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ゾンビーナ!  作者: とれさん
159/378

159 ドラクの誤算


((だ、旦那様ぁぁぁ~っ‼))


〈こ、こんな馬鹿なっ⁉な、何が起こっているのだっ‼〉


ドラクが悲鳴に気付き振り返るとワーウルフ達が銀色の雨を浴びて溶けていた


(あれ?もしかしてこの世界の人狼って弱点知らなかったのかな?)


その様子を天井付近の小部屋で観察していた日向子はキメ達に小声で確認していた


《俺は聞いた事はないな》


偶然とは言え日向子の元の世界で広まっていた人狼の弱点は本物だったのだ


((だ、だんなざばぁ…だ、だずげでぇぇぇ…))


ドラクと共に城内に踏み込んだワーウルフ達は抵抗する間もなく溶解してしまった


〈…おのれ…小娘がぁぁっ‼ゆ、許さんぞぉっ‼〉


…カタン…シャアァァァ…


〈?…グッ。。。グギャァァッ⁉〉


銀色の雨が降り止みドラクが怨嗟の雄叫びを挙げると今度は鼻を刺激する液体の雨がホールに降り注いだ


…ジュゥゥゥゥー‼


〈ガァァァッ‼ひ、皮膚がっ⁉皮膚が焼けるぅぅっ⁉〉


突然降って来た「ギョシャ液」 の雨に晒されドラクは体中から煙を出して揉んどり打っている


『…死にはしなそうだが想像以上に効いているな…』


ギョシャ液に懐疑的だったシルグも納得の効果を目の前で確認する


ギョシャ液、つまりニンニクエキスを全身に浴びたドラクは回避する事も叶わず焼け爛れた皮膚をダラリと下げ立ち上がる


〈ど、何処だ‼卑怯者共‼〉


ドラクは力を振り絞り叫ぶが返事がない


…シャシャシャッ‼…トトトスッ‼


〈グッ⁉〉


ギョシャ液の雨が止みドラクが立ち上がると今度は細い針がドラクを襲った


反射的に腕で受けたドラクは体の異変に気付くのが遅かった


〈ぎゃあぁぁあっ⁉〉


…ボトッ、ボトッ…


針を受けた両手が腐って地に落ちる


『…主殿の情報は有効だったではないか』


《あぁ、ここまで効果があるとはな…》


日向子はドラクを迎えるに当たって「工作」をしていた


先ずはワーウルフの弱点、銀を集めるに当たってウシャ爺に水銀の在処を訊ねた


水銀はウシャ爺の薬開発にも使われていて直ぐに用意が出来た


後はこれをどうワーウルフ達に使うかだが日向子はシャワーを使って浴びせる方法を考えついたのだ


銀製の武器も考えたが一網打尽にするには効率が悪いのと兵数ではとても太刀打ち出来ないのがシャワー方式と結び付いた


「じゃあギョシャもすりつぶして浴びせちゃおっか?」


これにより水銀とギョシャ液のシャワー罠が完成したのだ


《ただ浴びるだけでは効かないかも知れないぞ?》


というキメの言葉に賛同した日向子は町の加治屋に頼んで中空の針を作って貰った


中に水銀やギョシャ液を入れて打ち出せば少しは効果があると考えたのだ


《この針に死者の血液を入れてはどうだ?》


というキメの案も採用して合計3つの針が用意されていた


結果としてこの武器は全てにおいて効果を発揮しワーウルフは数を10数体迄減らしドラクも瀕死の重症を負っていた


〈こ、こんな馬鹿な…こんな…〉


両腕を失い力無く膝をつくドラクをキメが拘束する


残っていたワーウルフ達は主人を置き去りにして逃げようとしたが日向子の手によって屠られた


こうしてドラクの急襲は日向子達の大勝利で幕を閉じたのであった


。。。


((ラクル様、ドラク様が敵の手に落ちた様です))


〈…生死は?〉


((それは…分かりません…))


〈…そうか…下がれ〉


((…はっ。))


ラクルは目頭を指で抑える


別に哀しんで抑えた訳ではない


ドラクの失敗により元老院の気勢が上がる事を懸念したのだ


〈兄者達が戦闘に至った様な物音が聞こえなかったのだが?〉


ラクルが呟くとドラク達を監視していた間者がスッとラクルの脇に控えて報告をする


((は。ドラク様とワーウルフはゴルド城に突入、直後に悲鳴が聞こえ…静かになりました))


〈…では城内には何らかの罠があると見て間違いないな。それに薬師も城にはおらぬだろう〉


((は。恐らく…))


ラクルは目頭を抑えていた指を離しスッと前を見据える


〈城を攻めても何の意味もない。退くぞ〉


((しかし…ドラク様は…))


〈愚兄の為に兵を減らす事は出来ぬ。仮に攻めても薬師の行方が分からぬのでは攻める意味もない。退いて策を練り直すぞ。〉


((…は。))


ラクル達はドラクの失態を確認すると兵と共に撤退を決意した


「…あー、やっぱり退いて行くわね…」


日向子は城の高い塔からラクル達の動向を見つめていた


《私情で愚行を犯す程馬鹿ではなかった、と言う事か…》


「そうね、先発隊の状況から見て薬師奪回は無理と捉えたんじゃないかしらね。それと罠が張り巡らされているのもね」


日向子は敵ながらあっぱれ、と言った面持ちでラクル達の撤退を監視していた


。。。


〈グアァァァァッ‼腕が‼腕が焼ける様だ‼〉


拘束されたドラクは腐り落ちた腕の痛みを訴えていた

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