14 村に魔物がやって来た⁉
「た、大変だ‼ま、魔物が村にっ‼」
「何だとっ⁉ゴメリ達が討伐に失敗したのかっ⁉」
火の見櫓で周囲を警戒していた村人が警鐘を鳴らしながら村人達に警告する
「あっ?…何だありゃ??」
「ど、どうしたっ⁉」
「。。。魔物の上にヒナちゃんとゴメリが乗ってるだよ…」
「!?」
「何じゃとぅっ⁉」
ートコトコトコトコ…ー
村人が混乱する中、日向子が両手を振ってにこやかに呼び掛ける
「皆さぁ~ん、大丈夫ですよ~」
「…ヒナちゃんは何をしとるんだ?」
「…どうやら危険性が無いよアピールをしているらしいべ…」
火の見櫓の村人も降りてきて日向子達を出迎えた
「こここここ、こりゃブルピットじゃねぇか⁉こんな狂暴な魔物を連れて来てどうするつもりだべっ⁉」
鍬を両手で構えた村人が日向子とゴメリに訊ねる
「…だって…懐いちゃったんだもん…」
「…本当だべ…」
ゴメリの呆れ顔と日向子のおねだり顔を交互に見て村人は更に困惑する
「…で、どうすっだ?」
「飼っちゃダメかな?って…」
「「「何だとぅっ!?」」」
村人全員が即座に突っ込んだ
大工のゲンガが先導となり「第1回魔物をペットにして良いか会議」がここに開催されたのである
ー村の集会場ー
「…成る程。そこまでは分かっただよ、ヒナちゃん」
ゲンガは日向子達の経緯を聞いて深く頷いた
「じゃが飼うとなると話は別じゃぞ?」
当然と言えば当然である。
今まで魔物をペットとして飼った等と言う馬鹿げた話は誰も聞いた事がない。
断られるのは当然なのだ
「うん、それはゴメリさんからも散々言われたわ。でもあのワンちゃん達を見て。凄く大人しいでしょ?」
日向子が促すと村人達が外に鎖で繋がれているブルピット達を見つめる
「…そう言われてみれば体がでっかいだけで普通の犬にも見えなくはないな…」
「これ!フォン!騙されるでないわっ‼魔物は魔物だんべっ‼」
村人達が紛糾する様をゴメリはじっと見つめていた
実はゴメリもあの後ナデナデしてすっかり情が沸いてしまっていたのだ
「みんな…こうしたらどうだんべ?」
ゴメリは村人達が静まるのを待ってこう切り出した
「オラぁが思うにあの魔物達はヒナちゃんに服従してるだ。そりゃ村の中をうろつかれたら誰だって怖い。
そこで村の外れに檻を作ってその中で飼うってのはどうだべか?」
「「「うーーーん…」」」
「…じゃが逃げ出したり村人を襲ったらどうすんだ?」
「その辺の躾は私が責任を持ってします!」
(((((…「躾」って…)))))
「お願い☆」
日向子は必殺のおねだりポーズを恥ずかしげもなく繰り出した
「ま、全くヒナちゃんにゃ敵わねぇだよ…」
年老いた村人達には孫のおねだりと錯覚させる程の威力があったらしい
男性陣は日向子のおねだりに思わず顔が弛んでしまっていた
「んだどもあんな危険な魔物を飼うなんて許せねぇだ!」
当然日向子の必殺技は同性の村人達には効果が薄かった
「その辺はオラぁが責任を持って監督するだぁよ。この通りだ」
ゴメリがテーブルに手をついて頭を下げる
「ゴ、ゴメリがそう言うなら…ちゃんと面倒みるだぁよ?☆」
実は村の女性陣(高齢組)はゴメリの男らしさにメロメロだった
そんなこんなで二人に上手く言いくるめられた村人達は渋々ながらもブルピット達のペット化案に全会一致で賛成したのだった
ーカンカンカンー
「よーし、こんなモンで良かんべぇ‼」
鍛冶屋のフォン爺さんは廃材でブルピット達の檻を突貫で作り上げた
フォン爺も日向子のおねだりポーズの虜になり心血を注いで作り上げたのだった
「さ、ここがキミ達の新しいお家だよ♪入って」
「ウォン‼」
村人達が怯えながら見守る中、尻尾をブンブン振りながら檻に素直に入るブルピット達
「中の小屋はね、ゲンガさんが作ってくれたんだよっ♪」
喜ぶ日向子を我が孫の様に蕩けた目で見つめるゲンガもまた日向子の必殺技にメロメロになっていた
「おぅおぅ…あんなに喜んで…可愛いのぅ…」
村人の大半が魔物とじゃれ合う日向子を見て蕩けていた
「ゲンガさん、触ってあげて下さいよ」
「ん?えっ‼ワシがっ⁉」
ゲンガが我に返る
過去にブルピットに襲われた事もあるゲンガにとってはトラウマそのものに触る禁忌だった
「…ヒ、ヒナちゃんが言うなら…」
ブルブル…スッ…
「クゥン…」
「!?」
ナデナデナデナデ…
「クゥン…」
「はうっ‼」
ゲンガもトラウマを乗り越えブルピットの虜になった様だ
村人達も恐る恐るブルピットに触り安全性を確かめる
「…確かに懐くと可愛いモンじゃのう…」
過半数はブルピットの認識を改め、残りも警戒はしながらも飼う決断に矛盾がない事を確認した
「私としてはただ飼うだけじゃなくてこの子達をこの村の番犬にしたいと思ってます」
「何っ⁉番犬じゃと?」
「…確かに魔物が味方なら心強いが…可能なのかの?」
「やるだけやってダメだったら遠くに捨ててくるか処分しますので許して下さい‼」
日向子の必死な姿に心の中で警戒していた村人達も心が動いた
こうしてブルピット達はピレネー村の番犬として飼われる事になったのだった




