表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾンビーナ!  作者: とれさん
280/378

280 救世主伝説の誕生 part4


デスピア国国王暗殺事件に於いて幽閉されている第7皇子の一派が主犯と予測したアーチはゴスピア国ツヴァイ王に全てを話し覚悟を決めた


アーチはそのまま日向子に頼んで文字通り一足飛びでデスピア国に引き返し国王に面会を求めたのであった


ーデスピア城謁見の間ー


「…おぉ‼アーチ、アーチではないか!そちが我が身を救ってくれたのか?流石我が弟!我はそなたの様な弟を持って果報者じゃ!」


暗殺される恐怖から解放されたデスピア国王はその安堵からかやけに饒舌にアーチを褒め称えた


「…お久しぶりです、兄上」


一時は優秀な弟を疎ましく思い遠ざけ、暗殺しようかとも企んだ


その弟は権勢争いに嫌気が差し出奔同然で叔父の国に身を寄せた事で憎しみの対象から外れた


デスピア国王の座は稚拙なクーデターを起こし自滅した兄のお陰で苦労せず転がり込んだ


その栄華に溺れたデスピア国王は一介の兵に身を落とした弟の事など今の今まですっかり失念していたのである


その愚弟が今自分の命を救いあまつさえ首謀者を糾弾する為の証拠を生け捕りにして見せた


(ふふっ、我は何と幸運な男か。

何もせずとも幸運が舞い込んで更に高見に誘ってくれる…我は運に愛された男なのだな…)


デスピア国王は己の愚行で自身の末路が尽きている事にも気付かず満面の笑みをたたえ

アーチの功績を盛大に讃えていたのである


「衛兵!この汚らわしい呪術者を牢獄に放り込み必ず首謀者を自白させるのだ!」


恐怖の去った国王には今自身の周りで何が起こっているのかがまるで見えていなかった


その切欠は他でもない、命の恩人であるアーチから発せられた


「…兄上、デスピア国王として王とは何が必要だと思われますか?」


やけに畏まった言い回しであるな…考えの浅い国王が感じたのはまるでお門違いの感情だった


「ふむ…王とは民を守り支える事で成る…王に必要なのは王を支える民であるな」


国王は昔学者に教えられたままの言葉をアーチに答える


「…流石兄上、いや、デスピア国王陛下。お見事な回答です」


やけに回りくどい讃え方だが褒められるのは嬉しい、国王は笑顔でその賛辞を受けていた


アーチの顔が苦しみに歪んだのはその直後だった


「兄上…その王を支える国民を蔑ろにして城に立て籠り民の悲鳴に目を瞑ったのは何故なのですか?」


アーチの突然の非難に国王は言葉に詰まる


「アーチ殿‼たとえ国王の実弟と言えどその問いは余りに無礼であろうっ!」


側にいた側近がアーチの問いに即座に反応した


「ちょっと貴方は黙ってなさい‼」


アーチの脇に控えていた日向子は恫喝を始めた側近にバンパイアアイを放って沈黙させた


今必要なのはデスピア国国王としての矜持であり国民を思う王としての答えなのだ


「…弟よ…貴様は一体何を求めておるのだ?名誉か?…金か?」


努力もせずその地位に就いた国王にはアーチの問いに答える術は持ち合わせていなかった


慌てふためく国王を真正面から見つめていたアーチは答えがないと判断するとスックと立ち上がった


「なっ⁉何の真似だ⁉」


国王は咄嗟にアーチが謀反を起こすと錯覚し、転げる様に玉座から飛び退いて後ろに控えていた衛兵の後ろに逃げ込んだ


「ききき、貴様っ‼デ、デスピア国国王にその様な不敬を働いてただで済むと思っているのかっ‼」


先程手放しで褒め称えた弟を今度は謀反人扱いをする国王


だがアーチは立ち上がっただけで何もしない、する価値もないのだ


「そこまでだ‼」


緊張した謁見の間に第三者の大声が響き渡る


「!?」


「…お、叔父上!?」


デスピア国王の間抜けな声が響く中、ゴスピア国ツヴァイ王が颯爽と登場したのだ


「こ、これはゴスピア王。急にお越しになるとは何用ですかな?」


デスピア国王は急に体裁を整え一国の国王としての言葉をツヴァイ王に言い放った


「うむ。デスピアの民が苦しんでいると聞いて救援物資と共に参上したのだ」


魔術が発達した南半球、転移魔法は実在せずとも飛行魔術は宮廷魔導師には使える


残念ながらゴスピア国の宮廷魔導師達総出で飛行してもアーチを抱えた日向子の飛行速度に全く太刀打ちが出来ず登場が遅くなったのだ


現在宮廷下級魔導師達が総力を挙げて救援物資を運んでいる

飛行魔術ではなく馬車馬に強化魔法を駆使しての高速陸路移動ではあるが一両日後には到着するであろう


突然他国の王が登場した事で動揺を隠せないデスピア国王


「そ、それは有難い申し出なれど…自国の窮地は自国内で解決致すのでどうかお引き取…」


「愚か者がっ!」


デスピア国王が救援を固辞しようと言葉を紡ぐ中、食い気味に一喝するツヴァイ王


これから始まるのはデスピア国王にとって破滅の序曲であった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ