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ゾンビーナ!  作者: とれさん
191/378

191 発展の影で

191話と190話が入れ違いになってしまっていたので訂正しました


バンパイア族とゴルド領の交易は巨大な市場を生み出し隣国のエレモスにも大きな経済効果をもたらしていた


日向子はゴルド領を独立国家としてではなくエレモス国の自治区として条約を締結した為に巨額の税収が舞い込んで来たのだ


今までであれば国境と検閲があったエレモスとゴルドは同一国家としていずれも廃止した為に物流の加速がめざましかった


エレモス領からの農作物、ゴルド領からの鉱物資源や工芸品の流通は国だけでなく一般市民達にも益をもたらしていたのである


「いやぁ、ゴルドと繋がってウチの商売は右肩上がりよ‼」


時流の波に乗って大儲けしている商人は日向子の政策に感謝しきりである


「オラん所の作物も高く買い取って貰えてホントゴルド様々だべ」


農作物の需要も広がって農家達も信じられない位の特需に沸いていたのだ


「これもう他の国から仕入れる必要がなくなっただろ、無課税部分も多いし考えたら他国の品が高過ぎたんだよな」


酒場で盛り上がっているエレモス市民に混じって国民感情を探っている反対勢力の間者達はこの状況をどう報告しようか悩んでいた


「ゴルド領主の政策は市民の受けが良すぎて反論が聞こえて来ない…これをアービス様にどう伝えればお怒りを買わずに済むのだ…」


「…誤魔化しても露見するからな、お叱りを覚悟で正直にお伝えするしかないだろうな…」


市民の不満を集めて主の都合の良い報告をしたい間者達だがそのような話は一切入って来ないのだ


そもそも新領主である日向子は自身に富を蓄えようとしていない


領内や特区で入った利益は必要経費を除いて全てを復興支援の返済と領内の発展に充てていたのだ


名君と呼ばれた過去の王達ですらそこまでの献身はしていない


この献身が領民にも伝わっているからこそ日向子人気は不動のモノとなっているのだ


更にバンパイア族から伝授された機械文明は一般市民の生活を徐々に向上させつつあった


クロノグラフ〈時計〉による時刻の設定は労働者達のQOLを大幅に向上させ

「日が暮れたら終わり」というアバウトな労働時間が定時上がりに変わった事で

消費の向上が顕著に出たのである


物流に関しても日向子が伝えた蒸気機関の概念をバンパイア族の研究者が具現化し

蒸気機関車を開発、貨物輸送に革命が起こっていた


軌道設置や車両建設等にも雇用が創出されそれに伴う飲食産業や小売業、ありとあらゆる分野での活性化が見られていたのだ


ゴルドが栄えれば当然衰退する所は出てくる


ヨウムは一角に過ぎない、と如実に分かるのが他国からの人口流入である


日向子が復興に着手した段階で100人足らずだった人口は今や一万に届きそうな勢いで増加を続けている


この人口流出による税収減はヨウムだけでなく他国にもダメージを与えていた


その最たる領地がヨウムで今や日向子は逆恨みの対象になっていたのだった


そんなある日、ご信頼ゴルド領内で不審火騒ぎが起こった


火元はミグル統括の工業地区の一画でもし以前の建築物であれば被害は甚大なモノとなっていたレベルの付け火だった


幸いにも新しく区画整理したエリアは全て鉄筋コンクリート製に建て替えられており類焼を免れたのだ


《火元に油の匂いと特定の人間の匂いが残っていたが…追うか?》


キメの嗅覚は恐らく犯人の匂いを嗅ぎ付けていたのだ


「うん、お願いね。シルちゃんと私はバハムート達が管理してる出入国リストから不審人物を探ってみるわ」


《分かった》


日向子はこの事態をある程度は想定していた


「出る杭は打たれる」はどうやら次元を越えても共通の様だ


日増しに増加する人口に対して日向子が考えついたのは「住民票制度」と「タイムカード」だった


転入者は基本情報を記入しないと居住権を得られない

そして商売等で一時的に入領を希望する者にはバンパイアの技術を応用したカードを発行していたのだ


クロノグラフによる入領・退領時間、日時のチェックと住民カード、入領カード共に

日向子達(主に神獣・魔獣)が関知出来る特殊な「香料」が塗られている


区画毎に違う香りにより偽造を防ぐと共にある程度嗅覚による追跡を可能にしたのだ


((…やはりこの工業施設に資材を納入した者が退領しておりません))


バハムート達の捜索で怪しい人物が炙り出された


「じゃあ早速記載されている宿屋とその他の施設に急行、いたら捕縛して頂戴‼」


((はっ‼))


バハムートとドラゴネット達が一斉に飛び立っていく


『まさかここまで短時間に身元が怪しまれるとは思ってないだろうな』


シルグは日向子の考案したセキュリティに感心しているが当の日向子は不満げだった


「GPSとか他のセキュリティも出来るんだけどな、向こうの世界じゃ」


日向子の言葉を聞いてシルグは(どれだけ進んでいたんだ?)と驚くばかりであった


バハムート達の捜索よりも早くキメが1人の男を咥えて戻って来た


《こいつだ》


キメは男を放り投げて人型に変態する


「よーし、尋問タイムね」


心なしかウキウキしている日向子を見て見ぬフリをするキメとシルグであった

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