233 婚約騒動 part1
本日も2話投稿します
上手くいくのか甚だ不安ではあるが日向子は国王の求婚を躱す為、ラクルに協力して貰い形だけ婚約する事にした様だ
「その前にラクルさんには何としても元気になって貰わないとね」
日向子はラクルの居城に戻りながら今後のプランを考えていた
バサッ、バサッ、
《日向子様、ウシャ様から荷物が届いておりますが》
帰ったばかりの日向子に衛兵のワーウルフが声をかけた
「えっ?もしかして…もう出来たの?」
早速日向子は荷を解くとウシャからの手紙とアンプルが入っていた
ーヒナちゃんへ。ー
「元老院の協力により回復薬の試薬が出来たぞぃ。これを1日一回服用させてみてくれ。試薬なので経過観察は怠らぬ様に」
ーウシャより。ー
「流石ウシャさん、仕事が早いわ‼」
日向子はウシャのサムズアップした姿を思い起こし感謝する
(最悪長老と同じ手法を試そうかとも思ったけどこれで何とかなりそうね…)
日向子はアンプルを手にラクルの寝室に向かうのであった
コンコン、ガチャ
「ただいま、ラクルさん」
日向子が寝室に入るとラクルは手をつけられなかった書類整理をしていた
「あ‼ダメじゃない‼ちゃんと休んでなきゃ‼」
日向子はラクルを窘めるとラクルは微笑みながら制した
〈我もまた一国の主、そういつまでも休んではいられぬからな。
まぁ負担が掛からぬ程度に抑えているから見逃してくれまいか?〉
そう言われたら日向子には何も言えない、頬を膨らませながら渋々了承した
「あ、これ‼ウシャさんに作って貰った回復薬の試薬ね。1日1回服用してみて」
日向子は回復薬をラクルに手渡す
〈うむ、では早速飲んでみよう〉
ラクルはアンプルの頸部を折ると中身を飲み干した
〈!?…これは…〉
飲んで直ぐに効果が現れた
ラクルの弱った体から覇気が生まれ迸る
「ウシャさんが元老院さん達に協力して貰った特別製よ、どう?」
ラクルにはその成分が何をベースに作られているか、瞬時に分かった
〈…これは恐らく血液から精製されているな…〉
以前日向子はバンパイアの赤血球が鎌状赤血球である事を発見していた
バンパイア族はこの遺伝子異常による発作を抑制する為に吸血行為を本能的に強いられているのだ
ウシャ爺は元老院達の協力で精密検査を行いその原因を特定、製薬では日向子のリクエストに間に合わないと悟り
採血で得た血液を円心分離させ不純物を取り除いた血清を濃縮させるアイデアを思い付いた
そうして出来上がったのがこの世界初の血液製剤である
「どう?効き目は?」
〈うむ、かなり具合が良くなって来ている。ウシャ殿には後で礼を言わねばならぬな〉
ラクルは想像以上の効果に驚いていた
〈多分ウシャさんの事だから余計なモノを仕込んでいる筈だわ。
ヒドロキシとかヘモグロビンとか…問題は持続効果時間よね)
日向子はウシャに言われた様に経過観察を怠らない様に注意する事にしたのだった
。。。
数日後、ラクルはほぼ全快と言っても良い位迄に回復した
どうやら狂犬病ウイルスに侵された時に与えたキメラ細胞とウシャ爺の薬の相性が良かった様で
体力だけでなく気力も補ってくれたらしい
〈ふむ、これならば薬に頼らずとも大丈夫であろう〉
ラクルは鈍った体を伸ばしながら日向子に調子を伝えた
「もう少しならその少しを待つわよ、薬サボって元の木阿弥じゃ嫌だもん」
原因は日向子にあるとは言えここまで献身的に看病してくれた日向子にラクルは頭が上がらない
〈ところで日向子、エレモス国王の求婚の話はどうなっているのだ?〉
「えー?今それどころじゃないから放置してるわ、どうして?」
〈いや、以前話した偽装話をな。今の体調であればさして問題もあるまい?〉
「…覚えてたんだ?」
〈当然だ。命の恩人の窮地に力添え出来るとは何とも有難い事だからな〉
実は日向子、シルグ達には計画を言ったもののいざラクルと面していると話し出せず今迄若干放置中だったのだ
「そっか、そう言ってくれると助かるわ。実はいつ言おうかと迷ってたんだ…」
日向子は申し訳なさそうにしている
〈…そう気にする事はない。例え偽装でも日向子と夫婦になる事は我にとっても嬉しい事だぞ?〉
ラクルはそんなつもりで言った訳ではなかったが日向子の心に刺さった
「…えっ⁉(///」
〈日向子と一緒にいると飽きないのだ。こんな気持ちは今迄味わった事がない〉
「…ラクルさん…」
ラクルは日向子の気持ちを軽くする為に発していたが日向子にはもうプロポーズに近い言葉として変換されていたのだ
〈とにかく今はエレモスの国王に諦めさせる事が主目的だ、我の立場も明確にしておく必要があるだろうな〉
ラクルも段々悪乗りしてきたらしくニコニコしながら計画を練っていく
「…ラクルさん、あんまり大袈裟にしないでね?」
手伝ってくれるというラクルに申し訳なくてやんわり制する事しか出来なかった日向子であった




