287 いよいよ捜索開始‼
日向子達、主に日向子の文字通り「身を削った」情報集めは僅かではあるが情報をもたらした
その情報はどれも山岳地帯に巣くった竜の話であり
普通であれば竜が住み着けば人的被害等が増える筈なのに何も起こらない事から逆に気味悪がられている、という話だった
情報が少なかったのは誰も被害に遇っていない為と誰もその姿を見た事がない事に起因している様だ
「…うーん、これだけだと山岳地帯をしらみ潰しに探すしかないんだけど…」
《いつもの様にナノ細胞を展開して探すのも手かも知れないな》
宿屋の一階にある食堂で地図を見ながら意見交換をしている日向子達に声を掛ける者がいた
「よお‼姉ちゃ…姐さん‼」
聞き覚えのある言葉に日向子が振り向くと…ソコには例のならず者達が並んで立っていた
《…何だ?お前ら…先日の復讐か?》
キメが殺気を放つとならず者達は慌てて手を振った
「ちっ、違う違う‼誤解しないでくれよっ‼」
ならず者達は直ぐ様土下座を始めた
「…何してんの?あんた達…」
日向子が呆れて訊ねるとならず者の1人、一番最初にダウンした男が謝罪した
「姐さん‼先日は酔っていたとは言え失礼の数々…大変失礼致しました‼」
「「したっ‼」」
…ざわざわざわざわ…
ならず者達の大声で食堂にどよめきが起こっている
「ちょっ、ちょっと場所を考えなさいよ‼」
「いえっ‼あっし等は姐さんの力量を見誤って粉掛けるという失礼を犯しました‼どうかこれで勘弁して下さいっ‼」
ならず者達は床にゴリゴリと額を擦り付けて謝っている
「…ねぇちょっと…あの女の人、大の男達に土下座を強要してるわよ…実は悪者なんじゃない?」
「あぁ、あんな強そうな男達が縮こまって土下座してるんだ、前科持ちに違いねぇ…」
そんなヒソヒソ話が聞こえて来て日向子の顔が真っ赤になった
「ちょっ‼あんた達こっちに来なさい‼」
日向子はならず者達の耳を引っ張って食堂から引きずり出した
「いだだっ‼姐さん‼やめてっ‼」
「いぃぃいぃぃい~‼」
「あ、姐さぁーん‼姐さぁーん‼」
屈強そうな男達の悲鳴と共に立ち去る日向子
「もう…あの宿に帰れない‼」
日向子は別の意味で怒っていた
宿屋近くの空き地にならず者達を引き連れてとにかく落ち着かせる
「…で、結局何の用なのよ?あんた達のお陰でさっきの宿屋を引き払うしかなくなっちゃったんだけど?」
こめかみに怒りマークを貼り付けた日向子がイライラしながらならず者達に問いかける
《返答次第ではただでは済まないぞ?》
キメは日向子の守護者だ。
邪魔者は排除するのに躊躇いはない
「あっ‼ちょっ⁉ちょっと待って下せぇ‼あっし等は姐さんのお役に立てれば…と思って参上したんでさ‼」
「…役に?…早速迷惑掛けられたけど?」
…ポキポキッ☆
「あ、姐さん‼指を鳴らさないで下さいっ‼」
日向子の怒りの矛先を何とか躱そうとならず者達は自己紹介を始めた
「お、俺はロンガ。こっちがコンゴでアイツがマガン、俺達は山で木を切って生活してるんでさ‼」
「…で?」
日向子は冷めた目でロンガ達を見つめる
「や、やだなぁ~…「で?」じゃないっすよ‼俺達は山の木こりですぜ?」
「…あぁ‼山‼山ね?」
漸く我が意を得たり、と言った顔でふんぞり返るロンガ
「…で?」
ズルッ‼
ロンガ達は新○劇の様に見事にコケた
「あ、姐さぁーん…」
「冗談よ。じゃあ山岳地帯には多少明るいって事よね?」
「っ‼そうですそうです‼それが言いたかったんでさぁ‼」
「その辺詳しく聞かせて?」
「…へいっ!」
ロンガ達は樹々として日向子に情報を伝えるのであった
。。。
「へぇ~、その竜が来てから木こりの仕事が激減しちゃったのか」
「そうなんです‼あの野郎、俺達が木を切ろうとすると邪魔ばかりしくさって…お陰で俺達は仕事にあぶれ…酒場でくだを巻くしか…」
ロンガの情報は情報というより愚痴だった
要は伐採作業をすると竜に邪魔をされて仕事にならないらしい
「…ねぇ、その竜ってさ、青い竜じゃない?」
「…へっ?…普通の竜ですぜ?」
…ハズレだ。思いっきりスカだ…
「あ、そうなんだ。情報ありがと‼じゃあ頑張ってね‼」
ロンガ達にお礼を言って颯爽と立ち去ろうとする日向子
「ちょちょっ‼ちょ待ってぇ‼」
「俺達何でも致しやすからぁ⁉」
「どうかその竜を退治して下さいよぉ~‼」
大の男3人がうら若き乙女?にしがみついて懇願する…なかなかシュールな光景である
結局ロンガ達の叫び声が近隣に届いて何事か?と出て来る住民達
そしてその注目から逃れる為に泣く泣くロンガ達の願いを叶える事になってしまったのであった
ー山岳地帯ー
「ねぇ、まだなの?」
「へい、もう少しでさっ‼」
翌日日向子達はロンガの道案内で山岳地帯に住み着いた竜を退治しに出掛けて来ていた
周りの木々を見ると確かに伐採途中であからさまに中断された跡が残っていた
ロンガ達はどんどんと林の中へ誘って行ったのであった




