285 未婚の介添人
日向子は今ツヴァイ王に詰め寄られている
「…はぁ~…やっぱりダメだっ。。。えっ?介添人って??」
日向子は半ば諦めかけていた所に逆の言葉が飛び出したので混乱していた
「ゴスピア国王として式は挙げねばならぬ、その際には是非日向子殿に介添人を頼みたいのだ‼」
「えっ、でも私…未婚ですよ?」
「だが余とヒルダ殿の橋渡しをしてくれた恩人だ」
「…ドレスとか持ってないですよ?」
「宮廷の仕立て屋に頼んである」
「…マナーとか存じませんけど…」
「堅苦しい事は余も嫌いだ」
「熟女とか無理ですよ?」
「ただ式典に出て貰えるだけで良いのだ」
「…食べ物出て来たらがっつきますけど?」
「わはは、日向子殿らしい‼」
「。。。」
どうやら口ではツヴァイ王に敵わない様だ、何を言っても即座に返り討ちにあってしまうのだ
「…日向子さん、私からもお願いします。私、正直此処に来る迄は何かと理由をつけてお断りしようと思っていました。
ですがツヴァイ王の熱心なお姿と日向子さんの実直な対応がとても心地よくて…」
それで結婚を決意しました♪と言われても日向子自身何も努力もサポートもしていない
見つけたから事情を話して半ば強引に連れて来ただけ。である
だがヒルダの話ではそれが切欠になったのだ、と言われた
ゴスピア国に来る迄にもし日数が掛かっていたら…色々思い悩んで結局は固辞していただろう
移動中、考える時間があったらやはり色々考えて断っていただろう
いきなり事情を捲し立てられ空に拐われたかと思ったら一瞬で気を失って気付けばツヴァイ王が目の前に居た。
だから思い悩む暇もなくツヴァイ王の熱意を素直に受け取る事が出来たのだ、と言われた
二人にそこまで言われたら日向子の逃げ道は無い
「…無作法者で宜しければ…」
こうして日向子は自分が結婚してもいないのに二人の介添人(仲人)をやる事になったのであった
しかし一国の国王が挙式するとなると色々手間や段取りに日数が掛かる
実際最短でも一ヶ月半~三ヶ月後だそうだ
これは招待客の選定や移動、関係諸国への通達と本家スラストア家の当主、アイン王に報告と了承を得なくては事が進まないからだそうだ
大抵の国王はその期間中に我慢が出来ず式当日には妃のお腹がうっすら膨らんでいた、とかは日常茶飯事だそうだが
ヒルダさんは竜族だしまぁそれほどポンポン出来ないだろう、と言う事で既に盛りのついたサルの様にフンガフンガしているツヴァイ王
日向子はそんな発情期のツヴァイ王に時折何処かのお城に顔を出すから伝令を預けておいてくれれば馳せ参じる、と告げ
ヒルダには本来聞きたかった事を訊ねる
「あの、知ってたらで良いんですけど…ヒルダさんの身の回りで青竜、疾風のファングさんって方はいらっしゃいませんでしたか?」
「青い竜…ですか?」
「えぇ、青竜じゃなくても構いません。ここ最近新参の見慣れないヤツを見かけた。とかこの人に聞けば何か分かるかも?と言った事でも構いません」
ヒルダは目を瞑って深く思い出そうとしていた
「…そう言えば…前夫が亡くなる少し前にボルピア国の山岳地帯に騒がしい竜が住み着いて迷惑してる、とか言う噂は聞いた事がありますが…それが日向子さんの探している竜かどうか、今も住んでいるのかも分かりません…
お役に立てずすいません…」
ヒルダは日向子にペコペコと頭を下げる
「い、いえいえ‼僅かな手掛かりでも頂けたのはかなりの進歩です‼ありがと‼」
日向子にとっては僅かな情報でも貴重だ。何せ相手は竜なのだから
謝るヒルダを宥める為にヒルダの手を取っていた日向子はついでにちょっと大声では聞けない質問をしてみた
(ヒルダさんって鱗とか生えていないんですか?)
日向子の目から見てヒルダはほぼ人と変わりない容姿で竜の末裔と言われてもピンと来ない
もしかして脱いだら凄い‼とかあったらツヴァイ王はどう思うんだろう…とちょっと気になっていたのだ
「あぁ、私は確かに竜の血は引いてますけど…その中でも特に血の薄いリザードマンですし…その中でも更に血が薄いんで…ほら」
ヒルダはそう言うとペロッと腕捲りをした
…肘の付近にうっすら鱗の痕が…
「こんな風に手足に退化した鱗の模様があるのと瞳孔が爬虫類っぽいだけなんですよ」
「えー、そうなんですか?」
因みに他にも種族がいるのか聞いてみるとドラゴネットやドラゴニュート等を挙げたが継いだ血の濃さによって容姿に違いが出るらしい
「まぁ時々先祖返りして思いっきりドラゴンな格好の子も生まれますけどね」
その辺はそれほど気にしていない様だった
聞きたかった情報も聞けた所で日向子は二人に挨拶をしてキメの待つボルピア国に戻る事にした
山岳地帯にもしかするとファングさんがいるかも知れない
いたら早々に依頼達成で後は自分探しの旅をのんびりしながら南半球の世界を観光して帰れば始祖の依頼も自ずと完了するのだ
「じゃあまた、早目に連絡して下さいねー‼」
翼を羽ばたかせ大空に舞い上がる日向子をゴスピアの人々は驚きながら見送っていたのであった




