128 ゴルド王国の滅亡 part15
日向子とキメは周囲を注意深く見回しながら抜け道を進む
「それにしてもあの血痕もおかしかったわね…」
《と言うと?》
「あそこには滴下血痕しかなかったわ。普通襲われたり逃げたりすれば他に飛沫血痕が残ったり擦過痕が残ったりするモノよ?」
《…主の前の世界の知識か?》
「まぁそうね。血管損傷がある傷なら飛び散った痕が残るしまるで移動も抵抗もせずあの場所で食べられたみたい」
日向子は血痕の色にも違和感を感じていた
「血液ってのはね、時間が経つにつれ空気と触れあって酸化して色が変わっていくのね」
日向子はキメに時間経過による血液の色の変化について説明した
「私達ってドルネさんから依頼を受けてここまで来たから…
事件発生から少なくとも数日から1週間程は経ってる筈。
なのにあの血痕は落ちてから1日か2日位しか経ってない様な色なのよ」
《?どういう事だ?》
「国王か誰かは分からないけどあの血痕の主は少なくとも私達が到着してゾンビ達と戦ってた辺り迄は生きてたって事」
《確かにそれは不思議だな》
「それとあの血痕から考えるにあの場所で飲み込まれたか袋とかに入れらたとかしたって事かな」
日向子の推測はある程度理論に基づいて考察されているらしく聞こえてキメも感心していた
例え火◯ス仕込みの情報でも知らなければバレないのだ
「あと…多分あの血は内臓出血からの血だったから…あの場で吐血したのかしらね…」
《主の推理は理路整然としていて分かり易いな、これも異邦の知識か?》
「えっ?ま、まあね」
日向子は火◯スやドラマ、映画の説明は繰り返したくなくて適当に肯定していた
「推理はこの辺にして先を急ぎましょ」
日向子はボロが出る前に足早に抜け道を進んで行った
。。。
「ここは…教会かしら?」
日向子達が抜け出た所は前の世界の教会と酷似していた
《そう言えば…教会は侵入されて全滅した記憶があったが…もしかしたら内部から攻撃されたのか?》
「…キメちゃん、」
《?》
「ある筈の遺体がない…気をつけて」
《あぁ…》
教会内部には辺りに飛び散った血痕や滴下血痕、擦過痕が至る所に見受けられるのに遺体が全くないのだ
...ギチチチチ
「!?」
...ガサガサ…
「えっ⁉」
日向子達の目の前を黒い物体が多数横切った
「まままま、まさか!!??」
黒光りする流線型の体躯、長い触覚を持つその生物は日向子の最も苦手とする《G》だった
「…いやぁぁぁぁ~っ!」
ガクッ!?
《あ、主っ⁉》
日向子は《G》を見て気絶してしまった
キメは日向子の前に立ち炎を纏う
…カサカサカサ…
ゴウッッッッ!
ギィィーーッッッ‼
ラグビーボール大の《G》達はキメの放った火球に耐えられず一気に燃え上がる
…ジジジ…
高温の炎に焼かれた《G》は消し炭となって床に焦げ痕だけを残して消滅した
《主、主っ‼》
キメは必死に日向子を揺り起こす
「…ん…うぅ~ん。。。はっ⁉」
日向子はゆっくりと目を開けたが慌てて周囲をキョロキョロと見回した
「ね、ねぇ、《アレ》は?」
《俺が消しておいたぞ》
「…ありがと…」
日向子の体はまだ震えている
《主は虫が苦手なのか?》
「…虫全体じゃないわ。《アレ》だダメなの…」
魔法も微妙な異世界でまさか《アレ》に出くわすとは思っていなかった日向子は思い出して更に身震いした
「あれだけいたって事はもしかして…」
《あぁ、あいつ等が遺体を片付けていたんだろうな》
「…もう考えたくない…」
《分かった。次からは俺に任せて逃げてくれ》
「うん、ありがと」
日向子はキメに抱きついた
「モフモフしてて落ち着くわ…」
キメも何だか嬉しいらしく尻尾の蛇がウニョウニョと動いている
「それにしても…まさか虫系の魔物がいるなんてね」
《そうか、主は見た事がなかったか…》
キメは念の為に虫系魔物の種類をレクチャーした
「そんなにいるんだ、知らなかったなぁ…」
だが今挙げられた虫系はそれほど嫌いではなかったので内心ホッとする
《苦手なのはコッ…》
「止めて‼言葉も嫌っ‼」
キメがこの世界での《G》の名称を言おうとした瞬間日向子が拒絶した
知りたくもない言葉はあるのだ
「キメちゃん、約束よ?アレが出たら助けてね?」
キメは日向子の必死の懇願する姿にドギマギしていた
《さ、さあ‼捜索を再開しようかっ‼》
今度はキメの態度が怪しくなりいそいそと捜索を再開する事となった
血塗れの教会を出て辺りを見回すがここは先日捜索した場所でもあり特に異変を感じない
「もしかして…教会の中に別の秘密が隠されているのかもね」
日向子の直感がまだ教会に秘密がある事を示唆していた




