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ゾンビーナ!  作者: とれさん
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184 変わりゆく故郷


数週間後、帰省希望者達を乗せたユニコーン馬車がゴルド領内に到着した


ハク達のフルスピードなら3日程度で着くのだが馬車も乗員も無事では済まない為ゆっくり来たのだ


「あぁ、戻って来られたんだな」

「あの辺なんか全然変わってないわ」

「私達の家が残ってる‼」


避難者達のゴルドに抱く想いは様々だ


残念なのは地方に住んでいた避難者達の故郷へは未だに復興の手が回っていない


復興したとしても人口的に再び村へと戻るのには長い年月が必要だろう


「さぁ、皆さんには新しい家を用意してありますよ。元々の家がある方はどうぞお帰り下さい」


避難者は馬車から降りた住民達に住居の用意と当座の生活を保証した


「…日向子様、何から何まで本当にありがとうございます」

「貴方が領主じゃなかったら私達は二度とこの地を踏めませんでした…」


日向子は沢山のお礼を受けてまた照れ笑いをしている


「残念ですが人口が以前の百分の1程度になってしまった為元通りとはいきませんでした

その代わりゴルドは商業都市として復興計画が進んでます」


「いや、前の雰囲気より全然良いよ‼」

「兵隊さんやいかつい人が彷徨かない方が安心だわ」


どうやら元住民にも今の街作りは好評の様である


「少なくとも以前の様に力で侵略を受ける心配はしなくて良い様に交易に力を注ぎました

慣れる迄は違和感もあると思いますがご容赦下さいね」


「そんな事ねぇよ、よーし‼俺も何か商売を始めるぞー‼」

「私は料理が得意だから食堂でも開こうかしら?」

「夢が持てるなんてな、ありがとよ、領主様‼」


変わってしまった故郷への不安より未来への期待を持ってくれて日向子も嬉しそうだった


「それじゃ何か困った事があったらいつでもお城に来て下さいね」


そう言い残して日向子は城へと戻って行った


「キメちゃん、ハク達にご褒美あげてね。長旅になっちゃったしね」


《分かった》


キメはハク達を労う為に馬車に向かう


『主殿も領主が板について来たな』


シルグは日向子の手際の良さに感心していた


「えー?そんな事ないよ」


日向子は休んでいた間に溜まっていた書類に目を通す


『復興計画だけでなく住民達の事迄考えて行動するなんて一介の人間にはなかなか出来る事ではないぞ?』


「うーん…これも前の世界での経験が役立ってるわね。以前病室管理とかしてたから」


『聞き覚えのない言葉だが役立っているのであれば素晴らしい経験だったな』


「うん、そうね」


日向子はオペ看時代にベッドコントロール、所謂病床管理等も携わっていた

婦長が日向子の頑張りに応え様々な業務を経験させていたのだ


そこでは単純に人員の足し引きだけではなく患者のQOLや意見等も考慮して杓子定規ではない配置方法等も学んだ


それが今避難者達の事情も考慮した帰省方法に生かされていたのだ


(人生何処で何が役に立つか分からないモノね…)


日向子は経験を積ませてくれた婦長の顔を思い出していた


帰省した住民達は最初は生活環境の違いに戸惑いを見せていたが次第に落ち着きを取り戻し中には商売を始める者も現れた


旧王政時代は軍事国家として市民の仕事は主に軍需産業がメインだったが

今のゴルドは交易主体の経済都市として生まれ変わりつつあった


日向子は元避難者達に以前の仕事が生かせる製造業の就職を斡旋した

軍需に応えられるだけの堅牢さを兼ね備えた製品作りは他国にはない魅力になると考えたからだ


この世界で工業が成立しているのは軍事関連だけであった為に最初は不安視されたが

品質が均一な農業工具や元々の兵装備の一括生産は日向子の目論見通り他国からも注目され

ゴルドの工業製品は後に一大ブランドとして世に広まっていく事になる


ドルネが推し進める商業、ウシャ爺が開発する薬生産、旧ゴルド住民達が作る工業製品

太い三本柱が出来た事によってゴルド領内は急速な発展を見せたのである


ゴルド滅亡から約一年、日向子は領主として復興前よりも栄えた交易都市を作り上げた


「そろそろ私の役目も終わりね」


日向子はゴルドの隆盛をサポート出来て大満足だった


ーエレモス城ー


「こんにちはー」


「あっ‼これは日向子様‼」


相変わらず唐突にバルコニーから飛び込んできた日向子に衛兵が驚いている


「王様いますか?」


「国王は今城下にて視察に出られております」


「あ、そうなんですね?じゃあそっちに行ってみます」


日向子はバルコニーから飛び立って城下町へと向かった


「日向子様⁉」


国王の行列を見つけて降下を始めた日向子を親衛隊が見つけて思わず声を挙げた


「ん?日向子だと?」


国王がその声を聞いて上を見上げる


バサッ、バサッ、ストン‼


「王様、こんにちはー」


視察の為に作られた馬車は屋根がないタイプだったので日向子は馬車に直接舞い降りる


「うぉっと‼相変わらず急に来るな…」


国王は飛び込んで来た日向子に呆れ顔だ


「今日はお話があって来たんです」


日向子は国王のリアクションそっちのけで話始めたのであった

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