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ゾンビーナ!  作者: とれさん
255/378

255 第一村人発見?


感覚的でしかないが恐らく日向子が見た方角は南、そちらには密林と言って良い程の森が地平線迄広がっていた


一方キメが見た方角にはある程度先以降から森が途切れ丘陵地から平地へと次第に低くなっている


文明が栄えるとしたら恐らくそっち側だろう、と推測をして千里眼を使うとさほどの距離を置かずに何らかの集落を見つけた


「…多分だけど村があるからそっちに行ってみましょ」


日向子達はとりあえず村とおぼしき建造物のある西に向かって旅を始める事にしたのだった


バサッ、バサッ、バサッ、


《これは…道、だな》


日向子達の眼下には森の切れ目から丘陵地、そして平地へと続く道が見えて来た


最低でも文明を持つ民族が住んでいて往来の為に道を作った、と言う事が分かる


「そうね、問題は言語が分かると良いんだけど…」


隔離された社会では独自の生態系が存在するのは勿論だが文明や文化も独特な進化をしている可能性が高い


言語が共通でなければ相互理解にも相当な支障をきたすであろう事は容易に想像が出来た


バサッ、バサッ、バサッ、


とにかく行って確かめなければ分からない、という日向子の言葉で先の不安はとりあえず発見した集落へと飛行を続けた


そろそろ集落へ到着しようか、と言う辺りで何やら眼下が騒がしくなった


《主、どうやら我々の姿が見られてしまった様だぞ?》


日向子が眼下に視線を向けると道の上で数名が日向子達を見つけて騒いでいる


「あー、失敗したなぁ…気付かれない内に下に降りて徒歩で村に入るつもりだったのに…」


初めて見る景色に油断して眼下の警戒を疎かにしてしまっていた


見られたからには仕方ない、非常に怪しいが先ずはファーストコンタクトをしなければ!


バサッ、バサッ、


「どうもぉ、こんにちはー‼」


日向子は可能な限り低姿勢で騒いでいる人間達の元に降り立とうと降下を始めた


「…ん?」


道で騒いでいる数名が誰かを呼んでいる様な仕草をすると集落の方角から剣を持った人物が走り寄って何やら話をしている


《…あれは此方の世界の護衛兵とかではないか?》


「あはは、そんなぁ~」


…○×△…○×○×○×‼


後から来た軽装の鎧を着こんだ男が何やら呟くといきなり火球をこちらに向けて放って来た


「ちょっ、危ないじゃないの‼」


日向子は迫り来る火球を片手で払うと文句を言ったのだが…どうやらその行動が相当不味かったらしい


キメ曰く護衛兵は放った攻撃がいとも容易く弾かれてしまった事に驚愕し、何か角笛の様なモノを吹きだした


《…主、あれは恐らく応援を呼んでいるぞ?どうする?》


「どうするって…話せば分かるんじゃないかなぁ?同じ人間同士」


《いきなり攻撃を仕掛けて来ている以上相手は我々を同類とは見なしていないのでは?》


キメの尤もな意見に日向子は無視を決め込んで努めて明るくリアクションを返している


「あのー、私達怪しいモノじゃありませーん‼安心して下さーい‼」


《いや、だから…その…》


キメは一向に自分の説明を聞かない日向子と角笛に呼ばれて集まって来るいかつい兵士達を見比べて身の危険を察知した


…××○×△‼

…△△□○‼

…○×○×‼


兵士達が次々に放つ攻撃が日向子に迫って来る


「何よ?もう‼こっちがこんなにフレンドリーに接してるのにぃ‼」


ゴギン‼ドカッ‼ジャッッ‼


日向子は兵士達が繰り出す攻撃を全て手で払いのける


「…キメちゃん?」


《どうした?》


「…もしかして私達…敵として見られてるの?」


《…さっきからそう言っていたが?》


営業スマイルを貼り付けた日向子のこめかみに青筋が走る


「…助さん、ちょっと懲らしめてやりなさい…」


《…助さん?》


助さんとは誰だ?とは思いつつもこのままでは埒が明かないと判断したキメは道端に展開している兵士達のど真ん中に急降下し着地と共に高速で当て身を食らわせて倒していく


ドッ、ドカッ‼バキッ‼


「×○⁉」「△□○‼」「□○⁉」


恐らく住人達と思われる人間以外全員が一瞬で鎮圧されていく


「皆さん、私達は敵や魔物じゃありませんよ‼ただの旅人でーす‼」


頼りにしていた兵士達が一瞬で倒されていく光景を唖然としながら見ていた住人達に日向子は努めて明るく語りかける


住人達からすれば生えている筈のない翼を羽ばたかせ魔法攻撃を片手で払いのけ

作り物の様な笑顔を貼り付けた女性が意味不明な言語で何やら語りかけて来ているのだ


…数分後、最初にいた数名の住人達は失神、失禁、腰を抜かす者とまともに会話が出来る者がいなくなってしまった


「あー…やっぱり言語が通じないみたい…」


頭をポリポリ掻いて誤魔化す日向子にキメは呆れ顔をプレゼントした


《主、言語の違いは直接取り込めば対応可能だぞ?》


「…あ、そっか☆」


日向子は忘れてました‼と言わんばかりに腰を抜かしている住人に近付き指先から触手を出した


この行為を間近で見ていた失禁者は堪らずに意識を手放したのであった

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