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ゾンビーナ!  作者: とれさん
131/378

131 ゴルド王国の滅亡 part18


ヤンバへの尋問はまだまだ続く


「…解毒薬もどんな結果になるかも分からない薬をどうして大量に投与したのよ?」


日向子は余りの無謀さについ口を挟んだ


「…当時エレモス領にて数々の神獣を捕獲し意のままに従えるテイマーの噂が届いてな…

このまま増長させれば脅威になると思い我が国でもテイマーを増員したのだが…」


…ん?神獣???


日向子には思い当たる節が…というより自分が勝手に当事者にされていた事に気付いてしまった


「…で?」


ヤンバは日向子の雰囲気がガラリと変わった事すら気付かず話を続けた


「…テイマー達を大挙雇い入れた迄は良かったが神獣を従える者は誰1人いなかったのだ

仕方なく強力な魔物や生物をティムしている者達を残し一軍を作ったが不安は残ったのだ」


「…続けて。」


「そんな時、男が不死の軍隊を作れる秘薬を持ち込んだのだ。食い付かぬ訳がないだろう‼」


国民を危険に晒し国家を滅亡させたのは必然的だったと言いたげなヤンバに日向子はブチ切れそうになっていた


「…罪人達を餌として与えるとまた変化が起こった…」


ヤンバの話はまだ続いた


ーーーーー


人肉を生きたまま与えると崩壊をしないばかりか食事量が今までの5分の1程度で維持が可能になると分かったヤンバは

微罪で収監中の犯罪者達も言いがかりをつけ処刑処分にし、不死の兵達に与えた


エレモス侵略の前哨戦とばかりに行った隣郷、ギズへの侵攻では不死兵達の活躍は目覚ましいモノがあったのだ


兵への被害はゼロ、兵糧は「現地調達」で指揮する小隊分しか必要とせず

何より生きた兵では時々問題になっていた戦利品の横領や簒奪が一切なかった


隣郷ギズは農業も商業も盛んな経済都市だった為、ゴルド王国に多額の戦利品が転がり込んだ


懸念していた不死兵達の食糧問題も収監者の増加で一気に解決したのである


ヤンバは国民の不興を回避する為に接収した家畜を慰労品として配布し一部金品もばら蒔いて国家の威信も取り戻した


反乱の危機を逃れ戦果も得て反対派も黙らせ順風満帆かと思われた矢先、別の問題が持ち上がった


不死兵達が命令を全く受け付けなくなったのだ


抑えに入った一般兵が腕や肩を噛まれ重症、重騎兵による制圧で何とか不死兵は隔離された


ここからが本当の悪夢の始まりだった


翌日治療室で噛まれた兵達が医者や看護に当たっていた侍従達を襲う事件が発生

駆けつけた近衛兵数人も犠牲となった


この事態を重く見たヤンバと側近達は隔離していた傷病兵を処分し、

襲われ負傷した医者達は極秘裏に不死兵達の中に投げ込まれた


半年間の国家予算に匹敵する程の投資をして作り上げた不死兵の廃棄をヤンバは躊躇っていたのだ


そんな折、例の男が再びヤンバの下を訪れた


ヤンバは男を捕縛し処刑を命じようとした矢先、男は自分の命と引き換えにある提案をしたのだった


「不死兵を率いる為の薬を助命の代償として捧げます」


この言葉にヤンバは周囲の反対を押し切ってとびついた


渡された秘薬は微量ではあったが指揮官レベルに投与すれば今後不死兵の反乱は皆無になるという甘言に騙されたのだ


こうして立候補した士官に新たな秘薬が投与され、変態を経て生まれたのが「バンパイア」だった


バンパイア達は不死兵よりも更に強い筋力と高い知性を持ち合わせ隔離されていた不死兵を見事に統率して見せた


「これで我等の偉業は完璧に遂行されるであろう!」


ヤンバの慢心は頂点に達していた


2日程経った昼下がり、1通の上奏文がヤンバの下に届けられた


「ゴルド領ナバルの村が何者かに夜襲を受け全滅」


これにヤンバは丁度良い機会だとばかりにバンパイア将兵率いる不死兵小隊を派遣したのだ


最初の内は定時連絡も滞りなくヤンバ達の下へ届き運用の成功を信じて酒宴を開く程だったが

1日1日と日が過ぎる毎に遅延や不達が目立つ様になっていった


不安を感じたヤンバは小隊を不死兵1隊に向けて送ったが連絡すら戻って来ない


ここに命からがら逃げ帰った兵から信じがたい報告が入った


「バンパイア将兵並びに不死兵、造反の疑いあり」


既に手遅れではあったが無能なヤンバもここに至って漸く男の策略に気づいたのである


将兵と不死兵は近隣の村々を次々と襲いゾンビとバンパイアを増やしていく


襲われた村人が変態してまた人を襲いまた変態して…と様相は既にパンデミックの域を超えたのである


一般兵3個師団が不死兵達の殲滅に送られたがいずれも失敗、逆に不死兵の大増強を招いてしまう


こうして鼠算式に膨れ上がった不死兵及びゾンビ・バンパイアの混成は村や街を平らげいよいよゴルド王城へと矛先を向けたのであった


ー総勢7万余ー


この一報が警戒に当たっていた護衛兵の心を打ち砕いた


職務を放棄し逃亡する者、どさくさに紛れ簒奪を始める者、家族の下に向かう者、いずれの行動を取ったにせよ城はほぼ無人と化してしまってのだ


ヤンバは側近達に護られ城を棄てる事を迫られたが渋っていた


「先祖が拓いたこの国を棄てて我が逃げる事など出来ぬ!」


怒声を浴びせるヤンバ達の耳に四方八方から聞こえる阿鼻叫喚の声と破壊音


最後の最後でもヤンバは選択を誤ってしまったのだった

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