18 テイマーというお仕事
日向子とゴメリはドルネ達商隊を引き連れ村に戻ってきた
「いやぁ、シロさん達は本当に従順ですなぁ。
ブルピットと言えば凶暴かつ群れるので危険度もトップクラスなのに…」
「えへへ、誉められたよ。シロ♪」
「ワォン」
シロ達の尻尾は千切れんばかりに振られている
「魔物を馬代わりに…か。これは上手くいけば商売になりますな」
「確かに牽かせたら馬より速いが…使い物になるのけ?」
「テイマー達に聞いてみないとですがね」
(…テイマーか…)
日向子は聞き慣れない言葉に首を傾げていると村の一角からウシャ爺が飛び出て来た
「待っとったぞ!って…ヒナちゃん⁉」
「この人達は道中魔物に襲われてたんですよ」
「おぉ、そうじゃったか。して薬品は?」
「…聞いちゃいねえだな」
ゴメリはウシャ爺を呆れ顔で見ている
「はい、ご注文の品はこちらに」
「おぉ‼では裏の倉庫まで運んでくれ」
「畏まりました」
ウシャ爺宅の裏で荷物の搬送が始まった
「さて、荷物も無事に引き渡しが出来ました。
先程のお礼も兼ねてお食事でもご馳走したいのですが如何ですか?」
「やったー♪」
「かたじけない」
日向子達は村にある食堂に向かった
「へい、らっしゃい‼」
「おじさんこんにちはー」
「お?ヒナちゃんじゃねえか、どうした?」
「今日はお客さんだよ、美味しいモノ食べさせてね」
「おぅ、任しときなっ!」
日向子は村人達のアイドル兼マスコットの様な位置付けにいる
魔物の襲撃を防ぐ守護神というだけでなく愛想も良いし明るいし飲ませれば半裸踊りをする程ひょうきんなのだ
この食堂のオヤジも隠れ日向子ファンである
「はいよ!お待ち!」
日向子達のテーブルには山盛りの料理がどんどん並べられていく
「あの、まだ注文をしていませんが…」
「ん?お前さんは?」
「先程日向子さんに魔物の襲撃から助けて貰ったドルネと申します」
「あ、そう。ヒナちゃんが来たら旨い物をてんこ盛りで出すのがウチのしきたりだ‼
文句があるなら他所で食いな!と言ってもこの村にゃ俺ん家しか食い物屋はねぇけどな‼ガハハ」
「あ、いやいや。文句をつけたいのではなくこの量を出されて…も⁉」
「ふぅ~、おじさん‼まだ食べてない人がいるのにお皿が空いてるよ?」
「おっと、こうしちゃいられねぇ‼あいよっ‼今直ぐ作るから待ってろよっ‼」
ドルネは開いた口が塞がらない
確かこの皿には5人前はあろうかという野菜炒めが載っていた筈だ
それがさっきのやり取りで目を離した隙に消えてしまったのだ
勿論消えた先は日向子の口の中が殆どだ
「モグモグ…ドルネさん、早く食べないと冷めちゃいますよ?」
「あ、あぁ…そうですね…」
慌ててフォークを握るドルネをゴメリが優しい目で見守る
(誰だってヒナちゃんの食いっぷりをみたらあぁなるべなぁ…)
ドルネは次々出される料理に懐の心配をしたが会計の段になって更に驚いた
普通の飲食店で一人前を頼んだ金額程度しか請求されていなかったからだ
「ヒナちゃんは永久無料なんだよ。俺達を救ってくれた恩人だからな‼」
白い歯を見せサムズアップをかます店主の目は大量の料理を作った疲労からか食材が底を尽きた悲しみからか明らかに窪んでいた
ーカント婆さんの家ー
「先程はご馳走様でした。で、テイマーという職業の話を聞かせて頂けますか?」
「そうですね…」
ドルネはここ10年程前から現れたテイマーと呼ばれる職業について日向子に説明をした
テイマー達は魔物の巣に入り卵なり赤子の魔物を獲って来ると世話をして飼い慣らすそうだ
成獣まで育て上げるとその魔物を使役して討伐を請け負い報酬を得る。
希に貴族のペットとして所望される場合もあるがテイマー毎雇える財力がないと飼育の関係上難しいらしい
「へー、そんな職業があるのかぁ…」
「はい。まだ人数は少ないし魔物も小型魔物が多いですがね」
「私もやろうかな?テイマー」
「あ、それなら私が窓口として依頼をお受けしますよ?」
流石商売人、ドルネはソコに金の匂いを嗅ぎ付けた
「少し考えてみますね」
「ではご決断されましたらご連絡下さい」
ドルネはそう告げて荷馬車があるウシャ爺の家に戻って行った
「…本当にテイマーってのになるんけ?」
ゴメリは不安げに日向子に問う
「シロ達のエサ代も工面しないとね、そろそろこの辺の魔物の数も少なくなって来ちゃったみたいだし…」
「凶暴な魔物だと危険があるんでねぇか?」
「さっきドルネさんが言ってた「運送」に比較的大人しい魔物を使うのはどうかな?って」
「成る程ねぇ…上手くいくべか?」
「さぁ?やってみないと分からないわね」
日向子はゴメリに荷役に使えそうな魔物の種類を教えて貰って捕獲する事から始めるつもりだった




