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ゾンビーナ!  作者: とれさん
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272 アーチの身の上話


日向子一行が先ず最初に向かったのは大陸東にあるデスピア国だ


中央スラストアに次ぐ人口と領土を保有するこの国は魔導産業で隆盛を極めている


魔導産業とは軍事産業分野の魔導具ではなく主に生活向上に必要な魔導具を製造する分野を差す


前世の認識に当て嵌めるなら家電メーカー工場がある街、が最も近いだろう


この国の街並みは一風変わっていて通常王城は街の中心か最奥にあるが此処では外郭に築かれている


中心には魔導具工場や研究所が建ち並びソレを取り囲む様に国民の住居がドーナツ状に配置されている


この国はあくまでも産業ありきの国造りなのだ


さて、一行が先ずデスピアに向かったのは理由がある

ここ最近の竜族の目撃談は此処デスピアに集中していたのだ


「…とここ数年竜族とおぼしき者がデスピア領内に侵入し何かを探している様です」


チャントは各地に潜伏している諜報員達からの情報を統括する役割を担っていてまさに出来る秘書と言った感じだ


「じゃあ先ずはデスピアに行って目撃情報集めかな?こういう時は何処で聞いた方が早い?」


日向子達は言っても南半球の常識が分からない

郷に入っては郷に従え、主導権はアーチ達に譲った方が円滑に事を進められそうだ


「…アーチさん?」


「ん?おぉ、何か言ったか?」


「もう‼今情報収集のセオリーを聞いていたんですよ?聞いてなかったんですか?」


「…すまんすまん、ちょっと考え事をしていた」


「隊長、しっかりして下さい‼」


デスピアに向かう道中、アーチは浮かない顔でボンヤリ前を見ている事が多くなっていた


《アーチ殿、何か憂い事かあるのか?》


キメは日向子が聞きたい事を察して訊ねた


「ははっ…つまらん事ですよ。デスピアの王様は俺の3つ上の兄でね、昔から反りが合わなかったんですよ…」


3つ?3つしか違わないのに国王と一介の兵士長って…と思ったらどうやら3つは3つでも生まれた順番らしい


先程アーチは14番目の皇子と言っていたがデスピア国王は11番目の皇子だったらしい


番手だけでもそんな下位の皇子が何故地方とは言え国王になれたか?と言うと

皇子は生まれた瞬間から周囲の私利私欲に走る貴族達に担がれ権謀術数、暗殺なんて茶飯事の世界に投げ込まれるらしい


現に今アーチの兄弟で生存しているのは長男3男7男11男14男19男の6人で7男と19男はクーデターに失敗して死ぬ迄幽閉中だから実質生きていると言えるのは4人しかいないそうだ


と言うか余りの番手に一体兄弟姉妹は何人いるのか?と訊ねたら記録で認められているだけで21男16女だそうだ


これは傍流であるアーチの家系での事で本家ではもっと数が増えるらしい


皇女は貴族との姻戚道具に、皇子はいつ誰かが暗殺されても良い様にスペア扱いなのだそうだ


「俺はそんな馬鹿馬鹿しい仕組みが嫌で叔父上に泣きついて権勢争いから外れたのだが…以前叔父上が俺を匿ったと責められた事があってな、それで更に辺境のトルル村で兵士長をする事にしたのさ」


アーチは傍流とは言え現在実質継承権第4位の皇子、国か領地を任されてもおかしくない位置だ


「て言うか本家の皇子達で周り固めちゃえばアーチさんが巻き込まれる事もないんじゃない?」


と日向子が訊ねると

どうやら数十年前にスラストア国王の座を本家皇子数名が結託して脅かした事があり

その際当時のスラストア国王は全ての皇子(実子)を粛清、傍流の第1皇子を養子に迎えて戴冠させた事件があったそうだ


「それ以降は本家と傍流の協議によりスラストア国王は選出される決まりと子種の制限が掛かったのさ」


現在は本家フォン、分家のヴァンとアルスの合議でスラストア国王が決定されるらしい


「因みに粛清された皇子の数って…」


「あぁ、史書に載っているだけで皇子が30余名、皇女が8名とあったな」


大帝国にありがちな後宮、つまりハーレムにより跡継ぎが量産され策略や野望によって暗殺、粛清される


そんな泥沼なら逆に戦争で戦死した方が思い残しがなさそうではある


「で、話を戻すとデスピア国王は俺がいつか自分の立場を脅かすんじゃないか?と邪推していて…」


何ともえづきそうな話であった


日向子は一時的解決案として道中木切れを拾って器用に仮面を作ってアーチに手渡した


オペラ○の怪人タイプの仮面だが素性は隠せるだろう


「日向子殿は器用なんだな」


アーチは日向子の手慣れた所作と渡された仮面の出来に感心している


「えへへ、昔から工作は得意だったのよね。何ならもう1つ作ってチャントさんにも渡しておきましょうか?チャントさんだって顔が割れてる可能性はあるんでしょ?」


「えぇ、隊長の側近として城勤めしていましたから…多少は」


それを聞くや否や日向子は余った木切れでササッと仮面を作ってしまった


今度のデザインは仮面舞踏会に使われるタイプの飾り気無しバージョンだった


「…凄い…ありがとうございます」


「さ、これで準備万端ね‼いざデスピアへ!」


数時間後仮面を装置したアーチとチャント、日向子の両手がかぶれて腫れ上がり木切れが漆系の植物だと判明し作り直すハプニングはあったが後少しでデスピア国という所迄移動を完了したのであった

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