312 南北合流
何とか数日分の予約投稿を終了しました
上手く復帰出来ればご迷惑をおかけせずに済むと思います
ーゴルド城ー
「よーし、忘れ物はないわね?」
日向子達は空間移動魔法を使って各地を奔走し、出発の準備を整えた
始祖やラクルをはじめとするバンパイア一族、四竜率いる竜族達、ゴルド領内からは兵糧とウシャ爺謹製の回復薬&新薬
問題はこれだけの大質量を空間移動出来るか?と言う事に尽きるがソコはシルグが太鼓判を押してくれた
『実はワシがポンポン空間移動しているのをワイトが羨ましがってな、四竜全員が使える様に教え込んでおったのよ』
…まぁ過程はいずれにせよ心強い
実際日向子は空間移動の上位魔法「転移」を習得しているのでぶっちゃけ1人でもイケそうだが
日向子の力は有事に備えてなるべく温存した方が得策なのだ
「じゃあ皆宜しく!」
バンパイア一族と物資を四竜、キメ、日向子が取り囲んで空間移動魔法を使用する
日向子とキメの触手により思念リンクされた四竜達の力が循環し、巨大な魔方陣が姿を現した
〈おおっ⁉〉
〈何とっ⁉〉
バンパイア達が戸惑う様子を見せる間に魔方陣は完成し、全ての姿が一瞬でかき消えた
ー南半球、ファングの根城ー
…ズバッ‼
『おおっ!?な、何だぁ!?』
空間が歪んだかと思ったら突如大量の物資や四竜、バンパイアが現れてファングは腰を抜かしそうになっていた
『ん?…ファングではないか⁉』
『生きていたのか?』
ラルドやオーシュはファングの事を聞き及んでいなかったので此方も腰を抜かさんばかりに驚いている
〈…空間移動とは凄まじいな…〉
〈是非我が一族にも…〉
元老院達をはじめとするバンパイア達は伝承のみで絶えていた魔法の尋常ならざる力に魅入られてしまった様だ
「じゃあ一旦此処で待機していて下さいね、私は王様達の所に行って魔導師達を連れて来ますから」
日向子はキメを連れてツヴァイ王とアーチ王の所へ転移した
最初にゴスピア領、ツヴァイ王の下に転移したのだがソコにはアーチ王と急遽集められた魔導師達百名程が日向子達の来訪を待っていた
「日向子殿‼調査してみると確かに他国、特にスラストアの南西部以南が被害が出ている様でした
アイン王も事態を重く見て独自に調査を始めると確約して頂きました
此処にいる魔導師達は我が国とデスピア、スラストアの王宮魔導師達からの選抜された者達ですので
存分に使って下さい」
「ありがとうございます‼実はある程度仮説が立ったのでとりあえずそれに従って対処しようと思ってます」
「おお、そうでしたか‼っと、その内容は聞く時間はなさそうですな?」
「えぇ、ですが確証を得たら直ぐにお伝えしますのでご了承下さい」
「分かりました‼」
ツヴァイ王とアーチ王は日向子に全幅の信頼を寄せているので説得する必要はなく説明も事後報告で良い、と快く送り出してくれたのだった
…スッ…
「こ、こんな大規模な空間移動は初めてだ」
「…もしや転移ではないのか?無詠唱だったぞ?」
「此処は…」
日向子とキメに連れられてファングの根城に飛んだ宮廷魔導師達は口々に日向子達の魔法に驚愕し動揺を隠しきれなかったのだが
周囲で待機していた者達の姿を確認すると更に混乱した
「りゅ、竜だ‼」
「あ、あれはバンパイアではないか⁉」
「もしや此処は…山岳地帯に住み着いているという竜族の巣か⁉」
一応事情説明が面倒だと思ってシルグ達には人型に変態して貰っていたのだが
どうやら魔導師の中には鑑定魔法が使える者が混じっていたらしく即座に看破されてしまった
動揺と混乱が入り乱れる中、日向子は大声を張り上げた
「皆さん‼今は異種族だろうが何だろうが関係ありません‼」
…シーン…
さっきまでざわついていた現場が水を打った様に静まり返る
「このまま見過ごすと南半球はおろか世界が崩壊する可能性がある以上、わだかまりを捨て全員で事に当たりましょう!」
日向子の一喝は其処にいた全員の心に届いた様である
『《「おうっ!」》』
こうして日向子の下、南北合同作戦が決行されたのであった
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先ず先遣隊としてファング率いるファミリーと四竜達が震源地の特定と周囲の状況確認の為に広範囲に散って貰った
震源地がある程度絞れた段階でラルドの固有能力で更に詳細を調査して貰う予定だ
バンパイア一族は何やら機械の様なモノを組み立て始めていた
日向子が訊ねるとバンパイア一族の中には不老不死の長所を生かして長年研究に没頭する者が多く
今組み立てているのは日向子の前世で言う地震計の様なモノらしい
問題は地震計同士の相互リンクと拾った波形の集積方法であったが魔法がある南半球であれば少しの改造で一挙に解決するらしいとの事なので
日向子は宮廷魔導師の何人かをバンパイア達に回し地震計の改造を手伝わせる事にしたのだった
日向子とキメは残りの宮廷魔導師達の能力を調査する事に注力した
最初他国同士、お互いの能力を秘匿したり牽制しあって全く話にならなかったので
途中から日向子とキメは触手を使って半ば強制的に調査する方法に切り替えたのだ
魔導師達からは侵害だ何だと不満が出たが呆れ顔でその様子を見ていたラクルと始祖がバンパイアアイを使って黙らせてくれたのであった




