138 ゴルド王国の滅亡 part25
「へぇ、コイツが例の薬師なのね?」
《あぁ、偶然通路で鉢合わせになったので捕獲した》
「さっすがキメちゃん‼ありがとっ☆」
日向子は人型のキメの頬に軽くキスをした
《…えへへ(///》
キメは予想外のご褒美に思わずデレてしまう
「でもシルちゃんが言ってた能力を何で隠していたの?」
《別に隠していた訳ではないんだが…分化が難しくてそれほど有効だとは思えなかったからだ》
「…そうなんだ?でも範囲を狭めるとか探知だけに能力を絞るとかすれば使えないかな?」
《うーん、それは多分可能だな》
「良かった、やっぱりキメちゃんは頼りになるわね♪」
日向子に抱きつかれたキメは柔らかい2つの物体の感触を堪能していた
「…シルちゃん、いつまで寝てんのよ?」
『ふぁっ⁉ふぁいっ‼』
日向子の苛烈な「躾」を受け顔面が普段の2倍以上に腫れ上がったシルグは何とか返事をした
「不確かな情報を漏らしたのは仕方ないにせよ…キメちゃんを売ったのは許せないわ」
日向子は最初キメが能力を隠していたと思い込んで憤っていたがキメから事情を聞いた事、
重要な鍵を握る謎の男を捕らえたキメからシルグに怒りの矛先を変えていたのだ
『す、すまなかった‼主殿、キ メ‼』
何度も言うが彼は誇り高きドラゴン族の頂点の一体である
その至高とも言える存在が日向子の前でちょこんと土下座をして小さくなっていた
「シルちゃんも悪気があった訳じゃないんだろうけど…次はもっと厳しいからね?」
『は、はいっ‼ありがとうございますっ‼』
四竜が内の一体、風のシルグ
生涯二度目の全力土下座であった
「…で、この人の痺れはいつ解けるの?」
《ん?あぁ、それは俺の任意でいつでも可能だ》
「流石キメちゃんね。じゃあシジルさん達の所に届ける迄はこのままで…って言うかシルちゃん?」
『ひゃ、ひゃい⁉』
「此処に置いて行く訳にもいかないから他のサンプルと一緒にシジルさんの所に運んでおいて貰える?」
『ひゃい‼了解です‼』
「私とキメちゃんはもう一度周囲を回って完全に殲滅してから戻るからその間見張っていて頂戴」
『か、畏まりましたっ‼』
《…シルグ様…》
キメは完全に立場を失ったシルグを憐れみの目で見つめていた
「じゃあ早速行動開始!」
『《らじゃ!》』
シルグは薬師やサンプル体を背中に乗せて飛び立ち日向子達はキメの能力で完全殲滅すべく広場を後にした
。。。
バァサッ、バァサッ、バァサッ、
「隊長!シルグ殿が戻って来ました!」
「背中に何か積んでるぞ?」
バァサッ、ドシン…シュッ‼
シルグはシジル達の前に着陸すると薬師達を降ろし人型に変態した
「!?」
「本当に人化出来るのか…」
護衛兵のどよめきを他所にシルグは駆けつけたシジルに状況を説明する
『主殿の提案により各種族一体ずつを捕獲、拘束して来た。
検分に利用するが良い、それとこやつは元凶とも言える人間だ。決して逃がすなよ?』
「は、はい‼感謝致します。ところで日向子様は…?」
『主殿は彼の地を完全に綺麗にする為キメと共に改めて殲滅作業を進めている
程なく戻るであろうからその間ワシがこやつ等を見張る様に申しつかった』
「それは…助かります‼」
シジルはシルグに深々と頭を下げた
「しかし…完全に綺麗に出来るモノなのですか?各地に散らばったゾンビをどうやって…」
『フフッ、それは主殿達に任せておけば良い。必ずや人間の手に取り戻してくれようぞ』
「はっ。それにしても我々エレモス国のみならずゴルド王国も日向子様には尽くせぬ恩が出来てしまいましたね…」
『主殿はそんな些末な事を傘に着る人物ではないな、安心せよ』
「まぁそうですね、実績も力量も美貌もあるのに何故世の男は放って置くのでしょうね?」
『!! 』
「えっ?」
『…それを主殿の前で洩らすなよ?ワシなら己の喉を潰しても洩らさぬぞ』
シルグはついさっき行われた「躾」を思い出しガタガタと震えた
(…えっ⁉あの風のシルグがこんなに震えるなんて…)
シジルは古書に記されたシルグ達四竜の伝説は好きで良く読んでいた
勇猛果敢、傍若無人な四竜の活躍を脚色ありとは言え知っていたシジルは
(日向子様ってどんだけだよ?)
と驚愕すると共に畏怖の念を抱いたのであった
。。。
「じゃあキメちゃんお願いね」
《分かった》
…サァァァァ…
一瞬キメの体がボヤけたかと思うと一回り小さくなった
「…そうか、ナノマシンみたいなモノなのね?」
目に見えない程小さい細胞レベルの魔物が意思を持って行動し目的を完遂する
誤解はあるだろうが日向子は前の世界のナノテクノロジーを思い浮かべていた
《…この一帯にはいない様だ。このまま捜索範囲を広げるか?》
「そうね、少し移動して改めて展開しましょう。っと、ここは完了ね」
…ドスッ‼
日向子はマーカーとして棒を地面に突き刺した
地道だが討ち漏らしは再発に繋がる為に念には念を入れてチェックしていく日向子であった




