294 ファングと愉快な仲間達 part5
日向子達の歓迎会は3日3晩続けられた
ファングファミリーはとてもお祭り好きだった為になかなかお開きとはならなかったのだ
酔い潰れては寝て起きては酔い潰れ…全員が一斉に潰れていたらお開きになったであろうが宴はダラダラと続いていった
1日目で酔い潰れ、起きた日向子は早速空間移動でシルグの下に行ってみる!と宣言をして実行した
…フッッ‼
『なっ⁉何だっ⁉って…あ、主殿かっ?』
突然現れた日向子にシルグは腰を抜かす
『…ん?あれっ?シルグじゃねえか‼』
日向子の後ろで杯を持ってへべれけになっていたファングがシルグを見てビックリしていた
どうやら日向子はファングごと空間移動をしてしまった様だ
『…ファング?』
『久しぶりだなぁ‼兄弟‼』
『おまっ⁉生きておったのか⁉』
シルグはファングに飛び付いて喜ぶ
『うわっぷ⁉俺ぁオスに抱きつかれて喜ぶ趣味はねぇぞ?』
『…バカ者…生きておったのなら連絡の一つもくれれば良いではないか…』
『アハハ、すまんな‼向こうでついハーレム作っちまって忘れてたよ』
シルグとファング、数百年ぶりの再会であった
「…そんな事よりシルちゃん」
『ん?どうした、主殿?』
「…何で空間移動の方法を教えてくれなかったのよ?」
…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
日向子はシルグにまともに怒気を向けている
『…すっかり忘れてた☆』
「オッサンのてへぺろは可愛いくなぁーーーいっ!!!」
ドスッッ‼
『グハッ⁉』
日向子の重量級のボディブローがシルグの横っ腹に突き刺さりシルグは縦に崩れ落ちた
『おっ?何だ何だ、ヒナちゃんのパンチはシルグの体にもダメージ与えちゃうのか?そりゃ怖ぇなぁ…』
ファングは日向子の一撃を見て酔いが覚めてしまった
四竜の中でもシルグの体は物理的に堅い筈なのに一発で沈んで口から泡を吹いている
「ふぅ…これでチャラね⁉」
一体何がチャラなのかは分からないが日向子はスッキリした様だ
「ファングさん」
『はひっ⁉』
「はずみで連れて来ちゃいましたけど丁度良いからウシャ爺とか他の皆さんにも紹介しますね♪」
『…おう』
ファングは日向子には逆らわない、と心に誓った
ともかく偶然ゴルドに連れて来てしまったファングをウシャ爺達に紹介し、様々な薬や工芸品等を手土産に持たせて街並みも堪能させてから再びファングの根城に移動した
『いやぁ~、偶然ついて行っちゃったけど良いのかい?こんなにお土産貰っちゃって』
「勿論ですよ、ファングさんは私の(魔法の)師匠だもん」
『そうか?師匠って言われると何か照れる…な?』
日向子達が再び戻って来て辺りを見回すとソコには飲み過ぎてぶっ倒れている竜達が転がっていた
全員酔い潰れた事で3日3晩続いた歓迎会は漸くお開きを迎えたのであった
ファングをはじめ竜達が酔いから覚めたのはそれから2日後だった
日向子とキメは細胞活性化によって翌日には元気ハツラツとなり湖周辺を観光して回り
更には訓練と称してキメの空間移動でアーチ王やツヴァイ王の下に移動するドッキリを敢行したりして遊んでいた
『かぁ~っ、ヒナちゃんは元気だねぇ~…』
竜なのに二日酔いなのか、ファングは頭を押さえながら寝所から出て来たのはキメが完璧に空間移動をコントロール出来る様になった3日目の昼間だった
「あっ、ファングさんおはよう‼」
ファングが日向子達を見るとヨダレが垂れそうな匂いに理性を失いそうになった
『…何作ってるんだい?』
「えへへ、バーベキューですよ」
『バーベキュー?』
日向子が自慢気にお披露目したのはこの世界にありそうでなかった食事スタイル、バーベキューであった
この世界にやって来た日向子は食事スタイルに物足りなさを感じていた
それは食事を単なる栄養補給の様に考える庶民やマナーを織り交ぜて味覚を楽しむ貴族はいるものの
食事を1つのエンターテイメントとして考える発想が乏しいからであった
確かに食材が潤沢に入手出来る貴族達は様々な調理法が用意され、前世と遜色のない料理も出ては来ていた
だがイベントとして楽しく調理して皆でワイワイ食べる習慣は乏しかったのだ
ソコで日向子が思いついたのがこのバーベキューだった
調味料や機材はキメの練習がてら北半球から南半球迄ありとあらゆる場所で入手し、日向子の前世に近い味を再現する事に成功していた
その行程で日向子は自分の前世は何て恵まれた環境だったのか、と改めて実感していたのだった
ここにある焼き肉のタレ、これすらも此方の世界ではアチコチから少しずつ食材や調味料を入手し、漬け込んだり寝かせたりして漸く近いモノを再現出来た
前世なら欲しい時にスーパーに行ってお金を払えば直ぐに入手出来ていたのだ
そんな思いも込めて開かれたバーベキューパーティーは竜達にも大好評で
その後に日向子が残したレシピによりファングファミリー初のビックビジネスとなったのだがそれはまた別の話である




