168 赤い瞳の秘密 part1
日向子はドラからバンパイアアイの事を聞こうと中庭で待っていたがひょんな事から廃墟にいたラクルの間者を捕縛していた
〈…確かこの方は「二の矢」ですね〉
「二の矢?」
〈はい、弟の間者部隊は三部構成なのです。「一の矢」は連絡、「二の矢」は斥候及び偵察、
「三の矢」は暗殺部隊となっています〉
「って事は?」
〈はい。この者も捕まった事は既に一の矢が弟に知らせに走っている事でしょう〉
「そっか。中々部隊構成が整ってるのねぇ」
〈こうなったのも弟が王になってからです。それまでは身分の高い者が独自に囲っていたのですが一元化したのです〉
ラクルは戦略面でも優れていると言う証だ
〈ただそのお陰で旧態依然を良しとする元老院や貴族からは目の敵にされてますがね〉
「そっか…あ‼ドラちゃんは休憩時間だったよね?この人はキメちゃんに預けて本題に入らなきゃ‼」
〈あ、大丈夫ですよ。少し長く休ませて貰う事にしましたから〉
「…何か悪いわね、ドラちゃん位しか聞く所がなかったのよ」
〈私に第二の生き方を与えてくれた日向子様の頼みです、喜んでお引き受け致しましょう〉
「ありがと」
こうして日向子とドラは「赤い瞳」の話に移行したのだった
。。。
〈と言う理由でバンパイアアイは発現率が低いのです〉
ドラは日向子に発現率の低さについて説明した
「成る程ねぇ、始祖からの隔世遺伝でランダムなのか…」
〈はい、なので近年のバンパイア族には発現し辛くなってきています〉
「ところで赤い瞳の能力なんだけど詳しく教えてくれる?」
〈そうですねぇ…正直眉唾物の様な話も足されていてバンパイア族も把握しきれていないのが現状ですが
「魅惑・支配・幻惑・透視」が主な能力でソコに更に個体差と言うかオリジナリティーが出ます〉
「ん?というと同じ「魅惑」でも違う種類になるって事かな?」
〈そうですね。力の差は当然ですがそれ以外に例えば魔物に対して強い能力になるとか個体差が出ていましたよ〉
「ドラちゃんは発現しなかったの?」
〈残念ながら。ですが弟は生まれた瞬間から発現し、何らかの個体能力で母親と産婆達を皆殺しにしてしまいました〉
「…えっ⁉」
〈実は…これは血縁の中でも知る者は僅かなのですが弟は望まれない子だったのです〉
「…世襲的に?って事?」
〈まぁそういう部分もありましたが…もっと血脈的な問題で…〉
ドラは思い出したくなさそうな顔をしてため息をつく
「あ、無理に聞かないから安心して?」
〈いえ、大丈夫です。それに弟を止める為に日向子様には是非協力したいのです〉
「え?ラクルを止める?」
〈はい。弟は元々バンパイア族の粛清を目論んでいるのです〉
ドラは自身が何故ゴルド王国に進出しようとしていたのかを説明した
ドラクはどちらかと言うと元老院側の思想を持ちバンパイア族による地上の支配を目論んでいた
元老院はドラクに甘言を用いて凋落し先ずは功績を上げさせラクルの対抗馬として育てようとしていたのだ
全く靡かないラクルよりも御し易いドラクを王にすれば元老院の傀儡として力を強める事が出来ると踏んだのだろう
だがドラクも黙って傀儡になる訳もなく元老院の命綱である薬師をゴルド攻略を理由に駆り出す事で人質を取った
まさか日向子達に薬師を奪われ自らもこうなるとは思ってはいなかったが
結果的に元老院は全てのカードを失った事になる
〈ですから弟は今頃粛清に向けて準備に忙しい筈で私の事は転ばぬ先の杖的に監視していただけでしょうね…〉
ドラはフッと息を吐いて更に続ける
〈弟は…亡き父と始祖の妹との間に生まれた不義の子、忌み子なのです〉
日向子はドラの告白を聞いて難しい顔をした
ラクルは近親相姦により生まれた始祖に近い能力を持った生まれてはならなかった子、と言う事だろう
「それで…まさかとは思うけど」
〈いえ、実際ラクルの出産に立ち会っていた産婆も母親も生まれた瞬間ラクルを殺す為に準備していたのです〉
日向子は押し黙った
忌み子が故に産み落とされた瞬間命を狙われ赤子でありながら皆殺しにせねば生き残れなかったラクル
「そんな事があったらバンパイア族に恨みを持つのは当然か…」
〈そうですね…ですが問題は生まれたばかりのラクルがどうやって皆殺しを為したか?という事です〉
「それは調査しなかったの?」
〈いえ、調査しましたよ。出産に立ち会った者は全員自害をしていました〉
「…ここで赤い瞳の秘密と繋がるのか…」
〈そうです。推測でしかありませんが弟は始祖と同等の「魅惑」の能力で命じたと思われます〉
「それは凄いわね…」
〈それだけではなくその時に時空操作能力が発現したモノと思われています〉
「どういう事?」
〈産婆達は恐らく産み落とされた瞬間を狙って殺す手筈だったでしょう。
ですがそれを回避して魅惑をするのは流石に不可能だと思われたからです〉
母体より産み落とされた瞬間に殺される予定だったとしたら受け手の産婆は防ぎ切れない
瞳の能力だけだと全員を魅了するには時間が足りないのだ
ドラは続けて憶測を日向子に語った




