204 家出少女?日向子 part4
バサッ、バサッ、バサッ、
「うーん…どうやって顔出そう?」
日向子はゴルドへ向かう道中で悩んでいた
「やっぱり「ただいまー」で良いかな?軽過ぎて叱られないかな…」
突然飛び出して音信不通、これがどれだけ迷惑な事か気付かない程若くはない日向子はいつも以上にゆっくりと空を飛んでいた
…ビュウッ‼
ボンヤリ言い訳を考えながら飛んでいた日向子に突如突風が吹き付けバランスを崩して墜落した
ヒューーーーー…バサッ、バサッ‼
「ふーーっ‼危なかったぁ~…」
危うく地面と激突しそうになったがギリギリでバランスを取り戻しして羽ばたき軟着陸が出来た
。。。「あっ!?」
危機一髪を回避して一息ついた日向子の前には腰に手を当てたキメとシルグが仁王立ちしていたのだ
「…た、ただいま?」
言い訳など何処かに吹き飛んでしまった日向子は取り敢えずこの言葉を絞り出すのが精一杯だった
『…主殿…』
《いいからこっちに来い‼》
日向子はキメに首根っこを掴まれてゴルド城へと連れ戻されたのである
。。。
「…ごめんなさいっ!」
領主の執務室で正座説教を受けていた日向子は正式な土下座で二人に謝っている
ワフゥ‼ガルルル…
人語をマスターした筈のブルピットのシロは話すのも忘れて日向子の頭をかじっている
…ダカダッ、ダカダッ、バーン‼
独特な蹄の音が近付いてドアが開けられ姿を見せたのはスレイプニルのニルだった
《日向子様‼ご無事だったのカ⁉》
ニルも相当興奮していたらしく人語が怪しくなっている
「皆…ゴメンね?」
日向子がソッとシロに触れると瞬時に腹這いになった
…ナデナデ…
ワフゥ☆
《!!シロは甘いっ!!》
キメは既に堕ちたシロを叱り付けた
《…ゴメン…》
キメに叱られ直ぐに起きたシロの尻尾はダランと垂れ下がった
『…まぁ良いではないか。無事に帰って来たのだし』
シルグが激昂するキメを宥めた
《ですがシルグ様…》
シルグは言葉を続けようとするキメを手で制す
『主殿はずっと働き詰めだったのだ。その上領主として重責を背負わされた、少し疲れていたのだ』
「シルちゃん…」
日向子はシルグの気持ちに胸が熱くなっていた
『主殿、此処はワシらで処理しておく。だから今度は正式に休みを取ってくれ』
…ワフゥッ⁉
《シルグ様っ⁉》
シルグの予想外の言葉にキメもシロもニルもビックリした
「…良いの?」
『うむ。その代わり幾つか条件を呑んでくれ』
シルグは即座に条件を出す
・連絡は取れる様にしておく事
・休みが明けたら戻る事
・戻ったら今後は突然いなくならない事
「…勿論よ‼ありがと、シルちゃん‼」
日向子はシルグに抱きつきキスをした
!?グルルルルルッ⁉
《あっ⁉ズルいっ⁉》
《ほえっ⁉》
日向子の行動にシルグ以外は全員混乱と嫉妬をした
『あーーー…ゴホンッ‼では気をつけて行くのだぞ?』
「うん‼ありがと‼」
日向子は喜んで出掛けて行った
《…シルグ様?もしかして…》
クゥ~ン…
ヒヒーーーンッ‼
『あれは偶ぜ…ガフッ⁉』
言い訳をしようとしたシルグの鳩尾にニルの蹄がめり込んだ
嬉々として飛び去る日向子を余所にゴルド城の執務室では嫉妬による大戦争が勃発していた
。。。
バサッ、バサッ、バサッ、
「えへへー、今度はお休み貰って来ちゃった♪」
いきなり飛び去ってしまった日向子をマシラ達は残念がっていたが半日も経たずに戻って来たので大喜びしていた
〈えっ⁉大丈夫なのかい?〉
斉藤もまさか戻って来るとは思っていなかったので驚きが止まらない
「うん。もう少し斉藤さんの話も聞きたいしマシラちゃん達も可愛いしね」
日向子と斉藤の会話を遠巻きに見ていた小マシラ達を手招きするとキャッキャと鳴きながら日向子に飛び付いた
こうして家出改め2度目の休暇がスタートしたのである
ーラクルの居城ー
〈…そうか。分かった、日向子への連絡は我が責任を持って繋ごう〉
シルグから言付かって来たニルの要請でラクルが繋ぎを取ってくれる事を確約してくれた
〈温泉地を勧めた我にも責はあるからな…〉
ニルはラクルに一礼すると教えて貰った温泉地へと駆けて行った
(しかし日向子の下には珍しい者達が集っているな…)
ブルピットやバハムート、ドラゴネットはいざ知らずこの世界に4体しかいない内の一体、シルグ。
数々の細胞を取り込み成長したキマイラ、ユニコーン、そして先程迄いたスレイプニル
長い時を生きたラクルでさえも言い伝えでしか聞いた事のない神獣や魔獣が仕えている
人間だけに限っても各国の王とも既知で普通の女性では考えられない程の顔の広さだったのだ
〈…フッ、だが集う気持ちは分からんでもないな〉
ラクルも日向子の意外性に強く惹かれていたのだった




