192 情報、ゲッ◯だぜ‼
昨日の入れ違い投稿のお詫びにもう一話追加で投稿します
「あひゃっ!?」
ゴルド城内取調室で男はキメの尋問を受けていた
どんなに訓練された間者であっても日向子とキメの脳内スキャンにはまるで意味をなさなかった
《では本名・所属・目的を答えて貰おうか?》
キメの指先から出た触角がウネウネと動く
「…ひゃいっ⁉…私の名前はザザ。エレモス国ヨウム領の特殊工作員三の矢の1人。
ゴルド領内に潜入し破壊工作を大規模に行えという命で実行しました」
「えっ?エレモスなの?じゃあ国王の差し金って事??」
《答えろ》
「あばば⁉…国王ではなくヨウム領アービス様のご命令です。」
《何故我らの邪魔をする?》
「…ヨウム領ではゴルドの新体制により物流と人口の大半が失われ…
ソコでゴルドの破壊工作を行い物流を無くす事でヨウム領を再び交易の中心とする…との事です」
日向子は呆れ半分納得半分、と言った表情だ
「そりゃ確かに急速に発展したけど自助努力もしないで責任を丸投げとか考えが古すぎるわね」
《で、どうする?この男だけでは追求も難しいだろ?》
キメは証拠集めを提案する
「そうねぇ…元老院の時と同じ様にじわじわ洗脳して寝返らせる?」
《恐らく時間切れになるな、今回は調べるべき関係者が多すぎる》
「でも正攻法じゃ無理よ?多分」
《じゃあ…》
「めには目を、歯には歯よ‼」
力説する日向子にキメはとても嫌な予感がしていた
ーヨウム領某所ー
「そうか!破壊工作は予定通り完了したか‼」
アービスは勢い余って立ち上がりながら間者の報告に喜んだ
「はい、工業地区は約半分が焼失し機能不全に陥っております。それに伴い物流が停滞し他の分野にも影響が出始めております」
「よーし、良くやった!誉めて遣わすぞ!ザザよ!」
「…有り難き幸せ」
「引き続き人員を増やして徹底的に破壊するのだ!あと何人必要だ?」
「…は。今回は大規模に工作を行いたいので間者全員を投入して頂きたく存じます」
アービスは一瞬考えたが即ザザの進言を受け入れる
「よし、分かった!では間者全軍を以てゴルド領内を壊滅状態に陥れるのだ!」
「はっ!」
ザザは一礼するとアービスの了承印を携え退室した
「よぅザザ‼今回のゴルド領工作は大成功だったんだって?」
間者達の隠れ家に入るなり同僚が皮肉を込めてザザの肩に腕を回す
「あぁ、お前にも見せてやりたかったぜ?」
「…チッ、たまたま上手くいったからって図に乗るなよ?」
「ハハハ、次は全軍で破壊せよとの仰せだ。お前にも名を挙げるチャンスは転がっているさ」
「…フンッ‼次は俺の番だぜ‼」
同僚は毒づくとザザの下を離れた
…コツコツコツコツ…ガチャ…
《…ふぅ~、流石に転身は疲れるな…》
キメはザザの姿から元のキマイラに戻り更に人型に変態する
《主は獣使いが荒すぎるな…》
そう、日向子の作戦はキメの能力によるコピー体による逆潜入だった
《さて、休む前にもう一仕事しておくか…》
…ザワ…ザワザワザワザワザワ…
キメの体から大量の蜘蛛が沸き出てくる
(このアジトと…アービスの居城と…さっき行った場所か、取り敢えずは)
キメの体から沸き出た蜘蛛達は三方に分かれて隙間という隙間から出て行った
翌日何食わぬ顔で隠れ家を出たザザ(キメ)はアービスの承認印を掲げ全ての間者を召集した
「アービス様のご命令だ。我々はこれよりゴルド領に潜入し破壊工作を行う
念の為に細かい取り決めをするが決して忘れるな‼符丁が合わない者は容赦なく殺せ‼」
「「「「「「応‼」」」」 」」
(…良し、これで全員か)
キメはザザが言いそうな言葉を選んで上手く誘導していく
「これより仲間を見分ける為の印を体に仕込む。1列に並んで指示を待て‼」
そう言うとザザ(キメ)は小ぶりの天幕に入る
「良し。入れ!」
ザザ(キメ)の誘導に従い1人ずつ天幕に入り…一瞬で洗脳されて天幕から出て行く
声も何も発しない為にキメが中で洗脳を行っているとは誰も気付かない
こうして小一時間程で間者全員の洗脳を終えてしまったのだった
《良し。では一旦解散‼》
「「「「「はっ‼」」」」」
様子を見ていたアービスも「流石間者達だ、一糸乱れぬ統率力だな‼」等と間抜けな解釈をしてほくそ笑んでいるだけだった
「ザザ様、これがアービス達反対勢力のメンバーです」
「これはこのアジトの見取り図です」
「ここ数年の裏取引が此処に。」
「ゴルド襲撃の計画はこれです」
間者達は自分達が洗脳されている事もザザがキメだと言う事も知らずに様々な機密情報を集めて来る
「良し。これで準備は整った、明日ゴルドに向けて出立するぞ‼」
キメは全ての証拠を集め終わりいよいよゴルドに戻る決意をしたのだった




