244 自分探しの旅(準備編) part2
話が被っていたのに今気付きました…
申し訳ございません
バサッ、バサッ、スタッ。
始祖の依頼を受けた日向子はゴルド領に立ち戻り執務室へと顔を出した
『む?主殿、皆への挨拶は終わったのか?』
執務室の机では相変わらずシルグが領主代行として書類と格闘していた
《主、そのファイアーバードは?》
キメは日向子の肩に乗っている火の鳥が気になった様だ
「うん、何か始祖さんが依頼してくれたの。で、行き先を南半球にして時折報告する約束をしたのよ」
『南…半球だと?』
「うん、ちょっとその辺知らないからシルちゃん達に聞いてから出掛け様と思ってね」
そもそも日向子はこの世界の地理には詳しくなく南と言えば港町サザンス迄しか知らない
『…そうか。主殿は地理的に明るくないからな…』
シルグは難しそうな顔をして書類から顔を上げた
《そう言えば俺も何故こんな形になっているのかまでは知らないな…シルグ様、教えて頂けますか?》
「えっ?どういう事?」
日向子はこの中でも長寿なシルグに解説を求めた
『…そうだな。主殿が南半球に行くと言うのであれば説明せねばなるまい…』
シルグは目を瞑って昔話を始めた
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数千年前、この世界は今よりも陸地が多く大型魔物も多く跋扈する世界だった
人間達はそれらの魔物と対抗する為に強大な軍事力を保有し、
特に領土が近かったバンパイア族との覇権争いに勝利して以降は破竹の勢いで世界を平定しようとまでしていた
それが日向子達が滅ぼしたドラウグルの棲む死の大地、デストピアである
「それは前に聞いたけど…それと南半球がどう関わって来るの?」
『バンパイア族との戦いに疲弊し、不老不死の禁術に手を出す前にバチルスの先祖は竜族とも戦っていたのだ』
「え?」
日向子の頭には更にクエスチョンマークが増えていく
南半球の文明がなくなった事とバチルス、竜族の戦いが影響しているとは?
その答えは直ぐにシルグによって説明された
『バチルスの先祖が我等竜の祖に戦いを仕掛け逆鱗に触れた結果南半球が壊滅したのだ』
「竜の祖?長老さんじゃなくて?」
日向子は以前ドラコニアで竜核について質問した長老を思い出していた
『世代的には長老の数世代前になるな、我等四竜等足元にも及ばぬ力を有していたらしい』
そう言えば幾ら日向子のお願いとは言えバチルス率いるドラウグル軍を殲滅する際に四竜が集結したのは少しおかしい感じがしていた
バチルス王族に因縁があったとしたら彼らの行動にも納得がいく
「そっか…で、バチルスの祖先達は竜の祖に何をして逆鱗に触れたの?」
『祖の竜核を奪おうとした、と聞いているな』
「ええ…そりゃ逆鱗にも触れるわね…」
もしかすると不老不死の禁術に竜核が必要だったのかも知れない。
が、そのせいで南半球が滅んだとしたらあまりにもリスクが高い賭けだ
『まぁ本当の所はどうだかは分からん、だが南半球の現状は竜族の祖によりもたらされたと幼い頃に聞かされた』
「…うーん、元々球体だった星が南と北で分断されて今はお椀型になってるって事?」
日向子は今までの説明から推論を述べる
『お?流石は異邦人だな。星が球体であると説明しても誰も…と言うか我もピンと来ないのに』
「え?じゃあその分断された場所から先は何をがあるの?」
『…無、だな』
「無?」
シルグは飲み終わったカップを逆さまにして日向子に説明する
『これが今の世界だとすると「縁」が最果てになる、そこから先は何故か進めないし何もないのだ』
「ん?どういう事?」
『我等生物は果てから先へは目に見えぬ壁の様なモノに阻まれ先には行けぬ。
例えば海水や浮遊物、要は無機物はその「縁」を通過出来るのだが…』
「だが?」
『「縁」より先に行ったモノは全て消えてしまっているのだ』
「えっ⁉…じゃあ南半球に行ったら消えちゃうって事?」
『いや…それは正直分からん。以前我の友が南に行くと言って出たきり戻っては来なかった…
あ奴の生命力からして生きている筈だからもしかすると南半球で生きておるかも知れないな』
「そっか…音信不通になるだけで別に死んじゃったり消えちゃったりしたかは分からないもんね…」
『南に行くなら我からも願いがある。…是非友を探して欲しい‼名は青竜、疾風のファングだ』
「…うん、分かった。絶対探しだしてみせるね‼」
日向子とシルグの会話に今まで黙っていたキメが口を開いた
《主‼俺も一緒に行くぞ‼》
「え?だって死んじゃうかも知れないよ?」
《…俺は主に救われ今ここにいる。もしその場で死んだとしても最後は主と共に死にたい》
「…キメちゃん…」
こうして日向子はキメと共に未知の世界、南半球へと旅立つ事となったのであった




