表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾンビーナ!  作者: とれさん
27/378

27 武闘大会の始まり


ーパーン、パパーン‼ー


翌朝開催を知らせる花火の音でゴメリは目覚めた


「お、もうそんな時間だべか…」


軍時代に着ていた鎧と太刀を布に包んで部屋を出る


ーコンコンー


「ヒナちゃん、そろそろ行くだよ」


「は~い」


ーガチャー


「ん?ヒナちゃんコートなんぞ羽織ってどうしただ?」


「フフッ、秘密ですよ…」


日向子の意気込みにゴメリは威圧される


「…行くべ」


二人は闘技場の参加者専用入り口へと向かう


「あ、ゴメリさん。これを鎧の何処かに貼っておいて下さいね」


「何だべ?ん?「神獣運輸」?」


日向子が手渡したのは社名の入ったシールだった


「観客は選手の姿に釘付けになりますからね、良い宣伝になります」


「成る程、分かっただよ」


二人は入り口で登録を済ませると待機所へと進む


ドアを開けると中から殺気混じりの鋭い視線が日向子達に刺さった


「おい…アイツは斬撃の悪魔じゃねぇのか?」


「まさか…もしそうなら勝てっこねぇよ…」


ん?何か聞き捨てならない事を聞いた様な?


「あの、ゴメリさん?」


「あ、アハハ…昔はやんちゃしてただよ…」


「…えーっ⁉じゃあゴメリさんが斬撃の悪魔だったんですか?」


「…まぁそう言われた時もあったべ…」


ゴメリは頭をポリポリと掻いた


「なら宣伝はゴメリさんで十分だったじゃないですかぁ!」


日向子は顔を真っ赤にしてプリプリ怒っている


「でもそう呼ばれてたのは昔の事だし直ぐ負けたら宣伝にもならないだべ」


「…知ってたらこんな格好する事なかったのに…」


日向子はまたブツブツと呟き出していた


「「こんな格好」ってヒナちゃん何着て来たんだ?」


「もうっ!放っておいて下さい‼」


日向子はプリプリ怒りながら待機所から出て行った


「ゴメリ隊長、お久しぶりです」


日向子を怒らせて動揺しているゴメリに誰かが声を掛けた


「ん?おお、リースか。久しぶりだべ」


「アハハ‼何訛ってるんですか?」


「オラぁはもう一般人だで村の標準語みたいなもんだぁよ」


「えー?何か微妙に無理してるっぽいし止めましょうよ」


「…何故バレた…」


「だって私も村出身ですけどそんな訛り聞いた事ないですもん」



ゴメリ自身は完璧なイントネーションだと自負していたがやはりネイティブには敵わないのか、と拳を握った


「…お前は大分強くなった様だな」


「はい、ゴメリ隊長が居なくなった穴を埋める為にそれはもう死に物狂いで鍛えましたからね」


「あの泣き虫リースがゴメスと互角とはな…」


「やだもう‼その渾名は昔の話でしょ?」


その場にいた男達は白銀の麗人、リースの気さくな姿を初めて見てざわついた


「え?白銀はあんなに可愛い笑顔で笑えるのか?」


「取っつき難いと思ってたけど女性らしい部分もあるんだな…」


「…惚れ直したっ⁉」


そんなざわめきを他所に一人の男がゴメリに近付いて来る


「やあやあ。これはゴメリ殿ではないか‼久しぶりだな‼」


剣呑に話し掛けてきたのはエレモス城親衛隊長ゴメスだった


「…ゴメスか、久しぶりだな」


「何やら大会に参加するそうだし今度こそ勝敗を決められそうだな、ガハハハ‼」


ゴメスは一方的にそう言い放つと重装甲の甲冑をガチャガチャと鳴らしながら待機所から出て行った


「…あいつは相変わらずだな」


「ええ…」


ゴメリが軍を除隊した原因、それはゴメスとの確執だったのだ


「まだお前にちょっかいを出して来ているのか?」


「ゴメリ隊長がご自身の座を私に譲ってくれていなかったらどうなっていたか分かりません…

今は親衛隊長と護衛隊長という身分があるので表立っては何も…」


「…そうか」


ゴメリは拳を強く握った


ーガチャ‼ー


「出場選手の皆様、開会式の準備をして下さぁーい」


係員がゴメリ達を呼びに来てこの会話は途切れてしまった


ーパーン、パパーン‼ー


「えー、観客の皆様、出場選手の皆様、本日はエレモス城武闘大会にお越し頂き感謝する。では大会の開催を宣言する!」


ーワァァァァッ‼ー


会場は一気に熱を帯びてうねる様な歓声が響いた


「本日は参加者多数の為にブロック毎の生き残り戦とする‼先ずは第1組と書かれたタグを持った選手以外は退場してくれ!」


司会進行役の衛兵がこう告げると選手達は登録時に渡されたタグを取り出す


「俺は…1組だな」


ゴメリのタグは第1組の様だ


「じゃあゴメリ隊長、ご武運を」


「あぁ、お前はシードだろう?」


「はい、隊長が三回戦まで勝ち進めばあるいは…」


「その時は手加減せぬぞ?」


「勿論です。成長した私を必ずやお見せしますよ♪」


リースは笑いながら会場から立ち去った


「えー、では第1組。これより生き残り戦を行って貰う。

武器等失格事項は手元にあると思うのでくれぐれも反則行為はしない様に。では…始めっ!」


ゴメリ達第1組は各々手近な選手と戦い始める


(…何人生き残れるかは説明していなかったな…敢えて、か?)


ゴメリは突進してくる選手をヒラリと躱すと手刀をその首に叩き込む


(そう言えば…ヒナちゃんを見なかった様な気がする)


ゴメリは戦いの場ではあり得ない程雑念だらけだった

その位周囲の選手レベルが低かったのだ


ゴメリは除隊したとは言えかなりの頻度で討伐依頼をこなしており日向子が来てからは却って軍時代よりも数をこなしていた


故に勘も肉体も現役、いや現役以上に鍛え上げられていたのだ


ー十数分後ー


ドンドンドンドン!


「戦い止めっ!」


ゴメリにしてみればグダグダな争いが漸く終わった

会場に立っているのは凡そ10名位か


「敗北した選手は退場せよ‼勝ち残った者は待機所に。手傷を負った者は救護室へ」


審判は端的に指示すると重症者を担架に乗せて運び出す衛兵の指示をしている


10分後会場を片付けると進行役が宣言した


「では第2組、会場へ!」


入場門から選手がぞろぞろと出て来る


「第1組の時と説明は同じだ。くれぐれも反則はしない様に。では…始めっ!」


「うおおりゃっ‼」

「チェイッ!」


ーキン‼ドンッ‼ぐわぁ‼ー


こうして選手は次々とふるいにかけられて行ったのだった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ