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ゾンビーナ!  作者: とれさん
143/378

143 日向子の死


〈…余程死に急ぎたいと見える。我の手で滅する事を誇りとして安らかに逝くが良い。〉


「何を格好つけてんのよ!こっちは怒ってんの!あんたこそ後悔しなさい!」


日向子は横っ飛びしてからラクルに向かって間を詰める


。。。カシュッ!


「!?」


…ブシュゥゥ…


「…えっ?」


間を詰めたと思った日向子の眼前からラクルは消え去り日向子の突き出した右腕が宙を舞った


「…えっ?えっ?」


日向子はこの世界に来てから初めて捉えられない敵と遭遇したのだ


〈抵抗せねば安らかに逝けたモノを。だがこれて終いだ。〉


。。。カシュッ!


「!?」


軽快な音が聞こえた瞬間日向子の視界が突然暗転した


それが敵であるラクルの攻撃で目玉どころか前頭葉ごと削り取られたのだと気付く迄日向子の意識は持たなかった


…ブシュゥゥ…ドサッ…


〈我が領地を汚す者よ。完全に滅するが良い。〉


…ゴアァァァァッ!ゴゥゥゥッ!


ラクルが日向子の体を消滅させようと手を挙げた時

空から極大の炎の弾が無数に降って来た


《主っ!大丈夫かっ⁉》


漸く追い付いたキメには前倒しに倒れている日向子がまさか頭が吹き飛んでいる様には見えていなかったのだった


キメは目の前の敵の力量が段違いなのを本能で察知し日向子を救い出す事に全力を傾ける


〈ふん、この人間の仲間か?キマイラ如きが小賢しい〉


目の前の敵はキメを羽虫を見るが如くに見下した目で見ている


《主っ‼立てっ‼一旦退くぞ‼》


キメは日向子を咥え背中に乗せようと持ち上げる


《。。。?》


…ズルリ…ドチャッ…


最初キメには何が落ちたのか全く分からなかった

数秒後その落下物が前頭葉を削られた日向子の脳だと分かると激しい動揺がキメを襲ったのだ


《あ…主ぃっ!?》


キメの混乱は錯乱へと変わり激しい咆哮をあげる


〈お前も我が領地を汚したのだ、その愚か者と共に逝くが良い。〉


キメの本能が避けられぬと判断し硬直したその刹那


…ィィィーン…ゴパァッ!!


音速を遥かに超える物体がラクルに体当たりをかました


〈何っ!?ドラゴンかっ?〉


ラクルは激突してきた物体がドラゴンなのを知って驚く


『キメ!退けっ!』


シルグは動かないキメに檄を飛ばす


《…シルグ様ぁ…あ、主が…主が…》


キメは錯乱していてシルグの檄も届かない


『…チッ、ならば仕方ない‼』


シルグはラクルの体に風の渦を集めると全力で吹き飛ばした


〈…グッ!?〉


シルグも体当たりした時にラクルの力量は感じ取っていた


シルグさえも、いや…恐らく四竜総掛かりでも対峙するのは危険な程の存在だったのだ


それを承知で作り出した風の渦は攻撃目的ではなくラクルを遠ざける為だけに集中させた渦だった


それ故にラクルは意表を突かれた形で遥か彼方へ飛ばされてく


…バァサッ、バァサッ、


『キメ!何をしている⁉』


《主が…主がっ‼》


人型になって日向子を抱え上げているキメの前方に回ってシルグは全てを悟った


『なっ!?…頭が…』


人形の様にダランと垂れた日向子の頭部は大きな穴が穿たれていた


『…キメッ‼主殿の脳を拾い上げてワシの背に乗れ!急げっ!』


シルクはキメに強い言葉で命令するとキメは弾けた様に落ちた脳みそをかき集める


そしてその脳を欠けた頭蓋に入れ込むとキメはシルグの背に乗った


『飛ぶぞっ!落ちるなよっ?』


相当遠ざけたつもりのラクルが急速に接近しているのを感じたシルグは慌てて飛び立ち風の加護を使って一気に飛び去った


〈。。。ふん、楽しめるかと思うたが…逃げたか…〉


音速を越え逃げるシルグ達をラクルは追おうとはしなかった


…ィィィーーーーン…


《主…主…しっかりしてくれ‼》


シルグには日向子の状態は絶望的なのは分かっていた

分かった上で奇跡を信じ無謀とも言える一手を思い付く


『…キメよ、お主の細胞を使って日向子の脳を再建しろ!』


《…主…主…》


『しっかりしろ!今はお主だけが主殿を救う唯一の存在なんだぞ!』


《…主を…救う?》


『そうだ!お主の細胞を日向子に与えて脳の再建をするのだ!急げっ!!』


《は、はいっ!》


キメはキマイラ細胞を日向子の頭部に送り込み脳の再建を指示する


…グチュッ…コリリッ…


キメの全能力を乗せた細胞は瞬く間に日向子の欠損した脳を再建し頭蓋骨や眼球、皮膚を再生きていく


《こ、この後どうすれば⁉》


『もう再建したのか?良し、では少しワシから離れておれ!』


シルグの言葉にキメは自分の翼を広げて飛び立つ


。。。カッッ!


シルグは雷撃を自分の背に放った


…バクンッ!


直撃を受けた日向子の体は大きく仰け反る様に跳ねてそのままシルグの背に叩きつけられた


《あ、主ぃ~っ⁉》


とんでもない雷撃を受けて燻っている日向子にキメは慌てて抱き抱えた

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