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ゾンビーナ!  作者: とれさん
220/378

220 死の軍団、出撃‼


バチルスの号令で一斉に動き出す不死の軍団がとうとうバンパイア領への進軍を始めた


数万の師団の中央にはデスナイト、そして更にその中にチェスボードの様な盤を前にしたバチルスが座している


一糸乱れぬ行軍はバチルスの前にあるチェスボードによって実現している


数千年前、不死のバンパイア族と対等の力を得る為に先代の王バチルシは異国から来たという呪術師と契約を交わした


「これを兵達に与えれば不死の軍団が出来るのだな?」


〈はい、我が一族に伝わる秘薬にてバンパイア族にも引けを取らぬ軍団が出来ましょう〉


「…父君、この者は本当に信頼出来るのですか?」


最初生前のバチルスは異国から来た呪術師に懐疑的な目を向けていた


「バチルス‼これは王命である‼」


「…はっ。」


「では早速兵達に与えよ‼」


〈…ですが不死の軍団を動かすには…〉


「分かっておる‼我等もその秘薬を飲まねばならぬのだろう?」


〈御意、〉


「さぁバチルス‼我等の勝利の為に‼」


先王バチルシはバチルスと共に秘薬で満たされた杯を掲げた


(フッ、今思えばあの秘薬が諸悪の根源であったな…)


特製の馬車の上でバチルスは昔を回顧する


秘薬を飲んだバチルシとバチルスはその場に倒れ込む

眼下に整列し、号令と共に秘薬を煽った兵士達も同様に即死であった


その場に立つ者、それは異国から来た呪術師1人のみだった


〈…ククク…愚かな人間達め、我が怨みを晴らす為の傀儡となり蘇れ‼〉


呪術師が呪詛を唱えると倒れていた兵士達が一斉に立ち上がる


肉は腐り落ち、腐臭を放ちながらボタボタと辺り一面を覆う


(うっ…こ、これは?)


バチルス達も此処に至って漸く呪術師の本当の目的を知る事になる


〈これはこれは…どうですかな?バチルシ王、バチルス殿下。

死してデスナイトとなったご気分は?〉


(貴様…謀ったのか‼)


バチルシは激昂して呪術師に剣を振り上げるがそれ以上動かせない


〈諦めなさい。貴殿方は既に我が傀儡、逆らう事など出来ませぬぞ?〉


薄ら笑いを浮かべバチルシ達を嘲る目を向ける呪術師


(クソッ‼何故この様な策を…)


〈フフ…我はバンパイアの始祖に追われし血族、デボン。唯一の生き残りよ‼〉


(何だと?)


バチルシはバンパイア族を駆逐するという気持ちで平常心を失い異国の呪術師と称するデボンの甘言に嵌まってしまった


だが蓋を開ければデボンはバンパイア族の始祖に追放された一族の生き残りだったのだ


〈もうお主達は我に逆らえず只始祖達一族を殲滅するだけの兵なのだ‼アッハッハッハッ!〉


呪術師デボンは更に呪詛を重ねると兵士達からこぼれ落ちた腐肉から12体のデスナイトが姿を現した

デスナイトの周囲には土と腐肉が混ざり出来上がったゴーレム達、数体の骸骨が合わさり巨大化したスカルキングの姿も見てとれる


〈ハハハッ‼貴様達だけでは寂しかろう、歴代の王達も我が秘術により甦らせてやったぞ?〉


呪術師デボンは正に今、有頂天の極みにいた


…シュッッ‼ザンッッ‼


〈グワッ⁉…バ、バチルス…何故だ…何故貴様は我に抗え…る…〉


…ブシュゥ~…ドサッ、


呪術師デボンは血を吹き出しながら絶命した


(…貴様の企みなど既に知っておったわ)


バチルスは右手に光る指輪を煌めかせる


(愚王である父君は全く知らなかったがな、我は貴様の策略に乗った振りをしたまでよ)


(…バチルス、貴様…)


(父君、我はこの不死の軍団を以てバンパイア族を滅ぼします。どうか上皇となり我を見守って下さい)


(…ワシに王の座を譲れ、と?)


(この不死の軍団は我の命令でしか動きませぬ、そうなる様に呪詛を変えてありましたからね)


バチルスは歴代最高の策士であったのだ


父バチルシと密約を交わす呪術師デボンをも謀って内密に秘薬の配合を変えた

更にデボンの呪詛から免れる為に「反骨の指輪」という対呪詛用アイテムを作らせていたのだ


それもこれも幼き日、バンパイア族の目の前でかかされた恥辱を払拭せんが為


父を謀り兵と国民を巻き添えにして不死の軍団を手中に収めたのだった


ザッッ、ザッッ、ザッッ、ザッッ


(…フッ…我が積年の恨み、今こそ憎きバンパイア共に思い知らせてくれようぞ‼)


チェスボードの駒を巧みに操り不死の軍団はバンパイア領へと徐々に進軍していった


。。。


《斥候スカルより火急の報告‼バチルス王率いる軍勢が我が国に向かって進軍を始めたとの事です‼》


衛兵が慌てて知らせた報告にラクルは思わず立ち上がる


〈チッ、遅かったか‼〉


ラクルは全軍に迎撃体制を整える号令を発し侵略に備える


《主様にお伝えします‼》


デストピアの一件でラクルの下に常駐していたドラゴネットのドラが日向子達に報せる為に飛び立った


〈…領内に踏み入れる前に迎え撃たねばな…〉


ラクルが握る掌から骨の鳴る音が聞こえていた

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