257 BAD COMMUNICATION part2
ー引き続き住人視点ー
俺達村の幼馴染達は突然現れた魔物の襲来に怯えつつも救助に来てくれたアーチさんの指示に従って少し離れた場所から戦況を伺っている
…ダダダダダッ‼
「あっ⁉来た‼」
パルトが声をあげるとアーチさんの所に加速の魔法を使ってやって来た兵士達が集結した
光魔法の雄、ファルコさん
樹氷の麗人、チャントさん
雷撃の獣、オルドレットさん
村を守る四護があっという間に攻撃体制を整える
「敵は強い‼皆で一斉攻撃だ‼」
アーチさんの号令で他の隊員達も詠唱を始める
「…闇を照らす目映い光の渦よ、我の求めに応じてその威光を現せ‼」
「凍てつく大地の怒りを今敵を討ち滅ぼす為に使わん‼」
「雷撃の神よ、我の訴えに応じて神秘の力をお貸し賜わん‼」
…
「ライトビーム‼」
「アイスキャノン‼」
「サンダーウェイブ‼」
キュバッ‼ビュウッ‼ビカカッ‼
「ファイヤーボール‼」
ゴウッッ‼
アーチさん達の一斉攻撃、これならいくら強い魔物と言えど瞬殺だ‼
「○×△□‼△□○~‼」
ゴギン‼ドカッ‼ジャッッ‼
「「「「…えっ⁉」」」」
村の四護、最強の攻撃をメスの魔物は難なく振り払ってしまった
…しかもまたもや片手で。
「□□○×△△?」
《○×○×△□…》
「○×○×?□○×△…」
魔物達は何かのやり取りをしてはいるが此方の攻撃が少しも効いていない様子だ
「バ、バカな⁉我々の攻撃があんなに軽々と…」
「う、狼狽えるな!我々は村人を守る守護兵士なのだぞ‼」
アーチさん達はアーチさん達で俺達を守る為に命を張って迄守り抜くと宣言してくれている
「×△○×?」
《△△○×△》
そんな謎の間があったと思っていたらいきなりオスの魔物がこっちに向かって急降下を始めた
キュドッ‼ズズン、ドッ、ドカッ‼バキッ‼
「う、⁉」「ぐわっ‼」「きゃっ‼」「ゲボッ‼」
詠唱の干渉を防ぐ為に戦闘間隔を空けていた筈のアーチさん達が一瞬で攻撃され吹き飛んでしまった
「…あわわ…く、食われる⁉」
ジレンの発した言葉が決定打となってしまった
ガンツ、パルトはその場で気絶
ジレンとドウンはペタリと腰をおろし股間からは湯気が立ち上っている
そんな俺も情けない事に腰が抜けてしまって動けない
アーチさん達に救いを求めて吹き飛んだ方向をキョロキョロ見回しても誰も起き上がっては来なかった
(く、食われて死ぬのか?)
その場にいた全員の脳裏に「死」と言う文字が浮かんで来たタイミングを見計らったかの様に魔物達が地面へと舞い降りてきた
「○×△○×□…」
《□○×△○×□○×?》
「…△○×□☆」
メスの魔物は一瞬バツの悪そうな顔をしつつ頭を掻いていたが
何故か俺に向かって歩み寄って来た
(ひぃぃっ⁉お、お、俺なんか不味くて食っても腹壊すだけっすよ⁉)
何とか意思の疎通を図ろうと声を出そうと試みたが言葉どころか悲鳴すらもあげられなかった
メスの魔物はニコニコしながら俺に近付くと人差し指で俺の頭を指差した
…ビュルル‼
(え?なにソレ⁉糸ミミズ⁉)
メスの魔物の指先から変な糸の魔物が飛び出て来た
(…あっ…俺、食われちゃうんだ…)
一瞬で死を悟った俺は何故か小さい頃に村の女の子全員のスカートを捲っている光景を思い出していた
(…これが俺の走馬灯なのか?…情けないな…)
もう誰も助けてくれる人はいない
ガンツ、パルト、ジレン、ドウン…先に涅槃で待ってるぜ…
ジレン、そんな情けない顔で見送らないでくれよ…
父ちゃん母ちゃん、先立つ不幸をお許し下さい…
ああ…せめて嫁とは言わずに女の子とイチャイチャしたかったな…
ん?やっぱりこのメスの魔物、美人さんだぜ…オスに食われるよりかは少しはマシ、か…
糸ミミズの魔物が俺のこめかみにピトッと張り付いた
あぁ…痛くしないでね?
。。。
「けぺっっ⁉あひょひょっ⁉」
糸ミミズの魔物が突然脳ミソの奥深くに侵入して来やがった⁉
視界の隅ではさっきまで哀れみの視線を送っていたジレンとドウンがパッタリ倒れ込む姿が見える
そ、そんなにエグい光景なのか?
まぁミミズが脳ミソ食ってるんだからそりゃグロいわな…
そう言えばさっき変な声出しちゃった…
人生最後の瞬間に「けぺっっ⁉」とかあり得ないわー…
せめて時世の句みたいなカッコいい言葉を言って死にたかった
くそっ‼何だか視界がボヤけて来た…
やけくそでこのメスの乳でも揉んでやろうかな…
ブルブル…モニュ。
おお~‼や、柔らかーい‼
父ちゃん母ちゃん、俺は今大人への階段を半歩進んだよ?
その先は無いけど一矢報いた息子を褒め称えてくれよ‼
。。。あ、メスの魔物が怒ってる
顔が真っ赤だよ、意外とウブなんだなぁ~…
ん?何か喋ってる⁉
「○×△○×…っていつまでおっぱい揉んでるのよっ‼」
…あれっ?何かメスの言葉が理解出来ちゃった?
ん。きっと最後の瞬間だから気のせいだろうな…人生の最後に揉めて幸せだったよ、ありがとう…




