表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾンビーナ!  作者: とれさん
252/378

252 階段の果てに


踊り場の様に拓けた場所で一泊した日向子達は十分に休息を取ってから探索を再開した


「それにしても…いつ終点が見えるのかしらね?」


とうとうと流れ落ちる水の先はどんなに反響させても返って来ない


先はまだまだ長い様だ


《主、魔物だ》


キメの言葉に階段の下を覗くと大きな塊が階段を塞いでいるのが分かった


「…でも死んでるわね?」


念の為に慎重に近付いてみると階段を塞いでいた魔物は既に事切れていた


《この種族は初めて見る。もしかすると南半球の魔物なのかも知れないな…》


ゴリラの2倍程の体躯に朱色の体毛、背中にはゴジラの様な背ビレが見える


死んでからかなりの日数が経っている様だが腐敗は少なく逆にミイラ化が進んでいる様だ


「水分は豊富な筈なのにミイラ化するって変よね?」


《ああ、これがもしかすると昔話の男の死因に関係しているのかも知れないな》


日向子は後々調べる為に魔物の体を切り取って空いていた小瓶に詰めた


(これで何か分かると良いんだけど…)


邪魔をしていた魔物の死体は滝壺に蹴り落とし、探索を続ける


結局地下へと降りる階段は2日がかりで踏破する羽目になったがその苦行にもいよいよ終わりが見えて来た


《…門…みたいなモノなのか?》


「…確かに門みたいなモノね…」


滝は未だ底が見えないが階段は途中で終点を迎えた


その先にあったのは恐らく境界線を結界とする門の様な建築物であった


「人工的だけど…人が造ったモノとは思えないわね」


《…ああ…》


階段にしろ門にしろ人間でも魔物でもない何者かが何らかの理由で造った建築物の様だ


階段では見られなかったが門の部分には象形文字の様なモノが全体的に彫り込まれている


《…これは…古に絶えた魔術なのか?》


キメは首を傾げながらその紋様に見入っている


「え?魔術って…もしかして魔法陣なの、これ?」


《シルグ様やラクル様なら分かるんだが…俺も見るのは初めてだからな…》


北半球では既に失われたと言われている魔法、それがこの紋様には刻み込まれていると聞いて日向子のテンションは一気に跳ね上がった


「も、もしかして…南半球に行けば魔法とかあったりする?ねぇ、あったりしちゃう?」


ガクガク揺すられてキメの首が変な方向に曲がっている


《お、落ち着け‼主が期待しているのは分かるがこの門自体相当古い、南半球に魔法が残っているとは限らないぞ?》


「さっ‼急いで障壁の向こうに行きましょっ‼」


確認もせず突入しようとする日向子をキメが体を張って引き留める


《ま、待て‼まだミイラ化の原因が解けていないのに突入したらマズい‼落ち着け‼》


「あ…フフン⁉そ、そんなの当然分かってるわよ⁉ちゃ、ちゃんと調べてから突入しましょっ‼」


(…絶対忘れてたよな、主…)


キメのジト目を躱す様に日向子は門周辺を捜索し始める


「でもこのままだと埒が明かないのも事実だわ。何か実験したりしてみましょうよ」


日向子の提案により門を直接潜る為の実験が開始された


幸い二人はキメラ細胞持ちである

早速分体を造り出し門を潜らせた


「…うーん、確かに抵抗感はあるけど弾かれる程ではないわね…」


《考えてみれば人間が越えられるんだしそれほど強力な呪符がある訳ではないのか…》


日向子とキメは交代で分体を繰り出し門を通過させている


門の向こう側に抜けた分体は即座に引き返させ再び門を潜って戻している


「…ねぇキメちゃん、このキラキラしたのって砂かな?何かの結晶かな?」


日向子は回収した分体にまとわりつくキラキラしたモノに注目した


《…砂…だな、ただ何かおかしくはあるが…》


分体の体からパラパラと落ちた粒を掬いキメは推測をしていく


《砂は砂だが…塩の結晶が周りにこびりついているな…むっ?》


砂を弄っていたキメが急に指先を眺める


《主…これを》


日向子が差し出された指を見ると何とキメの指先が干からびていたのだ


「これって…もしかしてミイラ化の原因?」


キメの指先から目線を外すと境界線を通過してきた分体も同様に干からびてしまっている


《砂というよりこの塩が特殊なんだろうな…何で出来ているかは分からないが…》


キメはついでとばかりに落ちた砂をかき集め、空き瓶へと詰め込んだ


干からびた指は新しい細胞で瞬時に元通りだ


「うーん…障壁は問題なさそうだしこの砂を何とか出来れば通っても問題なさそうよね?」


《…そうだな、とりあえずは問題なさそうだ》


キメと日向子はその後念の為に自身と同質量の分体を傘と共に通過させてみたが何の異常も見られなかった


「よし、じゃあ潜ろう‼」


日向子達は上から落ちて来る流砂を避けるべく傘状の物質を生成し、門を潜った


《…ふぅ、大丈夫そうだな》


「うん、あ。でも傘が…」


応急的に生成した傘は強度も考慮して骨に近い組成物だったのだが砂を浴びて10分だと言うのに既に骨粗鬆症の様にポロポロと崩れ出している


《とにかく第一関門は突破したな。先に行こう》


門を潜り終えた二人は目の前に続く階段を登り始めたのであった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ