141 ゴルド王国の滅亡 part28
キメのナノアタックによりほぼ城内の掃討を終えた日向子はシルグに連絡を飛ばした後のんびりしていた
「そういえばさぁ、此処って今後どうなるんだろうね?」
《さあ?俺は人間の政治は知らないからな》
「だよねぇ…でも王様も人もいなくなっちゃったら復興も何もないと思うんだよねぇ…」
日向子は椅子に座り足をブラブラさせながら他愛のない事を呟く
《だが例の男がバンパイア族の差し向けた者だとしたら予測は出来るぞ?》
「そうね、何らかの思惑がなけりゃこんな事しないもんね」
《人間を駆逐して得られるのは土地と建物、財宝だからな…狙いは土地しかなくなる訳だ》
「うーん…人を駆逐してまで欲しい土地なのかしら?」
《それは分からないが此処から北の地はそれほど枯渇しているのかも知れないな…》
キメは新鮮な細胞として道中捕まえた動物を補食しながら考察を述べた
「もし本当に土地を狙ったのだとしたら動機が弱いのよね…バンパイア族ならそのまま侵攻しても負ける事はないでしょ?」
《そうだな、彼の地では日中の護衛としてワーウルフが使役されていると聞くし…
それだけでも人間の軍なぞ全滅させられるんじゃないか?》
「ね?なら矛盾が生じるのよ。わざわざ時間を掛けて薬で罠仕掛けてさ、ゾンビ増やした所でメリットないじゃない?」
《そうだな、バンパイアはゾンビの血は必要ないし…感染拡大という他力本願的な侵攻をしても意味はないな》
日向子はぴょん、と椅子から立ち上がり逆立ちを始める
《?どうした?》
キメには奇行とも言える突然の逆立ちに首を傾げる
「ん?こうするとね、頭に血が集まって良いアイデアが浮かぶんだってお父さんが言ってたの」
《…そんなモノなのか?》
「うーん…あ、閃いたっ!」
日向子はクルリンと身を翻し指をパチンと鳴らす
「こういうのは難しく考えるとハマるのよ。ただの暇潰し、これなら色んな事に説明がつくんじゃない?」
《暇潰し?ただの遊びでこれだけの大国を滅亡させたのか?》
「うーん…何か人間をチェスの駒みたいに操って楽しんだ感じがするのよねぇ…
本気で土地が欲しいならとっくに侵攻して来てると思わない?」
《確かにな。我々が事態を終息させるのを黙って見ている道理もないしな》
「でしょ?だとしたら…許せないわね。乗り込んで行って凝らしめてやろうかな?」
《…待て、主。まだゴルド王国の一件が片付いていないのに先に進めたら…》
キメが振り向いた先には既に日向子はいなかった
《…マズい、また主が暴走してしまった‼》
キメはキラービーに仔細を託しシルグの下へ飛ばし自身は日向子を追うべく空へと舞い上がった
。。。
ブゥゥーン…
『む?キメから連絡だ』
「日向子様は何と?」
『…ふむ、城も掃討が完了したので全員戻っても問題ないそうだ』
「もう終わったのですか?…信じられない…」
『まぁ主殿とキメだからな。では皆でゴルド王国へ物見遊山と洒落こもうではないか』
「ではその様に指示を。」
シジルは陣幕から出て部下に全軍に城への進行を指示する
「あの、シルグ殿も王城へ行くのですか?」
『ああ、まぁ見識を広める良い機会だしな』
「となるとあの男は如何します?」
シジルは例の薬師の処遇を訊ねた
『フッ、ワシも此処でお前と世間話だけをしていた訳ではないぞ?』
…バカラッ、バカラッ、ヒヒーン‼
『お?丁度来た様だな』
「えっ?何が??」
「たたた、隊長!は、8本足の馬の化け物が表に!」
「何っ⁉」
『あー、慌てんでも良い。日向子のスレイプニルだよ』
「あ…「ニルちゃん」ですか?」
『おぉ、お前も物知りだな』
「えぇ、キメ殿が来る前迄は日向子様が良く乗って城迄お越しになっていたので」
『なら話は早い。実は先程来た蜂に呼んで来る様に伝令を頼んだのだよ』
「成る程、そうでしたか」
『ワシもここで待機など性に合わんのでな。かと言って逃がしてしまえば全てが水の泡だ』
「じゃあニルちゃんに国王の下に?」
『そういう事だ。ではニルに薬師を積んで運んで貰おうぞ』
「はい!」
シジル達はキメの毒で動けない薬師をニルの背中に厳重に括りつけた
『お?ゴメリも来ていたのか?』
近づいて来る足音にシルグが振り向くとシロに跨がったゴメリが遅れて到着した
「シルグ殿、今回の護送は国家転覆の重要人物との事なので神獣運輸の総力を挙げて行う事になりました」
『そうか。途中でヤンバ王達の護送隊には会わなかったか?』
「はい、途中で合流して事情も聞きました。帰りにもう一度合流してハク達の馬車に乗せ替える予定です」
『成る程、ユニコーン達なら数日は到着が早まるな』
エレモス国王に連絡が届いた事により事態は急速に展開していたのである
ゴルド王国の滅亡編、これにて終了です
明日から新展開投稿します
Merry Xmas!




