とか言う眉唾な噂があったけどどれも非現実的だったわ
でも理論上は可能とされていたサンプルイメージを皆で共有しましょう」
日向子はキメの協力を得て本部に集結している全員に触手を媒介としたイメージ伝達を行う
『むぅ…「核爆弾」とは何だ?』
「…核撃魔法の数百倍は威力がありそうだな…」
〈HAARPとか言う兵器?は魔法なしに可能だったのか?〉
等と様々な意見が生み出される
「これはあくまで理論上地震を任意且つ意図的に生み出す事が可能「かも知れない」程度の空論です
ですがもし古代文明が何らかの形でドラール王国に残っていてその兵器によって今回の事態が発生しているとしたら…
そんな事を仮定した上での所謂心の準備程度に考えて下さい」
日向子はイメージを送り終えると触手を皆から外して話を進める
「色々分からない事があると思いますので今の内に疑問を解消しておきたいと思います」
日向子は先ず地震が起こるシステムを幾つか挙げて説明をする
ついでに先程始祖が唸っていた核爆弾やHAARPに関しても知りうる限り情報を伝える
〈…原子を制御して爆発を生むのか?それは元素魔法やらに近いのでは?〉
「我が魔導師の間でも元素魔法の存在は認めますが…使い手は現在おりませぬな…」
『HAARPと言うのは大気中に金属の粒子を撒いてそれを加熱する…のか?それが地震とどう繋がる』
一同初見の単語に困惑している様で次第に収拾がつかなくなってくる
「ファングさんが偶然発見した地震の発生範囲をこう…囲うと地震の大元はドラール王国のある北の大陸から放射線状に拡がっているのが分かります、
これを人為的攻撃とみなすならばこの騒動が収まった後で北の大陸には行く必要性がありますね」
全員がなるほど、と一応の同意を得た段階でこれからの動きをどうするか?を話し合う
「ドラールを後回しにしてこの一件を終結させるにはラルドさんの固有能力に頼るしかなくなるんですが…大丈夫ですか?」
突然日向子に話を振られたラルドは咥えていた肉をポロリと落としつつ皆の視線を一身に受ける
『…どうした?この肉はちゃんと断って受け取ったモノだぞ?』
どうやら全く聞いていなかったらしい
そこで改めて日向子は作戦をおさらいする
「震源地の各所でラルドさんの固有能力、大地の加護を使って貰って沈静化を図ります。
この方法は先ず地殻やプレートの状態がどうなっているのか?マントル対流の状態を調べる必要はありますが上手くいけば地殻の歪みを無くし地震の規模を緩和出来るかも知れません」
『はむはむ…成る程』
『ラルド…食べながらは行儀が悪いぞ』
「ラルドさん、更に成功確率をあげる為に私とキメちゃんに少し細胞を頂きたいんですけど…」
『はむはむ、む?構わんぞ?』
『…だから…』
「良かった、断られたらまた別の方法を考えなきゃならない所でした」
『はむはむ…世界が崩壊しそうな時は互いに協力するのは当然だ』
『。。。』
「ではラルドさんの大地の加護による地殻補正が最終段階、魔導師さん達は探知魔法で地面の下は見られますか?」
「試した事はないがやってみよう。術式を多少弄ればある程度迄は見れよう」
『はむはむ…』
「では魔導師さん達の探知による地質調査が初段になります。」
〈日向子、我等は何をすれば良いのだ?〉
始祖は日向子に訊ねる
「バンパイアの皆さんは地震計の監視班とバンパイアアイを使える人、魅了を使える人を分けます」
〈それで?〉
「この作戦では一応国王達には許可は取っていますが流石に竜やバンパイアが大挙押し寄せたりしたら恐怖心を抱いて混乱する可能性もあります
行動中の牽制もありますが作戦終了後も悪印象が残らない様に民衆に幻覚をかけて欲しいんです」
〈…というと我等や竜達の姿を恐怖心を抱かぬ様な姿に偽装する、という認識で良いのか?〉
「そうです。私や始祖さん、四竜さん達は終われば北半球に戻るので問題はありませんが残るファングさん達は敵判定されたら迫害を受けるかも知れませんしね」
〈成る程〉
まだまだ大まかではあるが作戦を練れる段階迄は進んだのだ




