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ゾンビーナ!  作者: とれさん
181/378

181 緊急の依頼


テロンに起こされて階下に降りて来た日向子に男性は土下座をして頼み込む


「あ、貴方が日向子さんですか?どうか…どうか私の村をお救い下さい!」


「ちょっと…落ち着いて下さい。テロンちゃんお茶を出して」


「は、はい‼」


日向子は男性を椅子に座らせお茶で落ち着いて貰う様に促した


少しして落ち着いた男性に日向子は話をしてくれる様に頼む


「私は…私の村はゴルド領にありまして…」


「あ、その前にお名前を聞いて良いですか?」


日向子は矢継ぎ早に要件を伝えようとする男性を制して名前を訊ねる


「あ…これは失礼しました‼私はゴルド領の南方にあるデシャという村で農業を営んでいるナクルと申します」


「ゴルド領の…」


「はい。実は数ヶ月前、私達の村に変な病気が蔓延しまして…その病気は…」


「…ゾンビになったんですね?村人が」


「!?何故それを?」


日向子はナクルの話を聞く前におおよその話が見えてしまった


「…落ち着いて聞いて下さいね?今ゴルド王国はバンパイアとゾンビに襲撃され滅亡してしまっています」


「…何ですと?」


「失礼ですがナクルさんは何時村を出て此方に向かわれたのですか?」


日向子は努めて冷静に事実関係を調べていく


「…そうですね…村を出て少なくとも数ヶ月は経っているかと思いますが…それよりゴルドが滅亡したとは一体…?」


日向子は事実をどう伝えようかと目を瞑る

恐らく彼に絶望を与えてしまうだろう悲しい事実を


「では順を追って説明します。決して気落ちなされない様にして下さいね?」


日向子は前置きをしてから今まであった事を説明した


「…そんな…村が…国が既に滅亡したなんて…」


ナクルは日向子の言葉に頭を抱えて首を振る事しか出来なかった


「ナクルさんが何故此処まで来るのに時間が掛かったのかは分かりませんが

ゴルドは城も城下町も…周辺の村々もゾンビの蔓延によって滅びてしまったのです…」


日向子の言葉にナクルはただただ涙を流した


「私が…私が山の中で迷わなければ…病に掛かり倒れていなければ…グッ…」


ナクルは命がらがら村を出て何も持たず山脈を越えようと無謀な挑戦を試みた

山腹で高山病にかかり偶然見つけた洞穴で病と闘い這うようにして越境、

日向子に見つかる迄に数ヶ月をそれこそ命を削って移動したのだ


ただその努力は報われなかった


村は恐らくナクルが出た直後にゾンビにより壊滅、首都である城下町もほぼ同時期に滅亡していたのだ


だからこそ日向子はナクルを優しく諭す


「ナクルさん、貴方のせいじゃないですよ。あの時は誰も救えなかったんです

だからご自分を責める必要はどこにもありません。私はナクルさんだけでも助かった事が嬉しいです」


日向子が依頼を受けてゴルドに向かった時には既に村にはゾンビしかいなかった、

勿論若干名救えた命もあったがどこもかしこも人間1人がどうこう出来る状況ではなかったのだ


「…ナクルさん、良かったら私と一緒にゴルドへ帰りましょう」


「…ゴルドは…ゴルドは今どうなっているのですか?」


「ほんの僅かですが生存者はいました。救えるだけ救って今は城下町で新しい生活を始めている方もいますよ」


「…ですが…」


「勿論強制はしません。今でこそ帰省する方も増えましたが全体の3分の1位は未だエレモス領に建てられた仮設住居におられる方もいますしね」


もう元のゴルド、元の村には戻らない。

だが生まれ育った故郷をそう簡単には捨てられないのだ


「選択はゆっくりでも構いません。何年掛かっても構いません。もし戻りたいと願うならいつでもお連れ致しますよ」


「…ありがとう…ありがとうございます‼」


ナクルは日向子の穏やかな言葉に嗚咽しながら頷いた


「さあ、今日はゆっくり休んで下さい。人間睡眠と食欲がないとまともな判断も出来ないですからね」


ナクルは日向子の言葉に頷くと横になって直ぐ寝息を立てていた


身も心も疲れているのだ、今は何よりも休む事が一番だろう


「じゃあ何かあったら連絡して。私は避難所に行って様子を見てくるわ」


「はい、お気をつけて。」


テロンも日向子の言葉に感銘を受けていた


いつかは日向子の様に患者に寄り添える様になりたい、と強く思ったのだった


バサッ、バサッ、バサッ、


「あ‼人が飛んでるー‼」


エレモス領に設置された避難施設に近付くと子供達が日向子を見つけてキャッキャッと騒いでいる


「こんにちは、誰か大人の人を呼んで貰えるかな?」


日向子は大はしゃぎで駆け寄ってきた子供達に大人を呼んで来て貰える様に頼んだ


すると直ぐに子供に手を引かれた女性が日向子の下にやって来た


「これは…領主様、今施設長を呼んで来ますのでお待ち下さい」


女性は慌てて施設に走って行く


「ねぇねぇ、お姉さんが領主様なの?」


日向子にまとわりついていた子供が日向子に質問する


「あはは、うん。でも日向子で全然構わないからね?…そうね、ヒナお姉ちゃん、かな?」


「そっか、じゃあヒナお姉ちゃん、一緒に遊ぼ‼」


日向子と子供達は施設長が来るまで鬼ごっこをして遊ぶ事になった

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