28 セクシーダイナマイッ‼
予備戦は泥仕合の様相ではあったが着々と進んでいる
「では最終第5組、会場へ!」
日向子はコートを着たままおずおずと会場に足を踏み入れる
「へへっ、お嬢ちゃんは俺がいたぶりながら倒してやるぜぇ~‼」
隣にいた目付きの厭らしい男が日向子を舐める様に見ながら囁く
「あ、そう。じゃあ始まったら真っ先に倒すわ」
日向子は淡々と答える
「ギャハハハ‼冗談が上手いぜ‼大会が終わったら慰みものにしてやるからよ、有り難く思えよっ!」
この男、ザコキャラの王道を地でいっている
「では始めっ!」
「頂きまーす!」
男は日向子に飛び掛かる
「え?キモッ‼」
ーバキャッ‼…ドーン!ー
日向子に飛び掛かった男は一瞬で場外の壁に叩きつけられた
「「「「「!?」」」」」
男が飛んだと思われる地点に選手も観客も釘付けになる
そこにいたのは…目深にフードを被るロングコートを着た女性(日向子)だった
「や、やるじゃねぇか⁉」
「次は俺が相手だ!」
鎧を着た男が日向子に斬りかかる
ーゴシャッ‼ダダン‼ー
鎧の男もさっきのザコと同様爆ぜる様に吹っ飛んだかと思うと場外の壁に激突して失神した
「よくもやってくれたな‼」
どうやら先程の鎧の仲間らしい三人が日向子を取り囲む
「死ねっ‼」「テヤァッ‼」
ーガガッ!ー
三人は日向子に顎を撃ち抜かれその場で膝から崩れ落ちた
「ひ、ひいぃ‼ば、化け物だぁ‼」
「何よぅ、化け物って…酷くない?」
日向子はとある理由で只でさえ機嫌が悪いのに化け物扱いされて更にお冠だ
「い、一斉にだ‼一斉にかかれば必ず‼」
日向子の周りにいた選手達は一斉攻撃を仕掛けた
「うりゃあ‼」「とうっ‼」
ーバギッ‼ドゴッ‼ズガンッ‼ー
勝負は一瞬で決した
先程と同じ様に日向子を中心に男共が吹っ飛び四方八方に散らばる
日向子は涼しい顔で立っている
「あ、アイツはヤバい‼他を倒すぞ‼」
それを見ていた選手達は日向子を避けて遠巻きで戦闘を開始する
「それまで!」
こうして第5組は他の組より少ない選手が勝ち残ったのだった
「フッ…あのコート姿の女、なかなかやるではないか」
「まぁ俺の敵じゃないけどな」
選手用観覧席からはそんな声がちらほら聞こえていた
「第1回戦はこれにて終了する。昼食を挟んで第2回戦を行うのでそれまでは選手も観客も休憩してくれ‼」
進行役がそう告げると観客も選手も気が弛んだのかざわざわと煩くなった
「ゴメリさーん、無事2回戦に残れたよー」
「ヒナちゃん良かっただよ」
「ゴメリさんも強かったわ。お互い頑張って勝ち抜いて宣伝しましょ‼」
「了解しただ」
二人は昼食を食べながらお互いの健闘を祈った
ー午後ー
「ではこれより第2回戦を行う。指名された選手は会場に出ませい!」
進行役が今後の流れを説明する。これからは一対一の戦闘になる様だ
「ではジラス、ガガ、ハハン、ナント。前に!」
「あれっ?一対一じゃないの?」
「今年は勝ち抜けた選手が多くて第2回戦は四つ巴戦に変更になったそうだべ」
日向子が驚いているとゴメリがそう説明してくれた
「えー?じゃあまだコート脱げないなぁ…」
「?」
ゴメリは首を傾げるが日向子が慌てて誤魔化しだした
「結局何人が勝ち抜いたの?」
「えっと…5組戦って60人程だそうだべ」
「じゃあざっと15組か…なら慌てて会場に来るんじゃなかったな…」
「あはは、食べたばかりじゃ動きが鈍くなるだに丁度良かったかも知れないだよ」
「うーん、露天で売ってた冷やし果実が食べたかったなぁ~」
日向子はまだ食べ足りなそうだった
ードガッ‼キキン、ザシュッ‼ー
「勝者、ジラス!」
審判がジラスの手を持って高く掲げる
「次は…ピピン、日向子、イッシュ、ヤンマ!前に!」
「あ、呼ばれたから行ってくるね‼」
日向子は散歩にでも出掛けるような軽さでゴメリに告げた
ードドドンッ‼ゴチャッ‼ー
「しょ、勝者日向子‼」
ーシーン。。。ー
…ワァァァァ!
日向子の速さに面食らった観客は声を忘れかけたがひと間おいて今まで以上の歓声をあげた
「じゃあ私、冷やし果実食べてくるね!」
「…もしかしてそれを食べたくて急いだんじゃ…?」
ゴメリの呆れ顔を他所に日向子は闘技場を出た
こうして無事15組の選抜が終わり3回戦は明日に持ち越される事になった
ー翌日ー
「では第3回戦第1試合を開始する!アドン、日向子、前へ!」
ワァァァァッ‼
昨日の一戦で日向子の人気は急上昇していた
(コート姿の謎の女性)
謎めいた小柄の女性が並み居る選手を一瞬で蹴散らす様は観客の注目を集めていたのだ
「では両者共に正々堂々と戦って勝ち残る様に。…始めっ!」
(…とうとうこれを脱ぐ時が来たわ!とうっ!)
日向子は肩口に手をやると一気にコートを脱ぎ去った
。。。
うぉぉぉぉぉぉぉ~~~っっっ!
一瞬の静寂の後、地鳴りがする程の歓声が会場を包んだ
日向子の秘密兵器、それは「ビキニアーマー」だったのだ
まぁそんな御大層なモノを用意した訳でもなく普段装着している防具の下をビキニに変えただけなのだが
これが男性達の心を鷲掴みにしたのだ
日向子のメリハリのある体は最小限の布で隠されている
「ん?神獣…運輸?」
「あんな所に…」
そう、日向子の胸とお尻の部分にはちゃんと社名が書かれていたのだ
これならば否が応にも見ざるを得ない
日向子、捨て身のコマーシャルであった
「は、恥ずかしいから急いで倒そう!」
「何をほざくかっ‼貴様の様な小娘に我がコボルイッ…ゴバァッ⁉」
アドンの重装甲は日向子の一撃でひしゃげ宙を舞った後に地面に叩き付けられた
「し、勝者日向子!」
うぉぉぉぉぉぉぉっ‼
会場は日向子の姿と一瞬の攻防に興奮のるつぼと化していた




