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ゾンビーナ!  作者: とれさん
302/378

302 面接会当日 part2


第一関門は「識字率」だ。


日向子の前世でも先進国はほぼ100%でもあれだけ文明が発達した世界で70%を割る国は沢山あった


ましてやこの世界、貧富の差に加えて身分制度等で満足に教育を受けられる環境ではないのだ


今回の面接に備えて名前や簡単な単語は事前に覚えて来た可能性もある為にボックスの中にはこの世界にはない一文が張られていた


「少年老い易く 学成り難し」

「一寸の光陰 軽んず可からず」

「階前の梧葉すでに秋声」


漢詩だ。この世界には存在していないこの文を読めた者が突破出来る


ボックスには入り口と出口が1つずつ、前後に設けられ防音処理が施されている

参加者は入り口から入り壁の一文を読んで出口から出て先で待つ兵士に答えを言うシステムにした


当然読めても意味が分からない参加者が多い中、数名が意味を答えたそうだ

もしかしたら日向子の様に転生者が混じっているのかも知れない


第一関門を無事潜り抜けられた参加者は錬成場の出口から退場し、城内に招かれる


そんなシステムだと知らない不正解者達は自分達がふるい落とされたのも知らずに正解者を小馬鹿にしている


事務員なので多少の知識は必要だが性格の悪い輩は必要ないので重畳だ


こうして二時間後、城内に設けられた待機室に案内されたのは500余名中120名だった


これを多いと取るか少ないと取るかは意見が分かれるだろうが日向子の感覚では(思ったより多かったな…)であった


この世界では学校という分野が発達していない

上流階級は当然家庭教師を雇い幼い頃から学問を学ぶが一般で学ぶチャンスを得られるのは商人等の子息や奉公人、若しくは親の教育等になる


簡単な読み書きであれば丸暗記という手もあるが先程の出題の様にこの世界にない文章を読むとなると難易度は高くなるのだ


用意された椅子に着席している参加者達を別室から観察していた日向子とキメは予想を裏切る人数に驚いていた


《どうする?主》


「うーん、まぁ第二関門を抜けた人数次第で関門を増やすかどうか、決めましょう」


待機室に紙の束を持った兵士達が入室する


「これから第二関門を始める。この紙に書かれた問題を解き終わったら前にいる兵に渡して今いる席で待機する事‼」


第二関門は「計算等の筆記」


書類には数字が並んでいたりする為に計算能力が求められる

これだけだと今第一関門をクリアした人材であれば易しいと考えた日向子は数問追加していた


計算式と共に書かれていたのは


「今後ゴルド領に於いて必要な施策とは?」

「雇い主が間違った方向に進んだ時、貴方はどうしますか?」


という文だった


自由筆記になるがまさかここまで残るとは思っていなかったので苦肉の策とも言える


ソコに「二の矢」がフッ、と姿を現した


「日向子様、通過者の中に数名間者の姿が見受けられます。排除しますか?」


「あー、やっぱりね…今は良いわ。後で目立たない様に捕縛しておいて」


「御意。」


今回の募集は謂わばゴルド領の深部に潜り込む絶好の機会でもある

その為他国や日向子を良く思わない貴族達の手先が紛れ込むだろう、と言うのは想定内であった


潜入チャンスという事は逆に一網打尽のチャンスでもある


わざわざ公募したのはこういう事情もあったのだ


《間者以外にも息の掛かった人間はいるのだろうな…》


キメは参加者を見回しながら呟いた


「でも最終選考者はよもや脳内迄調べられるとは思ってないでしょうからね、本当に有能な人が多く残ってくれる事を願うわ…」


日向子の言葉にキメは悪い笑顔を顔に張り付けたのであった


「良し、ここまで‼」


予定していた刻限が過ぎ、兵士達が答案用紙を回収し始める


参加者達の態度は様々だ

余裕綽々でふんぞり返っている者、頭を抱えて俯く者、自らの答案を再度確認する者、千差万別だった


20分程で採点は完了し、取り敢えず正解率の高い者は通過とする


自由筆記問題はあくまでも苦肉の策でありソコに正解はない

ただ危険思想を持つ者や領主に対してゴマを擂る文言を書いた人間は落第だ


設問の正解ばかりに気を取られ設問の意味を考えない人間は学があっても考えが浅いと断じたのだ


こうして第二関門通過者は120名から一気に43名迄激減した


落伍者にも救済措置が施されている

品行方正で光る部分のある人材には待機室の外で兵士達に声掛けされ希望者は兵士や城内の仕事を斡旋する事になっている


落ちて逆恨みを吐く様な奴はそのまま退場していくのだ


第二関門通過者達は次に進むのだがその前に会場を移動する告知をする


「名前を呼ばれた者は荷物を持って兵の指示に従い移動する事‼」


兵士はそう宣言して1人目の名前を呼んだのであった

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