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ゾンビーナ!  作者: とれさん
171/378

171 侵入者、再び


((ラクル様‼北西部から侵入者が首都に接近しております‼))


ワーウルフがラクルに緊急連絡を報告する


〈…何者だ?〉


((は‼…それが…その…))


珍しくワーウルフが言い淀む


〈早く言え。〉


ラクルは語気を強めた


((は、ははっ‼…目視による報告だと…どうやらゴルド領主の様です‼))


〈…何だと⁉〉


流石のラクルもこの報告には面食らった


ラクルにしてみれば元老院の処断を終えた後それなりの和解金を積んで和平条約を結ぶ交渉をしようと思っていた


愚兄ドラクの様に無闇に侵略し、勝利を収めたとしてもバンパイア族の利となる部分がないのだ


領地を拡げた所で何の利もない侵略を仕掛けてしまった責任は王として負わなければならない


そんな矢先に相手側の領主が再び不法侵入して来たと言うのだ


〈…もしや…〉


((…はい。単身で侵入中です))


ラクルには日向子の考えが全く分からなかった


交渉もせずに単身敵地に乗り込むなど上に立つ者のする事ではない

しかも一度は死を以て撃退されているのだ


〈…一体何を考えている、ゴルドの領主よ…〉


ラクルは黒い羽を広げバルコニーから飛び立った


バサッ、バサッ、バサッ、


ラクルはワーウルフが指差した方角に飛行を続ける


〈…遭遇は一時間後程度か?〉


ラクルは遭遇に備え武装のチェックをする


…ィィィーン‼…ゴウッ‼


〈っ!?〉


突然前方から凄まじい速度で何かが通過し後から襲ってきた衝撃波でラクルは姿勢を崩す


「あっ⁉いたいた‼」


バサッ、バサッ、


その何かは陽気な声でそう言うとラクルの下へ近づいてくる


「どうも、ラクルさん。覚えているかしら?」


そう挨拶した人物は今ラクルが撃退すべく向かっていた筈の日向子だった


〈…馬鹿な?まだ距離が相当あった筈…それに…その瞳はどうした?〉


ラクルは対峙した日向子の変化にいち早く気付いて訊ねる


「あれから色々あってね。貴方に殺されたお陰でパワーアップしちゃった、って事かな?」


サラッと理不尽な事を言い放つ日向子にラクルの疑問は更に膨らんだ


〈…まぁ良い。俺は侵入者を排除するだけだ。〉


ラクルは思考を切り離し身構える


「あー、やっぱりそうなっちゃうかぁ…」


ラクルの戦闘体勢を見て日向子はやれやれ、と言った態度を示すが直ぐに身構えた


「まぁこの為に特訓したんだもんね、どの位通じるのかは知りたいわ」


…シュッ‼…カシュンッ‼


デジャヴュの様に乾いた音が空に響く


「…あぁ、成る程ね。武器でやられたんじゃなくて爪で抉られたのか…」


〈!?〉


確実に心臓を抉ったと思っていたラクルはあらぬ方向から聞こえる日向子の声に瞬時に数歩退いた


〈。。。〉


…カシュッ‼


〈!?〉


「えへへ、ビックリした?」


今度は広範囲に裂く為に腕を横に払ったが指先に当たった感触はなかった


〈…貴様…時空を?〉


此処に至ってラクルは気付く


対峙している相手も同じ能力を手に入れたのだと


「実戦で使い物になるかは不安だったけどね、どうやら大丈夫みたい」


日向子は微笑みながら手や足をグルグル回している


…カッ‼


「おっとっと、それも対策済みよ?」


ラクルは驚愕の余り体が硬直する


生まれて直ぐに実の母を手にかけた忌まわしき能力、バンパイアアイを日向子は躱すどころか反射して見せたのだ


〈それは…どこで…?〉


ラクルはやっとの事で瞳力の入手経路を訊ねる


「あ、これ?別に意識して手に入れた訳じゃないんだけどね、多分誰かの能力の集大成って所なのかな?」


よく見ればバンパイアアイと対を為す片目は金色に輝いている


「千里眼とバンパイアアイ、掛け合わせれば貴方の攻撃は防げるわ」


ラクルは日向子の言い放つ言葉をどうしても受け入れられない


忌み子として生まれ瞳力を使う度にトラウマを甦らせていたこの能力使いが他にもいる事などあり得ない、


ラクルは目の前に対峙する得体の知れない生物に全力でぶつかる姿勢を整えた


「あ‼ちょっと待って‼」


日向子は片手を前に突き出しラクルを制止する


〈…どうした?命乞いか?〉


そんな下位の存在ではもうない事はラクル自身が一番良く知っている


知った上で舌戦によるアドバンテージを取ろうと敢えて煽ったのだ


「あはは、そんな刺々しい事言わないでよ。今日は私、ラクルさんとお話がしたくてやって来たの」


〈話だと?愚兄を人質に交渉でもするつもりなら諦めた方が良い。煮るなり焼くなり好きにするが良い〉


ドラクの事を持ち出され日向子は申し訳なさそうに頭を掻いた


「ドラク…ドラちゃんは改心して霊能者として頑張ってるわ」


ラクルは目眩がしてグラリと体が揺れる


〈霊…能…だと?〉


突飛過ぎて今日一番の動揺を見せるラクル


舌戦で相手を崩す戦いなら日向子の圧勝だった


「あはは…そりゃ驚くよね?」


日向子も同情します、と言った態度でラクルを気遣うのであった

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