273 異常な魔物遭遇率
ドンッ‼ゴギャッ‼ザシュッ‼
ギィエェェッ‼ギャッ‼
「キメちゃん横‼」
ゴルアッ‼…ギッッ⁉
ここはデスピア国迄あと少しという付近の平原
王都に近付く程に何故か魔物の襲撃が増え日向子達は結構忙しく討伐を繰り返している
「アーチさん‼デスピアは本当にもう少しなんですよね?」
「ハァハァ、そうだ‼…だが何でこんな近隣に魔物が発生しているのだ?」
どうやらデスピアに近いのは間違いないが魔物の出現率がイレギュラーらしい
度重なる魔物の襲撃で疲労困憊なアーチとチャントを馬車の護衛に回し日向子とキメは歩哨の様に馬車の前を歩いて警戒しながら進んでいた
…ピシュ‼…………ッ⁉
千里眼を発現し遠隔狙撃の様に投擲で魔物を倒していく日向子
「…もう滅茶苦茶だな…」
アーチ達は日向子を見て呆れ果てている
《…主、右前方だ》
「はいよっ‼」
ピシュ‼…………ゴギャッ‼
本来なら倒した魔物の遺体は処理しなくてはならないがその位はデスピアの兵士なり冒険者なりが処理してくれるだろう
半径2キロ程の魔物を殲滅した所で馬車を停め食事の準備に取り掛かる
優秀な美人秘書、チャントは料理も完璧にこなす
キメに倒した魔物の肉を拾って来て貰うと馬車から調理道具を降ろしチャチャッと数品料理を作ってテーブルに並べていく
「…チャントさんは女子力高いのね」
日向子が手際の良さに感心しているとチャントは当然です、と言った顔で説明を始めた
「元々私は隊長…アーチ様の侍従兵でしたので身の回りのお世話や皇子の補佐をこなせる様に仕込まれているんです」
成る程。皇子の世話だけでなく護衛も出来る万能な人材…とんでもなく優秀な人だったのね
「…時には夜伽を求められる事もありますので…その訓練もしてはいるのですが…」
「えっっっ⁉」
日向子はアーチとチャントを5度見位してアーチに侮蔑の視線を向ける
「ん?…あっ‼誤解だ誤解!俺はチャントに夜伽の相手をさせた事など一度もないぞ⁉」
侮蔑から殺気にまで進化しつつある日向子の気配にアーチは焦って否定する
「…そうなんです…血反吐を吐く思いで習得したスキルで唯一夜伽だけが需要がなくて…私に魅力がないのでは?と気掛かりでならないのです…」
…あー、そりゃチャントさんの「私的感情」が加味された愚痴な訳か。
でもまぁチャントさんは美人だしナイスバディだしムラムラしたらお呼びが掛かってもおかしくはないとは思うけど…
侮蔑→殺意→疑惑の視線に移行した気配をアーチは瞬時に悟って苦笑いする
「チャントが部下の内は手出しはしねぇさ」
そっか、こりゃ犬も食わないってヤツだ。
日向子は心の中でご馳走様‼と吐き捨てて肉を頬張った
食事も終え食休みをしているとまた魔物の気配が増えていた
「ねぇアーチさん?街が近いのにこんなに魔物がいるっておかしくない?こんなんじゃ外にもおちおち出られないわよね?」
日向子は拾った石を投擲しながらアーチに訊ねた
「そうだな…これでは商人や旅人もデスピアに着く前に食われてしまう…デスピア兵達は一体何をやっているのだ?」
此処からデスピア迄は徒歩で半日も掛かるまい、事実街と城を囲む高い城壁が結構すぐそこに見えている
まぁ他国の事情をワイワイ言っても仕方がない、日向子達は後片付けを済ませて再びデスピアに向けて出発した
昼過ぎに再出発し、夕暮れ前には城壁の前に到着する
道の先には堅牢な入場門がそびえ外敵の侵入を強固に阻んでいた
「えっと…もう閉門しちゃったのかしら?詰所にも誰もいない様だけど…」
入場門の側には検閲をする兵士達が待機する詰所があったが無人だった
《時間で閉門したとしても無用心だな、敵の侵入があり得ないとでも思っているのか?》
キメもアーチ達も門番が誰1人として居ない状況に不審を募らせていた
「…とにかくこのままでは入る事も出来ないわね…一旦戻って野宿出来る所を探して明日開門したら改めて来ましょ」
日向子の提案に全員が賛同し、一旦来た道を戻って野宿する事にした
相変わらず魔物の襲撃が続くが日向子とキメにとってはそれほど大変な作業ではない
チャントは炊事、アーチはテントの設営等に従事して貰い二人はわらわらと涌いて来る魔物を適当に遊撃していった
流石に夜通しで魔物退治していたらしんどいので後半はキメが魔改造されたデザインインセクト、極悪大スズメバチを生み出し警戒に当たらせた
サーチ&デストロイを指示されキメと日向子のアイデアで外骨格等を強化された極悪大スズメバチは予想を遥かに上回る狂暴さで
日向子達が翌朝起きて見た光景は大スズメバチに倒された魔物達がゴロゴロと転がってさながら地獄絵図と化した平原だった
城壁近くに魔物の死骸を放置したままではどんな責めを負わされるか分かったモノではないので
チャントとアーチにテントを護らせて日向子とキメは遺体回収に奔走した
結局思ったより倒されていた魔物が多く朝イチで入場門に行けずに昼近く迄掛かってしまいテンションが駄々下がりのまま入場門へと向かったのであった




