133 ゴルド王国の滅亡 part20
日向子達はシジルにヤンバ達を預ける為に山脈の障壁付近に戻っていた
「シジルさぁ~ん‼日向子でぇ~す‼攻撃とかしないで下さぁ~い‼」
日向子は構えているシジル達に念の為に大声で叫んだ
「日向子様~、了解しましたー‼」
日向子とキメはシジル達の前まで駆け寄りヤンバ達を下ろした
「!?」
「こ、これは…ヤンバ王では?」
シジルは縛り上げられた束の中からヤンバの姿を見て驚いている
「そう。今回の騒動の最大の戦犯さんね、それと他は側近達だけど関与はしてる筈」
「くっ、苦しい…解かんか…」
ヤンバ達は口々に不満を溢している
「煩いわね、とりあえず助かったんだから文句言わないでね」
日向子はヤンバ達を窘めた
「ヤンバ王が最大の戦犯とは…どういう事ですか?」
シジルは事情が分からず困惑している
「あー、細かい事は本人に聞くと分かるけど要はね…
エレモス領を侵略する為に兵士を化け物にしたんだけど失敗して国を滅ぼしちゃった、こんな感じかな?」
「!?」
日向子の説明は大雑把過ぎたが今回の騒動を生み出した張本人だと言う事は理解出来た
「それでヤンバ王達をどうしますか?」
シジルは日向子に訊く
「折角生け捕りにして来たんだから裁判できちんと話して貰って責任はとって貰いましょ」
「そうですね、では本国に送致する手配をします」
「私は大まかに聞いたけどちょっと鬼畜過ぎるから絞り上げてやって。必要ならキメちゃんを貸すわ」
「?キメちゃん…をですか?」
「うん。キメちゃんの能力があれば黙秘権とかないみたいだからね」
この言葉にヤンバは顔を歪ませ全力で拒否をした
「ひぃぃ‼も、もうアレは勘弁してくれっ‼何でも素直に話すからっ‼」
「こ、国王⁉何を…⁉」
「国を裏切るのですか?」
側近達はヤンバを非難するが彼らはキメのあの能力の本当の怖さを知らない
「馬鹿め‼お前達はアレの恐ろしさを知らぬのだ‼アレは…アレは二度と味わいたくないのだ‼」
「…何か全力でトラウマになっている様ですが何をしたんですか?」
シジルはヤンバの怯え様を見て疑問が膨らんでいた
「あはは、まぁそれは見たら分かるわよ?」
日向子自身も単に見ていただけであの触手がどういった能力を持つのかは知らなかった
(…後でキメちゃんに説明して貰おうっと…)
1つ楽しみが出来た日向子であった
「…ではそれは良いとして日向子様達はこれから如何なさるおつもりですか?」
「あ、そうね。私達はまたゴルドに戻って出来る限りお掃除して来るわ」
「…えっ⁉(お掃除)ですか⁉」
「うん、あのままだと生き残った人達も帰れないし被害が更に拡がっちゃうもん」
「あの…またたったお二人で?」
「うん、だってゾンビやバンパイアだけでも面倒なのに野放しになってる魔物や獰猛な生物とかがあちこちにいるんだもん」
日向子はポカンと口を開いているシジルにテイマー達とその使役する魔物達の経緯を話す
「…成る程、そうだったんですか…」
シジルは日向子の話を理解するとつくづくゴルド王国の侵攻が未然に防げた奇跡に感謝していた
「それにね、何か勝手に私も関わってたみたいなのよ」
「えっ?」
「ほら、私の所にいる神獣達いるでしょ?」
「はい」
「ヤンバ王はそれをエレモスが使役する戦略兵器と勘違いしてたんだって‼本当に失礼しちゃうわよね」
「…あはは…」
シジルはプリプリ怒る日向子に愛想笑いしか出来なかった
「な、何だと?貴さ…いや‼貴方様が神獣使いのテイマーだったのですか?」
ヤンバは驚いて口を挟んできた
「キメちゃんもそうだけど皆私の家族なのよ?下らない戦争の道具なんかにする訳ないじゃない‼
あんたの所の諜報員の怠慢じゃないの?それって」
「…そ、そうであったか…」
そもそもゴルド王国で放っている間者がもっと良く精査していれば日向子達が軍に関わっていない事も分かった筈である
その適当な情報に踊らされて一国を滅亡に導いた愚かな王としての烙印は死んでも残るだろう
ヤンバの地獄はまだ始まったばかりであった
「さぁて、引き継ぎも出来たし今度こそ心おきなく暴れるわよぉ~♪」
「…えぇ、お気をつけて…」
シジルはストレス発散の為に蹂躙されるかも知れない化け物達を内心憐れんでいた
日向子はキメの背中に乗ると一気に空へ舞い上がった
「キメちゃん、疲れてない?」
《まだ何もしてないぞ?俺も頭を使って疲れたから暴れたいと思っていた所だ》
…バァサッ、バァサッ、
《!?》
「あ、シルちゃん‼どうしたの?」
『どうしたもこうしたもない。いつになっても帰って来ないから暇でな』
ドラゴンの中でも四竜が一体と呼ばれたシルグがお呼びが掛からない事に拗ねていた
「あはは、ごめんね。こんなに長引くとは思ってなかったのよ」
日向子は正直に謝る
『それよりも何をしておるのだ?』
「丁度良かったわ、これからゾンビとかバンパイアとかをお掃除しに行くのよ。手伝ってくれる?」
『ん?暴れられるのか?なら喜んで手伝おう』
こうしてキメと日向子のタッグにシルグが加わってゴルド王国内の掃討作戦が始まったのである




