147 新たなる力 part2
ーゴルド王国近隣の緑地ー
『千里眼…とな?』
シルグは日向子の言葉に驚いて確認する
「うん、今頃ゴメリさん達どうしてるかなぁ?って思ったら急に視界が飛んでね、良く見たら神獣運輸の事務所が見えたの」
確かに此処ゴルド王国からピレネー村にある事務所なら千里どころではない距離はある
だが実際見えているのか記憶障害が起こって幻覚が見えているかの確認は取り様もない
「あ、今本当に千里眼なのか疑ったでしょ?本当なんだからね‼」
『!?主殿?もしや…』
「意識を集中すると対象者の考えている事が分かる様になったみたい」
(まさか…本当に?)
シルグは日向子の頭上に雷雲を形成し雷を落とそうとする
「こらっ‼シルちゃんイタズラはダメよ?」
『!?…まさか本当に千里眼を発現しているとは…』
千里眼には3つ(以上)の特徴的な能力が備わる
「遠視・予知・伝心」等がその代表例だか日向子にはそれが自然に発現していた
日向子の眼球が根こそぎ削り取られキメの細胞とシルグの血で再生されたからなのかも知れない
シルグがそんな事を考えている間にも日向子は様々な実験を繰り返している
基本キメやシルグが見せてくれた能力はほぼ出来る様だ
『まさかこれ程の能力委譲が起こるとはな…主殿の基本能力が高かった、と言う事だろうか?』
「あはは、シルちゃん。深く考えたって答えなんか出ないわよ?それよりもドラゴンの必殺技みたいなのを教えてよ」
日向子は基本楽観主義である
熟考しようが短慮だろうが結果は必ず出る
やってみてダメだったら戻れば良いのだ
『ふーむ…では風の加護の使い方でも教えようか』
「あ、これでしょ?便利よねぇ」
日向子は自身の体の周りに風の渦を纏わせる
『…は?』
「加護って考えは分からなかったから何となくイメージしたら出来ちゃった」
シルグは日向子との認識の違いが加護の使用は難しいと考えていた
そもそも加護という現象は実際誰かから受ける訳ではなくイメージ、所謂想像力によって生み出される曖昧な能力なのだ
そのイメージを固定化する為に「聖霊から加護を受けている自分」を想像するのだが
日向子はそのイメージでは発現しなかったのだ
「ほら、そもそも火球にしても火種や燃料がないのに出てくるでしょ?
という事は想像力が強ければ何でも出来るんじゃないのかな?って思ったのよ」
日向子は理論や理屈よりも実践で成果を挙げるタイプなのだ
《…迷惑を掛けてすまなかった》
そんな所に回復したキメがやって来た
「キメちゃん…私のせいでゴメンね…」
《何を言う、主を助けるのは配下として当然だろう?》
キメは、というよりキマイラはドラゴンとは違い群れで行動する生物だ
なので主従関係ははっきりしていて今回の件もある意味当然の摂理だったのだ
まぁキメの場合はその関係がなくとも助けただろうが。
『それよりもキメよ。主殿は我らの能力をほぼ受け継いだ様だぞ?』
《えっ?そんな事が可能なんですか?》
「やったら出来ちゃたんだから可能だったんでしょうね」
日向子は(やれば出来る子)に進化(?)していたのだ
「だから今後はキメちゃんとシルグさんを師匠として色々教えて貰いたいの。宜しく」
日向子は二人にペコリと頭を下げた
《そんな礼は無用だぞ?どうせ主の事だ、ラクルを倒しに行くんだろうからな。次は殺られない様にして貰わないと》
「サーセンッ‼」
キメもシルグもしおらしい日向子が珍しくてついついイジってしまっていた
。。。
『…まさかこれ程とはな…』
《…えぇ、これはもう種族を越えたとかのレベルじゃないですね…》
シルグもキメも日向子の技術吸収スピードに舌を巻いていた
「えっ⁉私何か悪い事したの?」
日向子は勘違いして下手に出ている
《いや、主の習得スピードが早すぎてシルグ様と驚いていたんだよ》
「え?じゃあ誉められてたの?」
『当然だ。短期間で我々の能力を習得しただけではなく掛け合わせてオリジナルを生み出すなど普通考えられないからな』
「やったぁ‼誉められちゃった♪」
((イチイチ可愛い主(殿)だな…))
キメもシルグも孫の成長を喜んでいるお爺ちゃんの様な温かい目で日向子を見ていた
「あと実践出来てないのは「同化」だけど…出来るのかな?」
日向子はキメの最大の能力である他生物との融合を不安視していた
《そうだな…同化は精神力の問題や拒絶反応、様々なリスクがあるしキマイラ全てが所有している能力ではないからな》
キメの話だとキマイラ種でも同化を使えない個体の方が多いらしい
生まれた時から数種類の生物の特徴は有しているもののそこから他生物を取り込む事はキマイラ種でもレアケースだと説明された
「でももし出来たら…ちょっと無敵じゃない?」
《まぁ無敵ではないが同化した種の能力を使用出来れば大きなアドバンテージになるのは間違いないだろうな》
キメの言葉に日向子は確信を得て必ず習得する事を誓ったのだった




