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ゾンビーナ!  作者: とれさん
203/378

203 家出少女?日向子 part3


日向子は今マシラの里にて異世界初の同郷、斉藤さんの身の上話を聞いていた


「…そうなんですか、バンパイアに襲われて…」


〈うん。だけどそのバンパイアは直ぐにボクが異邦人だと気付いてね、

擬きじゃなくてちゃんとしたバンパイアにしてくれたんだ〉


ラクルに聞いた話ではバンパイアと擬きの違いはお互いの血液交換にあると言う


一方的に血を吸われた場合、バンパイアウイルスに侵された人間は思考レベルがゾンビ並みで

ただ動く者の血を欲する「擬き」となり吸った本人が被害者に血を与えると

ちゃんと(?)したバンパイアになるそうだ


〈事後承諾みたいだったけどそのバンパイアも良い人でね、良い友達さ〉


斉藤さんはバンパイアにされた事を恨んではいない様だ


〈あぁ、この姿にした張本人なのに恨んでないのか?って顔だね

ボクは逆に感謝しているんだよ〉


「えっ?何でですか?」


〈だって普通のオッサンのまま此処に落とされてそれでもメゲずにやって来たけど…

やっぱり特集号能力には憧れるでしょ?日本人として〉


「あはは…」


日向子は自分もそんな時があった事を思い出し苦笑いしていた


(…斉藤さんって意外と若いのかしら?)


言葉の端々に異世界だのチートだの挟んで来る斉藤さんに日向子は年寄り感を全く感じなかった


「あの…」


〈ん?何だい?〉


「失礼ですけどお年は…」


斉藤さんは日本人的なやり取りに思わず微笑んだ


〈幾つに見える?とか言うオヤジギャグは言わないよ?ボクは享年28歳だよ〉


「…えっ?」


〈あはは…享年って言ったのが滑っちゃったかな?バンパイアに襲われた時、ボクは28だったんだ〉


驚いたのはソコじゃない‼と日向子は淋しくなった彼の頭部をチラ見した


〈日向子ちゃんは?〉


斉藤は今日1の地雷をガッツリ踏み抜いた


この世界にゾンビとして転生して早4年余、24で…おっと、誰かが訪ねて来たようだ…


「あはは‼レディに年齢を聞くのはマナー違反ですよ?」


日向子は少し怒気を孕んだ口調で斉藤の質問を躱した


〈おっと、これは失礼。でも二十歳ソコソコ位だよね?なのにこんな世界に飛ばされて…〉


自分の境遇と重ね合わせたのか斉藤は涙ぐんでいたが日向子は別の理由で(この人は信用出来る人だ)と確信していた


決して若く見られたからではない、と信じたい


〈今度は日向子ちゃんの話を聞かせてくれるかい?差し支えない範囲で構わないからさ〉


日向子は前世で死んで気付いたらゾンビとしてこの世界で生き返った事、ピレネー村の優しい村人達との交流や神獣達との出会い等をかいつまんで話して聞かせた


〈そっか、日向子ちゃんも波乱万丈な生き方を強いられて来たんだね…気持ちは分かるよ〉


斉藤はウンウンと頷きながら日向子の話を聞いているが日向子にとってこっちの世界での生活はそれほど厳しいモノではなかった


確かに色んなハプニングはあったが村人達や神獣達に囲まれて前世では出来なかった事も沢山経験出来た


今は領主だのしがらみが多くなって飛び出して来てしまったがやっぱり皆日向子の家族で第二の故郷だったのだ


「…なんか皆に会いたくなっちゃったなぁ…ゴルドに帰ろうかしら…」


日向子の呟きに斉藤はハッとした


〈えっ⁉ゴルドに?…もしかして日向子ちゃんはゴルド領の領主さんじゃ…〉


「…あはは、バレちゃいました?」


日向子は何気に話さなかったがどうやら日向子の事はバンパイア族でも話題にはなっているらしい


〈バレちゃったも何もラクル王と互角にやりあって平和をもたらした人間がいるってのは超有名だよ‼

しかも元老院とか悪い奴らをこてんぱんにしたってのもね〉


斉藤は噂は聞いていたがまさかこんなうら若き女性が数々の武勇伝を持つとは思ってもみなかったのだ


〈噂じゃもっと凶悪でゴツい女傑だって事だったけどまさかこんな美人さんだったとはね〉


誉められてるのか貶されてるのか判断しにくい状況に日向子は苦笑いを返した


〈…日向子ちゃんは知らないだろうけど一旦ゴルドに戻った方が良いと思うよ?〉


「え?何でですか?」


〈君の配下の魔獣や神獣達があちこち必死になって探し回っているって話だよ?

確かラクル王の下にも何回もキマイラが訪ねて来てるって話だったけど…マズイんじゃないの?〉


斉藤の話を聞いて日向子は悩んでいた


「でも…私のわがままで飛び出して来ちゃったから帰り辛いな…」


日向子の言葉に斉藤は即座に返答する


〈気まずいと思うなら早く帰った方が良いよ、時間が経てば経つほど帰り辛くなるからね?〉


斉藤の正論に日向子は反論も出来なかった


「…じゃあ…一旦顔だけでも出して来ます。そしたらまた此処に来ても良いですか?」


〈うん。ボクも色々話が聞けるし大歓迎だよ‼〉


斉藤の快諾に日向子に笑顔が戻り元気を取り戻した様だった


「じゃあちょっと顔出して来ますね‼」


日向子は翼を広げるとそのまま空に舞い上がった


〈…飛べるんだ?凄いなぁ〉


斉藤は翼を持つ日向子を眩しそうに見つめていた

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