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ゾンビーナ!  作者: とれさん
153/378

153 間者からの報告

今年も終わりですねぇ



((ドラク様、やはり薬師はエレモス領に投獄されていた様です))


暖炉の薪が燃える光で照らされた薄暗い室内にガントスの声が響く


〈そうか!で、拐って来れたのか!?〉


この館の主、ドラクはガントスの連絡に小躍りして成果を訊ねる


((いぇ…我々が薬師を発見した時には既にゴルド領主の手により移送された後でした))


…ガタンッ‼


〈なら何故戻って来た!さっさと薬師を連れて帰って来い‼〉


ドラクは報告が何らかの成果を手土産にしているモノだと勘違いしていたので手ぶらで帰還したガントスを労う処か叱責したのだ


((…は。早急に。))


ドラクの私室からガントスの気配が立ち消えた


ーラクルの居城ー


…スッ…


((薬師はエレモス領よりゴルド城に連行された模様です))


〈…そうか。ご苦労だった〉


((途中ドラク様子飼いのガントスを見掛けましたが如何致しますか?))


〈フッ…そのまま気付かれぬ様に監視しておけ。手助けは窮地に陥ってからで良い〉


((はっ。))


ラクルは盃を傾け推敲を重ねる


(…ゴルド領主と言うのは確か我が屠った筈の女だったな…如何に蘇生したか分からぬが…)


あの日確かに致命の一撃を与えた筈の人間がゴルド領主になったと報告を受けた時

流石のラクルも驚いた。だが冷静沈着な彼の心に僅かに波紋が広がった程度だった


〈如何な下法で甦ったかは知らぬが再び屠れば良いだけの事。先ずは兄者のお手並みを拝見させて貰おう〉


黒曜石で造られた誰もいない広間に彼の声が静かに吸い込まれていった


ーゴルド城ー


『薬師をわざわざこの城に連れ戻ったからにはバンパイア族との一戦も近いな…』


円卓に座したシルグが少し緊張して話しだす


日向子達が薬師を移送して直ぐに始まった円卓会議はバンパイア族との一戦を想定した戦略会議になっていたのだ


《俺は敵の間者を見つける為暫く分散して警戒に当たる事にしよう》


キメは情報戦の重要さを説いて自身が担当をする事を買って出た


「そうね、キメちゃんなら蜂や敵に気付かれない生物を使って警戒が可能だわ」


日向子はキメの申し出を受け入れる


『ワシはバハムートとドラゴネットを指揮して城の周りを固めよう』


シルグは城の警護を受け持った


「じゃあ…私は遊撃で誰かが侵入したら対応するわ。その方が性に合ってるし」


実は日向子とキメは薬師を連行する際に1つ罠を仕掛けていた


この罠に引っ掛かれば最低でも間者が、上手くいけばドラク辺りが釣れるかも知れない


「住民達にはこの事実を公表して有事の際は避難壕に入って貰う事にしたわ。

流石に守りながら戦える程余裕はないと思うからね」


日向子達はゴルド復興計画にバンパイア族の襲撃を見据えた建造物を建設していた


万が一感染者が出た場合を想定した隔離施設付きシェルターだった


尚且つウシャ爺に税制の優遇を条件に対ゾンビ、対バンパイア化のアンチウイルス薬を至急作らせた


この薬は感染後数時間以内に服用すれば変態する事を防げるという及第点以上の薬となった


「今回は受傷による即死以外であればウシャ爺を中心とした医療体制が整っているし住民達の被害は最小限にしたいわね…」


日向子は領主らしい言葉を呟いていた


《バンパイア族もまさかこんな短期間でここまでの対策をされているとは思っていないだろうな》


キメは自分達が施した準備に満足気だった


「キメちゃん、油断しちゃダメよ?ラクルが別格だとは限らないんだからね?」


《そ、そうだな…ラクル級のバンパイアが複数襲って来たらこの程度じゃ安心出来ないな…》


キメの慢心を日向子は諫めた


『まぁだが住民達の安全を確保出来た事は素直に喜ぼうじゃないか』


シルグはキメをフォローしつつやれる事はやったのだから、と日向子を宥める


「そうね…私達の戦闘に住民達が巻き込まれない様に避難訓練とかもしておいた方がより安心かも」


日向子は未だ未知数のバンパイア族の侵攻に細心の注意を払う覚悟を決めていた


ードラコニア王城ー


『おい、ワイトはいるか?』


玉座の間に黒竜と共にラルドが現れた


『ラルドか。一体どうしたのだ?出産が近いのか?』


ワイトは黒竜を見て祝い事かと勘違いして声を掛けた


『そんな事で来た訳ではないぞ?日向子殿とバンパイア共の一件で話があって来たのだ』


『む?そうか。で、何の話があると言うのだ?』


『我々は日向子殿に恩義があるだろう?そこで我々も及ばずながら助力が出来ぬモノかと思ってな』


『ふーむ、助力か…だがシルグの話では絶対強者と言われるバンパイアの王は我々では相手にもならぬらしいぞ?』


『あ、いや何も直接戦おうと言う訳ではないのだ。それはシルグからも止められておる』


『では我々に何が出来ると言うのだ?』


『それは…賢いお前が考える事であろう?』


『相変わらず酷い奴だ、知恵もなく無手でここまで来たか…』


ワイトがラルドのノープランさに呆れていると黒竜が口を挟んで来た


『我が夫は毎回こんなモンですよ。ソコで私の出番です』


黒竜は自身の案をワイトに説明した


『…成る程。ラルド、お前は良い嫁を貰ったようだな』


『フフン‼どうだっ!』


『…別に威張る事ではないぞ?』


ドラコニア王城玉座の間に変な空気が流れたのだった

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