227 私達、結婚します⁉
今日は3話位投稿する予定です
ラクルのとんでも発言により急に異性を意識してしまった日向子は居たたまれずにラクルの寝室を飛び出してしまっていた
「全くもう!ラクルさんったら冗談でもあんな事言うなんて…」
だが日向子にとってあんなにストレートなプロポーズ発言は人生初である、響かない訳がなかった
高鳴る胸を抑えつつ日向子は空へと飛び立った
ソコですっかり忘れていた事実を思い出す
「…あれっ?ドキドキしてる?」
日向子は転生した時のバイタルチェックで自身に鼓動がなかった事を確認している
なのに今日向子の胸は確かにドキドキと脈打っていたのだ
「…えっ⁉これっていつからだろう?」
突然気付いた事実で日向子の頭は一杯になってしまい先程迄のルンルン気分は吹き飛んでしまった
「え?これ誰に聞いたら良いのかしら…とにかく一旦ゴルドに戻らないと‼」
日向子はとにかく心当たりを求めてゴルドに戻るのであった
。。。
バサッ、バサッ、バサッ、
「キメちゃーん、シルちゃーん‼」
突然執務室に飛び込んで来た日向子に書類に追われていたシルグとキメがビックリする
『な、何事だっ‼…主殿…か?』
《ラクル殿に何かあったのか⁉》
二人はラクルに異変があったのかと身構えた
「私、心臓が動いてるんですけど‼」
《『!?』》
二人共に(今さら!?)な感じで日向子を見つめた
『…よもやと思うが気付いていなかったのか?』
《いやいや…シルグ様、幾ら主が鈍いからと言ってまさかそんな…ハッ⁉》
キメはそこまで言って日向子の頬が膨らむ気配に気付いたが時既にお寿司…遅し、お冠な日向子が背後に仁王立ちしていた
「…悪かったわね、鈍感で。」
ギンッッ‼
《…バブゥ♪》
『キ、キメッッ⁉』
シルグは突然赤子の様になってしまったキメを見て衝撃を受けた
キメは日向子の逆鱗に触れ幼児化されてしまったのだ
「…シルちゃん?」
シルグは日向子の射殺す様な視線を受け戦慄する
『ま、まぁそう言う事も多々あるだろうなっ‼主殿は至極まともな疑問を持ったと言えるぞ⁉』
…もう自分で何を言っているのか分からない位に動揺しているシルグを他所に日向子は再度問い質す
「…どうして心臓が動いてるのか、説明して?」
『お、おぅ‼勿論だともっ‼』
シルグは日向子の不興を買わない様に慎重に説明を始めた
『日向子はラクル殿に倒され一度死んだ時を覚えておるか?』
「うん。当たり前じゃない」
『その時キメとワシがお互いの能力や細胞を渡して無事復活したであろう?』
「うん、シルちゃんとキメちゃんには本当に感謝してるわ」
『…その時からではないのか?』
「…何が?」
『ドン臭…い、いや⁉その時から主殿には「竜核」が宿っているのだぞ?』
「竜核?」
日向子の疑問は尤もだった
鼓動がいつの間にか再開している事を聞きに来たのに唐突に竜核が宿ったと言われてもピンと来ない
「…その竜核って何?」
『そうだな、簡単に説明すると我等ドラゴンの心臓だな』
「えっ⁉じゃあ…」
『まぁある意味ワシと主殿は同族になっているな』
「…マジ?」
『マ…何⁉』
「え、じゃあ私はこの世界にゾンビとして転生して死にかけて竜になっちゃったの?」
『…まぁ厳密には竜ではないが人の体で竜核を持つ希有な存在ではあるな』
「。。。」
漸く日向子にも合点がいった
良く考えれば狂犬病騒ぎの時にラクルが治療の為に能力を使い過ぎて枯渇してしまったのに
日向子には全く影響がなかったのだ、それは始祖と同等の力を得た筈のラクルと比較しても
尋常ではない程の能力値だったのだ
「そっか…そう言えばキメちゃんと同じ力使っても全然何ともなかったのは私に竜核があったからなのね?」
『うむ、そうなるな。加護の力を使える段階で気付いていたと思っておったから言うのが遅れて申し訳ない』
「ううん、私こそゴメンね?これでスッキリしたわ」
『そうか、それは良かったが…もう少し詳しく聞きたいのであればドラコニアに行くと良いぞ
ドラコニアにいる「長老」に話を聞けば竜核や様々な事が分かるだろう』
シルグはこう付け足した
「「長老」さんね、うん。ラクルさんの容態が落ち着いたら行ってみるわ」
『そうか、ではワシから連絡を取っておこう』
「ありがと、じゃあラクルさんの所に戻るね‼」
嵐の様にやって来て嵐の様に去って行った日向子をシルグは遠い目で見送った
《バブゥ♪》
『し、しまった‼キメを元に戻して貰うのを忘れておった‼』
指を咥えキャッキャとはしゃぐキメをあやしながらシルグが日向子の後を追ったのは言うまでもない
《…此処は?》
キメが正気に戻ると周囲には笑いを堪えたワーウルフ達やラクルが肩を震わせていた
《キ、キメ殿。こ、この度はさ、災難でしたな‼プッ‼》
〈ひ、人の不幸を笑うでない‼〉
キメはお姫様抱っこでラクルの居城に入城し、赤ちゃんプレイさながらの醜態を晒す羽目になったのである
キメの受難は暫くバンパイア領内の笑い種として語られる事となる
憐れ、キメ。




