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ゾンビーナ!  作者: とれさん
230/378

230 ゴルドへのおつかい


ラクルの居城に戻った日向子は晴れやかな顔をしてラクルの寝室に入って来た


「ただいま、ラクルさん」


〈あぁ、どうだった?調べ物は分かったのか?〉


「うん‼取り敢えずは何の問題もないかな?って分かってホッとしたわ」


〈…問題?〉


日向子はつい浮かれて答えてしまったが追求されると恥ずかしい告白をしなくてはならない事に気付いて動揺する


「ほっ、ほら‼とにかく大丈夫って事‼ところでラクルさんは体調はどう?」


ラクルは日向子の動揺した姿に疑問を抱いたが直ぐに切り替えた


〈うむ、未だに少し力が入りづらい感じはするが…七割は回復した様だな〉


日向子が長老に会いに行く時はベッドから動けない程弱っていたが今はベッドサイドの椅子に自力で腰掛けられる迄になっていた


「良かった…私のせいでこんな事になっちゃったんだもん、治らなかったらどうしようって思ってたわ…」


元はと言えば狂犬病の治療で能力が枯渇寸前だったラクルに酔っていたとは言え精神支配を行ってしまった日向子のミスから始まっている

気にするなと言われてもそんな訳にはいかなかったのだ


〈後は元老院の作る秘薬か血袋から直接血を飲めばそれほど時間は掛からないだろうな〉


元老院と言う言葉を聞いて日向子は少し不安を抱いた


「…大丈夫かな…まだ裏切り者の残党とかいたらラクルさんが危険に晒されちゃうんじゃ…」


ラクルにしても今回のバチルス軍侵攻で発覚した内通者の存在は予想外と言えば予想外だった


疑えばきりがないがよもやそこまで浅はかな考えの貴族がいるとは思っていなかったのも事実だ


〈うむ、だが我が配下を信ぜねば配下達もまた我に付いていこうとは思わぬからな〉


ラクルはバンパイア族の王として配下を信じる事は当然なのだ、と思っているようだ


「それはそうなんだけどね…ラクルさんが元気なら私も口を挟むべきではないと思ってるんだけど流石に弱ってる今裏切られたらね…」


正直日向子は何かにかこつけてラクルの配下全てを触手と瞳力でスクリーニング検査をしたいと本気で思っていた


だがラクルに露見したら、と思うと怖くて出来なかったのだ


「あっ‼ウシャさんに相談してみようかな?ラクルさんに効く薬とか」


またもや危うく秘めた気持ちが漏れそうになった日向子は話題を変える為に予想外な思い付きをしてしまう


〈…ウシャとは確かゴルドの薬学部門の…〉


ラクルは当然名前だけは聞いている

現在交易の為に派遣されている元老院はウシャの下で協力体制にあると報告を受けていたからだ


「そう。私の恩人でもあるし色んなピンチを救ってくれた人なの」


今でこそ傷すら付かない体になったがゾンビだった頃の日向子はウシャ爺謹製の回復薬の世話にもなったのだ


〈確か我等バンパイアの薬学を凌駕する知識を持っている御仁だと聞いている。いずれ会いたいモノだな〉


ラクルは表面上はバンパイア領の守護神として武力ばかりが目立つが実は研究者肌を持つ一面を持ち合わせていた


ウシャ爺と引き合わせればラクルも喜ぶかな、と思った日向子は後で面会に来させる事を確約したのだった


「とにかく今は回復が最優先だからちょっとウシャさんの所に行って聞いてくるわね」


日向子は休む間もなくゴルドへと飛び立って行った


〈日向子と一緒にいると退屈せぬな〉


ラクルは日向子を見送りながらそんな事をボンヤリ考えていた


一方、領主代行として甲斐甲斐しく動いていたシルグの下にドラコニア、ワイトから緊急の知らせが舞い込んでいた


【長老から日向子に火急の召喚依頼あり、直ぐに来られたし】


一報を受け取ったシルグは何事があったのかも案じていた


『まさかとは思うが…主殿との接触で長老の命に障りがあったとかではない…よな?』


もしこの言葉が現実ならドラコニアは日向子に対して宣戦布告をするだろう


その位長老はドラゴン族にとって重鎮だったのだ


『主殿を引き合わせたワシやワイトも身命を賭さねばならぬな…』


《シルグ様、そこまで深くお考えになる事はありませんよ?主は無闇に他人を害する事はありませんから》


一緒に書類整理をしていたキメが日向子をフォローした


『…そうだな。主殿に限ってその様な無体はせぬか、ワハハ‼』


一抹の不安を払拭したタイミングで日向子が執務室に飛び込んで来た


《うおっ⁉あ、主⁉…そんなに慌ててどうしたんだ?》


日向子が勢い良く開けた扉の近くに机があったキメは相当驚かされた様だ


「ウシャさん、今何処にいるかな?」


日向子はキメの驚きっぷりは全スルーしてシルグの所に詰め寄った


『ウ、ウシャ殿は今新薬の開発で工房にいる筈だが?ど…』


シルグが最後まで言い切らない内に飛び出していく日向子をキメとシルグは生暖かく見送るのであった

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