134 ゴルド王国の滅亡 part21
日向子達とシルグが合流する少し前、シジル率いるエレモス領護衛兵の間では緊張が走っていた
「た、隊長‼ドラゴンが飛来して来ております‼」
「何だと?ドラゴンが?」
シジルは以前シルグに会っていた為日向子がいる以上現れても驚きはしなかったのだが
初見の兵士達はすわ襲撃かと騒然となってしまったのだ
「皆、安心せよ‼アレは日向子様の使い魔、風のシルグ殿だ‼迎撃体制を解け‼」
「…えっ?あの人はドラゴンも使役してるのですか?」
「あぁ、以前お前も見た筈だぞ?…あぁ、あの時は人型に変態していたか」
「えっ⁉えっ?人型に変態??」
シジルも最近目の当たりにして信じたが一般的に魔物や神獣が人型に変態する事は知られていない為に兵士達に別の動揺が走った
「先程日向子様と一緒にいたキメ殿も人型に変態出来るぞ?」
「…えぇ⁉…何でもアリなんですか?彼らは…」
「あぁ、俺も初めはお前と同じ気持ちだったよ…」
呆然としている兵士達にシジルは同情していた
…バァサッ、バァサッ、
『ソコにいるのはエレモスの兵士ではないか?』
シルグはシジル達を見つけて問いかけた
「はい、王命でゴルド王国の状況把握に遠征して来たのですが危険との事で日向子様に待機を命じられております」
『ふむ、やはり主殿は此処にいたか。して何処にいるのだ?』
「今はゴルドに掃討に向かっておられる筈です」
『何だと?ワシを差し置いて愉しげな事を…』
シルグは状況を聞いて何故自分を呼ばないのか?と憤っていた
「あ…い、今ならまだ途中だと思いますので間に合いますよ?」
『そうか、では早速助太刀に向かおう。感謝するぞ』
バァサッ、バァサッ、バァサッ、
シルグは日向子を追ってゴルド王城の方角に飛び去った
「あ、あれはドラゴンではないか⁉アレも神獣使いの所有物か?」
拘束されてはいるが口枷も目隠しもされていないヤンバは先程のやり取りを見て驚愕していた
「そうだ、日向子様の下にはブルピットから始まりユニコーン、スレイプニル、
ドラゴネット、バハムートやドラゴン達迄様々な魔物神獣を使役されているのだ」
「そ、そんな馬鹿な⁉使役者の力量が足りなければ使役どころか接近すら出来ないと聞いたぞ?」
「…ゴルド王国の諜報能力は日向子様が仰る様に本当にザルなんだな…」
「な、何だと⁉」
「知らなければ教えよう。日向子様は殆どの使い魔を「力」でねじ伏せた後仲間にしているのだ」
「…は?」
「まぁ信じられないだろうな。俺も未だに信じがたいし…
ともかくあの美女は常人ならざる力量を以て彼らを使役している、と言う事だ」
シジルの言葉に更にポカーンとしたヤンバは思った
(ゾンビやバンパイアを幾ら増やそうが結局は無駄だったのだな)と
そんな経緯があったとは日向子は知る由もないがともかく今はシルグと無事合流して王城へと向かっている
「シルちゃんキメちゃん、私からのお願いがあるんだけど良い?」
『《勿論だ》』
「敵はどれだけ殲滅しても良いけど建物とかはなるべく壊さないで欲しいんだけど…」
《ん?そんな事か?さっきと変わらないじゃないか》
『建造物を壊さなければ良いのだな?』
「うん。お掃除が終わったら生き残った人達を帰してあげたいからね。
その後残るか去るかは当人次第になるけど」
『成る程、了解した』
《だが今回の騒動で残った人間は1割にも満たないだろ?帰してどうするんだ?》
「うーん…残って生活するとかを配慮してる訳じゃなくて…やっぱり故郷が無くなるのは辛いでしょ?」
『そうか…主殿の心根、確かに受け取ったぞ‼』
シルグは日向子の思いに感銘を受けひと吠えして応えた
《じゃあまた人間が住める様に綺麗にしなきゃな‼》
キメも張り切って吼える
「よーし、お掃除頑張っちゃうぞぉ~‼」
日向子達はこの時点で知る由もないがこれから繰り広げられる掃討作戦は後に「ゴルドの奇跡」として後世に語られる事となる
風邪引いてしまいました…




