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ゾンビーナ!  作者: とれさん
271/378

271 依頼の報酬


国王と日向子は盗聴不可の部屋で依頼の件を詳しく語り合っている


途中で日向子はキメも部屋に呼び込み事情を説明するとズッコケられたがまぁそうなるのは当然だろう


《王族は権謀術数渦巻く場所だと思ったが実は純粋だったのだな?》


「あはは…まぁ国王が特殊なんでしょうね、普通は権力闘争に巻き込まれたり仕掛けたりするレベルのお家柄でしょうから」


「む、よくぞ察してくれた‼余は幼き頃から取り巻きの陰謀に担ぎ出されて辟易としてな

それに嫌気が差してこの国の国王に転封して貰える様に父君、つまり前スラストア国王に頼んだのだ」


ツヴァイ国王は配下がいない場所では非常にフランクな人物だと知って日向子は好感を持った


「ではそろそろこの部屋を出ましょうか、王様の配下の方々に要らぬ詮索をされても困りますので」


「うむ、では宜しく頼む。報酬は本当にそんなモノで良いのか?」


「はい。それが良いんです」


「分かった、ではその様に手配しておこう」


国王と日向子達は再び謁見の間に戻るとアーチや親衛隊、従者に至る迄国王が席を外した時のままの姿勢で待機していた


玉座に腰を落とすと国王は配下に申し付ける


「余の依頼を受けた日向子にゴスピア国の紋章を授与する。この紋章に依頼遂行の為に全権を与え仮初めの手形となる様に関係諸国に伝えよ」


「ははっ‼」


小難しい言い回しだが要は黄門様の印籠の様な権限を紋章に持たせ日向子に貸与する、と言う事らしい


ツヴァイ国王のお墨付きでフリーパスが発行されたのだ


アーチも親衛隊も破格の待遇に驚きを隠せなかったが恐らく国王はそれほど重要な任務を負わせたのだろう、と勝手に理解した


今依頼内容をぶっちゃけたら新喜劇並みのズッコケが見られる事請け合いだ


「では今から依頼に取り掛からせて頂きますね」


日向子とキメは謁見の間のバルコニーに向かうと翼を広げて飛び立ったのである


「…国王、日向子殿に言わなくて良かったのですか?」


姿が見えなくなる迄見送ったアーチが国王に問いかける


「…む、ぬかったな…アーチよ、今よりトルル村兵士長の座を一時解く。急ぎ日向子を追い(くだん)の説明をせよ」


「…はっ‼」


アーチは国王に一礼すると急いで城の厩舎に向かう


「全く…叔父上は肝心な事を話し忘れるとはな」


ゴスピア一の駿馬を借り受け急いで日向子達の後を追った


ーこの世界(南半球)では人は空を飛ばないー


当たり前だが日向子達にとっては当たり前の事

飛んだらアカン、を伝える為だけにアーチは駿馬を駈るのであった


ーゴスピア国上空ー


バサッ、バサッ、バサッ、


《なぁ主、国王の依頼のアテはあるのか?》


「…あっ⁉」


日向子は国王の願いを叶える為に颯爽と飛び立ったは良いがよく考えたら地理的にも情報量的にも飛び出せる段階ではなかったのだ


「…格好つけて飛び出して来ちゃったね…」


《ああ…》


国王も国王だが日向子も日向子、お互い平常運転なのかも知れない


半時後、コソコソとトルル村に戻ろうとしていた日向子達をアーチは護衛兵独自の情報網で捉え

トルル村にて漸く二人と合流した


アーチより事情を聞いた日向子は馬車を用意して貰い一応旅人に扮して捜索をする事にしたのである


アーチは特命を受けている為四護の中からチャントを一時任から外し日向子達のサポートをする事にした


「ではファルコ、オルドレット、後を頼む」


「「お任せ下さい」」


こうして日向子達四人はツヴァイ国王の依頼を遂行する旅に出発したのだった


「日向子殿、国王の命は凡そ察しがつきますが先ずは誤解を招かぬ様、本来の素性を明かしておきます」


「あ、やっと教えてくれるんだ?王様独身だったからアーチさんって何者?って思ってたんだ」


アーチは日向子の指摘に頭を掻いた


「流石です。私…いや俺はツヴァイ国王の甥にあたります。名はアーチ・ヴァン・スラストア

スラストア国王の14番目の子供です」


アーチはツヴァイ国王が見せた様に瞳孔をキュッと絞る


「そして私チャントはファルコ、オルドレットと共にアーチ殿下をお守りする側近兵でございます」


「そっか、甥っ子さんね」


「日向子殿と旅を共にするにあたり隠し事は無粋と思い明かしました

多分叔父上の依頼は竜族の女性を探せとの命でしょうから我々がお役に立てるかと思いますよ」


「…なぁ~んだ、甥っ子さんにバレバレじゃないの…畏まって極秘任務っぽく話すからてっきり誰も知らないのかと思っていたわ」


「ハハッ、叔父上が日夜悶々としている事は俺しか知りませんよ」


「後で聞いたら赤面モノね」


「言わないで下さいよ?俺達はあくまでも日向子殿の護衛として随行するだけですので」


「そうね、お互いの素性も晒したしフランクに行きましょ。宜しくアーチさん」


「此方こそ。日向子殿」


東に向かう馬車は笑いに包まれていたのだった

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