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ゾンビーナ!  作者: とれさん
282/378

282 仕切り直し


デスピア国の騒動で一時頓挫しかけたツヴァイ王からの依頼、

それがアーチ新王の協力で逆に加速し始めていた


アーチ王は先ず混乱した国内を正常化する為に次々と支援策を打ち出した


救援物資と人材を惜しみなく派遣してくれたゴスピア国ツヴァイ王の協力の下、国内安定迄の援助を要請した


外壁の外で跋扈していた魔物達は日向子とキメがたった半日で殲滅してしまった


先王の愚行により士気の低下したデスピア軍はアーチ王の命により再編成され

有能だが身分の低い士官の高位任命により今まで身分の差によって虐げられていた有能な兵士達の更なる忠誠と信頼をゲットした


士気が向上した兵達は率先して国内外の沈静化と国民の生活を取り戻す動きに従事した


そのお陰で当初の予定日より遥かに早い速度でアーチ王新体制が整った


アーチ王は日向子とキメにデスピア特使として国内での行動に特権を与え

その地位のお陰でツヴァイ王の依頼である竜族の目撃情報が一気に集まったのである


この情報を元に日向子達はある確信と精度の高い推測を手に入れた


デスピア国で目撃されていた竜族はツヴァイ王が求めていた竜族とは違っていた

だがその竜族もツヴァイ王が探していた竜族の女を探していたらしい


その竜族はデスピア国民の証言によりその所在に気付き半年前に北方の地、ボルピア国に旅立ったとの話である


半年前という微妙な時間と別の竜族の存在を考慮してアーチ王は日向子達にゴスピア、デスピア両国の権限の下に特使待遇をスラストア共和国アイン王に陳情、

アイン王はその陳情を受け入れ二人をスラストア共和国公認の特使として特別権限を与えたのであった


言ってみれば南半球天下後免の権限を与えられた日向子達はスラストア・ゴスピア・デスピア三国の紋章が入った無敵カードを手に

北の大地に広がるボルピア国へと旅立って行った


スピード勝負と考えた日向子はついでとばかりに事前に三国の王に頼んで連名の書簡をボルピア国王に向けて送って貰い


日向子達がボルピア国上空から飛来した際にはその姿を認めた国民や兵士達から歓迎を受けるという珍事もオマケについた


ーボルピア国内の宿屋ー


「…貴方がヒルダさんね?」


日向子は宿屋の一階にある食堂で1人の女性に名を訊ねていた


日向子達とテーブルを挟んで座っている女性、彼女こそがツヴァイ王が探していた

若き日のツヴァイ王を救ってくれた竜族の女、その人であった


「…はい。そうですが…私が何かしたのでしょうか?」


いきなり手を引かれ食堂に座らされたヒルダは日向子とキメに怯えた表情で質問をする


「ううん、ヒルダさんを咎める為に見つけていた訳じゃないの。だから安心して話を聞いて貰えるかしら?」


日向子は店主に食事を頼むとヒルダに水を勧めた


「ヒルダさん、少し確認したい事があるんだけど良い?」


「…はい」


「ヒルダさんは20年前位にスラストアにある崖で人間の男の子を助けなかった?」


「えっ?……あぁ、はい。確かに身動きが取れない程の怪我をした男の人を助けた事がありますけど…それが一体どうしたのですか?」


「はぁ~…長いと言えば長かった、短いと言えば短かったわ…」


「は?」


「あっ、こっちの事よ。でね?私達はその男の人から貴方を探してくれって頼まれて探し回っていたの」


「…はぁ」


「もう1つ聞いても良いかしら?あ、これ。冷めない内に食べて」


日向子は配膳された料理をヒルダに勧める


「あ、じゃあ…遠慮なく頂きます」


「召し上がれ。…うーん、美味しい‼これ…もしかしたら醤油かしら?モグモグ…やっぱり醤油よねぇ?ご主人‼ご主人ー‼この調味料少し分けて貰えるかしら?

えっ?こんなに⁉じゃあこれ。お礼に…あっ‼いえいえ、そんな…ほんの心付けですのでお気になさらずに‼」


「…あの~…?」


「…はっ⁉そ、そうだった‼南半球でまさか醤油に巡り会えた嬉しさについ本題を忘れて…ごめんなさい…」


《…主はどうやら興奮している様だ、代わりに俺が説明しても良いか?》


「あ、はい。」


《実はヒルダ殿が助けた青年はツヴァイ殿と言って今ゴスピア国の王となられている

ツヴァイ王は若き日にヒルダ殿に一目惚れをして今も未だ伴侶も持たず貴方を探していたのだ》


「まぁ…そんな事が…」


《で、恐らく主が先程訊ねたかったのはヒルダ殿が今想いを寄せる御仁がいるか?又は既に伴侶がいるか?を訊ねたかったのだと思う》


ヒルダはキメの説明に少し躊躇ってこう答えた


「私には今、想いを寄せる人も夫もおりません。ですが…」


《?》


「私には以前夫がおりました。夫とは50年程前に死に別れてしまいそれ以来独り身ではありますが…申し訳ありませんが人族の、しかも王様に好意を寄せられても…釣り合う資格もございません…」


《…成る程、そうですか…》


店主とウキウキトークをする日向子の横でキメは深刻な面持ちになっていたのだった

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