260 村を探訪
ワンド村長の質問責めを華麗に躱した日向子はアーチに目配せして漸く長の家から解放された
「ふぅ~、ワンドさんって話し好きなんですね…何か疲れちゃったなぁ…」
日向子は気疲れでヘトヘトになりながらそれでも尚周囲の目新しい光景にワキワキしている
「ワハハ、済まんな。長はああ見えて茶目っ気が過ぎてな、しかも若い頃は名のある冒険者だったと聞いている」
「へー、冒険者だったんだ?後でもっと冒険談とか聞いても良いですか?」
「うっ…ま、まあ止めはしないが…長いぞ?」
アーチは何故か視線を反らした
一旦アーチ達は兵舎に戻り任務の分担を終えるとアーチだけが出て来た
「済まんな。流石に衛兵が1人もいないとなると治安がな…」
《アーチ殿は任務を外れても大丈夫なのか?》
「ん?あぁ、まぁ任務と言ってもここ数年夫婦喧嘩の仲裁位しかやる事がなくてな。魔物も魔方陣を越える程の強敵なといないし…」
「ままま、魔方陣⁉お…漢の浪漫だわぁ~☆」
「…漢?は分からんが日向子殿は魔法に興味があるのか?」
「えぇ‼勿論です‼」
「それなら後で村一番の魔導師を紹介してやろう。とりあえず今は宿に案内するからな」
日向子は小躍りしながらクルクル回っている
その姿を村の男性達が眩しい‼と言った目で見つめている
「や、やべえな…あんなエロっちい服装で踊られたら…たまんねぇ…」
「誰だか知らねぇが俺達を誘惑しやがって…最高かよ!」
際どい衣装に揺れる胸…この田舎では殆どお目にかかれない露出度に男達は何故か前屈みになっている
それとは逆に女性達からは射殺す様な冷たい視線を浴びている
「何よ…ちょっとスタイルが良いからって…」
「あんなに破廉恥な格好で表を出歩くなんて…神様がご覧になられたらきっとお嘆きになられるでしょう」
「ウチの旦那もあんなに鼻の下を伸ばして…キィィッ‼」
村民の視線に当然気付いているアーチは頬を掻きながら日向子に訊ねる
「あの…日向子殿、もう少し大人しい服装はないのか?ど、どうも村民達には刺激が強すぎる様でな…」
「あ、派手でしたか?安心して下さい、ちゃんと普通の服装に着替えますね」
(((((((。。。チッ!!)))))))
男達の心の舌打ちがアーチの背中に突き刺さる
「こ、此処が宿だ。日向子殿は金を持っているのかな?」
「えーっと…何分まだ南半球初日でして…貨幣価値どころか何も持っていません…」
「そうか、そうだよなぁ。まぁ恐らく村長が当座の資金援助をしてくれる筈だ。安心して逗留すると良いぞ」
「あ、ありがとうございます‼」
【山猫のお戯れ亭】
宿の名前にどことなく違和感を感じながら日向子達は部屋に案内された
「うん、部屋は普通にまともね」
《ああ、とにかく久しぶりのベッドだな》
船旅と夜営で最近はベッドで寝る事など考えられなかった事を考慮するとどんな所でも豪華に思えた
「さて、荷物を置いたら早速村の中を案内したいんだが…大丈夫か?」
アーチもやはり任務をそれほど抜けられないんだろう、と察した日向子達は休憩もソコソコに村の中を案内して貰う事にした
「…あれが教会、この先に冒険者ギルドな。食事は山猫亭の一階で済ますと良い。他には…」
鍛治屋、武器屋、薬屋、道具屋、魔導具屋…日向子が異世界と聞いて思い付く店がそこにはあった
「どうやら魔導師は薬草を探しに出掛けてる様だから紹介は明日で良いか?」
「はい、何から何までありがとうございます‼」
日向子は親切に対応してくれるアーチに頭を下げた
「ビキニアーマーを着た美人戦士が色んな所をプルプルさせながらアーチと一緒に歩いている!」
と言った噂を聞きつけた野郎共が村のあちこちで見受けられたが残念、日向子は宿で普通の服装に着替えて出ていた為に村中がため息に包まれるハプニングが巻き起こっていた
「あはは…やっぱり余所者は受け入れて貰えないんですかね?」
日向子はちょっと寂しそうに村人達を見回している
だが逆に女性達には概ね好評で先程の射殺す様な視線は消え気さくに挨拶もしてくる様になった
「良かった、嫌われている訳じゃなかったんですね」
「ん、んまぁその…日向子殿の服装がな…うおっほん‼ゲホゲホ…」
戦士のアーチとしてはビキニアーマーが過激だとは思わない
非力な女戦士にとって重さは最大の枷なのを知っているからである
必要最低限度(?)の急所を保護し、尚且つ軽量化を図った鎧
東方には「フンドシ一丁流」という変質者紛いの武術もあると聞いている
それから比べたら日向子のビキニアーマーなぞごくごく普通の装備品だった
「アーチさん、冒険者ギルドって私達も入れるんですか?」
日向子は目をキラキラさせて訊ねる
「ん?まぁ貴賤に関わらず冒険者になるのは国で保証されているからな、登録は出来るんじゃないか?」
「やった‼じゃあ案内後にマイラと行ってみます‼」
「いや、案内はもう殆ど終わりだからついでにギルドに行こう。俺もちょっと用事を思い出したんでな」
「あ、じゃあお願いします‼」
こうしてアーチに案内されて冒険者ギルドに向かうのであった




